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月夜に提灯、一花咲かせ

樫吾春樹

壱音目 雪柳

はあ、と小さくため息をつきながら、仕事の準備をする。なんでこの日に限って仕事なんだか、と文句を言いそうになるのを堪えて着替えていた。
「今日、裕人さんの誕生日なんだけどな……」
愚痴をこぼしている時に、先輩から出発したというラインが来る。
「いってきます」
誰もいない部屋に向かってそう言い、鍵をかけて待ち合わせ場所へ向かう。だいぶ慣れた景色を見ながら、寒い中歩く。手には普段何も持ってないのに、今日だけは青い袋を持っている。
「おはようございます」
「おはよう。今日はなんか持ってるね。それ何?」
「さあ、なんでしょうね。ところでお誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。この歳になると嬉しくもなんともないけどね」
「へー。彼女いなかったのに、そういうこと言うんですか」
「悪かったな」
今日は僕がからかう側に回る。いつも、やられてばかりだから、たまには僕からの仕返し。そして、持ってきた袋を指して言葉を続ける。
「これ、プレゼントです」
「ありがとう。だけど、バレバレだよ」
「うー。別にいいんですよ。まあ、あとで見てください」
「そうするよ」
渡せて、僕は少し嬉しくなる。気に入ってくれるといいなと思いながら、車に揺られる。言っていなかった言葉を思い出し、僕は彼の名前を呼んだ。
「裕人さん」
「どうした?」
少し間を空け、笑顔を浮かべ言葉を紡ぐ。
「大好きです、裕人さん」

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