魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

66 取り調べ

 ノベルバでの更新を忘れておりましたので、2話連続更新です……申し訳ありません!



 中央塔から北に少し離れたところに、警備兵の駐屯所がある。その地下にある牢獄に俺は来ていた。

 隣にはセレーナとリリーはいない。代わりに市長秘書の男性と、看守長の男性がいる。

 今朝、中央塔で魔皇教団についての対策会議が行われた。そこでの話の流れで、王女を襲撃した盗賊たちから情報を聞き出すことになった。

 盗賊たちはこの牢獄に捕らえられている。

 警備兵の人たちも取り調べはしたが、肝心なことは聞き出せなかったらしい。

 あまりいいところではないため、セレーナとリリーは外で待ってもらっている。セレーナは付いていきたいと最後までごねていたが、この件が終わったら1日何でも言うことを聞くという約束で引き下がってくれた。

 本当に何でも? と聞かれたときは、思わず頷くのを躊躇ってしまった。まぁセレーナが笑顔だったからいいとしよう……。

 牢獄はいくつかの部屋に分かれ、その全体は薄暗くジメジメとしている。

 看守長に続いて歩いていると、目的の牢屋に着く。

「ここです」

 低く渋い声で看守長は言う。

 その牢屋には5人の男が両腕を縛られて投獄されていた。広くはない牢屋に無理矢理詰め込まれたような感じだ。

 看守長に続いて現れた俺を見た1人の獄囚が、血相を変えて怒り出す。

「貴様ッ! よくも我々をこんな薄汚い所に!」

 その男はキャロット郊外で、王女様が乗っていた馬車を襲っていた盗賊の1人だ。残りの4人も俺に気がつき顔を歪める。

 5人は盗賊集団の中でもローブを着ていた魔術師らしきグループのはずだ。魔法を使わせる前に捕まえたから、本当に魔術師かわからないけど。

 今はローブや杖を取り上げられて、シンプルな布の衣服姿だった。

「この者たちが魔皇教団と関わっていると疑いのある者たちです」

 市長秘書が報告書を片手に淡々と述べる。

「それで、ユーリ様。本当に魔法で情報を吐かせることができるのですか? そんな魔法が存在するとは聞いたことがありませんが……」

 声を潜めて市長秘書は俺に話しかけてきた。やや疑っているような目で見ている。

 情報を吐かせるというと少し語弊があるかもしれないが、結果的には同じことになるのは確かだ。

 やり方は簡単。

 質問をする。思念魔法を使う。相手の思考を読み取る、といった感じだ。

 思念魔法に長けた相手(アカネとか、師匠とか)なら簡単には読み取れないけど、俺の拘束魔法から逃れられないこの人たちなら簡単に読み取れるだろう。

 万が一上手く読み取れないときは、催眠魔法や少々脅して聞き出すとしよう。

 思念魔法が一番手間がかからないから、それで上手くいけばいいなという程度だ。

「大丈夫です。見ていてください」

 俺がそう答えると、市長秘書は頷いて一歩下がる。

 牢屋にもう少し近づき、俺は盗賊たちに話しかけた。

「あなたたちは何者ですか?」

「ハッ! 貴様に言うわけがないだろう」

 最初に突っかかってきた盗賊が馬鹿にするように言い捨てる。

 だがしかし、言葉にせずともこっちにはわかっちゃうけどね。

 俺は盗賊に向かって思念魔法を使う。

「“魔皇教団の下級信徒”」

「ッ!?」

 わかりやすいほどに盗賊の表情が驚きへと変わる。他の盗賊たちも警戒の色が強くなった。

「目的は?」

「……」

 次はだんまりを決め込むようだ。その目だけは俺をずっと睨んでいる。

「“伝道師様の命令で、キャロットに向かう王女を乗せた馬車を襲って誘拐すること”」

「くッ!」

 苦虫を噛み潰したような表情で盗賊は俺を見ていた。

 誘拐が目的か。

「何故、誘拐を?」

「黙れッ! 先ほどからデタラメなことばかり言いよって」

「誘拐の目的までは聞かされてないんですね」

「うるさい!」

 怒鳴った盗賊はそのまま怒りのままに牢の柵を殴りつける。その暴れた盗賊を他の盗賊が、もう無理だ、と言って止める。

「本当に情報を吐かせる魔法が存在するなんて……」

 市長秘書が驚いた声で呟く。

「教団の拠点はどこですか?」

 俺が問いかけると、盗賊たちから諦めの空気が漂った。答えなくともどうせわかるのだろう、と顔が言っている。

 まぁその通りなんだけどね。

「魔皇教団の拠点がわかりました」

「どこですか?」

 振り返った俺に、市長秘書は報告書に書き込んでいた手を止めて顔を上げる。

 俺は盗賊たちが見ていた景色、その地名を確かめるように思い起こして答えた。


「――西の大都市リーキです」

 そこはこの国で王都を除き、一番大きな都市だった。



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