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月夜に提灯、一花咲かせ

樫吾春樹

伍輪目 昼顔

肩をぽんっと叩かれ、過去に飛んでいた意識を戻す。そうだ、僕はパーテーションの工事が終わるのを待っているところだ。
「ぼーっとしてるのはいいけど、そろそろやるよ」
「はい、わかりました」
終わりかけているパネルの作業を見て、こちらの作業の準備を始める。僕は特に出来ることはないが、先輩のやることを見て覚えるのも仕事のうち。今日は天井とパーテーションの隙間を埋めることと、壁との隙間も埋めること。なので、ガラスとサッシでのシール作業よりは多少、クリーニングの手間が省ける。手間が省けるだけで、こちらの方が厄介かもしれないとは思う。
通常、窓などにシリコンを打つ時は、まずライナーというクッション代わりになるものを敷き、バッカーというものをガラスが当たるサッシの側面のうち、ガラスの片面だけにサッシ側に貼り付ける。そして、ガラスをはめ込み、バッカーを貼ってない面にそれを入れてガラスを動かないようにする。そして、マスキングと言って、シリコンがはみ出しすぎないように、範囲を決めてガラス面とサッシ面にマスキングテープを貼っていく。それからシリコンを打つ作業になる。ザックリとした手順はこんな感じである。
作業する先輩を見ながら、工程を頭の中でも何度も復習する。そして、必要になりそうなものを先輩のリュックから引っ張り出して、近くに置いておく。シールを打ち始めればそばにいて、渡されるシリコンのガンや必要なものを渡していく。
「終わったから、あとは責任者に見てもらおう。それで良いって言われたら、片付けて次の現場に行くよ」
「わかりました」
それから道具を片付け、いつでも移動できるようにした。責任者が来るのを待ち、気づけばお昼近くになっていた。このまま来なくて「昼休みになるのでは」と思っているところに監督が来て、許しをもらい挨拶をして道具を持って駐車場に戻る。
「次はどこでしたっけ?」
「横浜。時間に間に合えばいいなと思うよ。行く途中でコンビニに寄るから、そこでお昼買っちゃいな」
「そうします。お昼食べないのは辛いので」
道具を車に積みながら、次の現場の話をして予定を立てる。そうした方が、流れを考えやすいのだとか。だか、現場に着いてから予定が変わるなんてことは日常茶飯事でもあるとのこと。
「トランクを閉めといて。清算してくるから」
「はい」
バタンと閉め、助手席に乗り込む。精算を終え、戻ってくる裕人先輩から駐車場の領収書を受け取り、まとめてある入れ物にしまう。
「忘れ物ないね?」
「無いです」
そんなやり取りをして僕達は、駐車場を出て次の現場である横浜へ向かって出発した。

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