魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
65 書庫
王女様との会談から3日が経過した。
この3日間はほとんどを書庫で過ごしていた。
と言うのも、キャロットの書庫は長の家ほどではないが、それに近いくらいに書物が蔵書されていたのだ。
予想を超える書物の量に正直驚いたが、それよりも嬉しさの方が勝っている。
それはそうだ。
本、書物とは情報。
情報を得ることで、それは知識となって時に大きな力となる。
実は、その言葉は集落にいたときに読んだ書物からの引用だ。
情報は知識に、知識は力になるというは確かにその通りだと思う。
知っていると、知っていないでは大きく違うこともある。
俺は書物から魔法の知識を得た部分もたくさんあって、その意味を何度も実感していた。
この書庫にある書物の多くは地理、歴史、伝記であり、魔導書(魔法の指南書のこと)や物語のようなものは少ない。
これも文化の違いというやつなのだろう。
俺は魔力の腕を書庫に200本ほど具現化して書物を片っ端から目を通している。
魔力の腕に視覚も共有することで、一々肉眼で見なくとも書物が読める。
さらに、魔術で鍛えた並行思考技術を使うことで複数の書物を同時に読めるため、この書庫にあるすべての書物に目を通し終わるのもあと少しだ。
「ユーリくん、ここの意味教えて」
隣で書物を読んでいたセレーナがわからないところを指差して聞いてくる。
その際に俺の体にピッタリと体を寄せてくるため、セレーナのいい匂いが鼻孔をくすぐって、胸がソワソワとして何かがヤバイ。
セレーナのことだから、わざとではないのだろうけど、というか嫁だからいくらでもくっついていいんだけど、俺の理性を少し、もう少しだけ考慮してほしい。
「ユーリくん?」
俺の顔を純粋無垢な表情でセレーナが覗く。
煩悩を必死に打ち消して、俺は何とか答える。
「こ、これは……という意味で、もう少しざっくり言うと……ってことだね」
「そっか! ありがとう、ユーリくん」
そう言ったセレーナは無邪気に俺に抱きつく。
に、逃げてくれ、セレーナ! 俺の中に眠る狼が暴れ出そうとしてるっ! くっ、もうダメか……。
「ユーリ様、少しいいですか?」
「わうっ! な、なに? リリー」
セレーナに襲い掛かろうと出していた両腕を慌てて背中に隠し、何事もなかったかのように取り繕う。
「わう? あ、そうではなくて、この書物何ですが……」
リリーもわからないところがあったらしく、俺はリリーの疑問点を丁寧に答えていく。
質問の多くは魔術関連であり、少ないながらもこの書庫にあった魔導書をリリーは読んでいた。
魔術について基本的な部分は同じだが、龍人族と人族の違いなのか解釈が所々違う。
それに、明らかに魔術のレベルが龍人族と比べて遅れている。
種族的な能力の差はしょうがないとは言っても、ここにある魔導書は龍人族の子供が遊びながら覚えるところだ。それをさも高度な技術として書かれている。
うーん、何でだろ?
「リリー、この魔導書も参考程度に読むだけでいいよ」
「はい、ユーリ様」
リリーはこくりと一度頷き、それから言葉を続ける。
「初日にも参考程度にとおっしゃっていましたけど、この書庫に置いてある魔導書はそれほどまでに実践的ではないのですか?」
「何て言ったらいいのかな。目玉焼きの作り方を無理やり難しく説明しているような、そんな感じなんだよ。目玉焼きなんて、卵を割って焼く、工程で言えばそれだけだ」
「なるほど……」
「確かに、目玉焼きが火加減や焼き時間で変わるように、魔法も魔力やイメージによってその効果は変わる。でもそれは、経験やその場によって変化していくものだから、定石があったとしても例外はいくらでも存在する」
「はい」
いつの間にか魔術講義になってるな。
セレーナも隣でふむふむと頷いて聞いている。
集落にいるときに、セレーナには一度教えているから復習だな。
「魔導書はあくまで「魔法へと導く書物」であり、魔法を定めるものではないんだ」
「ユーリ様、わかりました! 魔法は1つではない、ということですね」
「うん、正解」
俺がそう言って、頭を軽くポンポンと撫でるとリリーは嬉しそうに笑う。
うん、この笑顔は完全に女の子だよね。
「魔法の話をしていたら、魔法の練習がしたくなってきました。僕、外に行ってきます!」
「そっか、気をつけてな」
「はい!」
それでは行ってまいります、とお辞儀をしてリリーは書庫を去る。
その姿を見て、俺は魔法の練習に明け暮れた過去の自分を思い出して重なって見えた。
頑張れ、少年よ。
こんな気持ちになってしまうのは、俺も歳をとったということなのかな? いや、この世界だとまだ12歳なんだけどね。
「ねぇ、ユーリくん」
「なに?」
「私、ここの意味がわかったよ! これはね……ということでね、だから……ということなんだよ」
うん、合ってる。
合ってるけど、それ、さっき俺がした説明と同じだね。
「……ね?」
セレーナの何かを期待する瞳が俺を見つめる。
ね? とは……。
えーと……あ、そういうことか。
「すごいね、セレーナ! よしよし」
「ふふふ」
俺はセレーナの頭を優しく撫でる。
満足そうなセレーナの表情を見て、俺の頬も緩んでしまう。
俺の嫁が可愛すぎて困っている件。
しばらく二人でイチャイチャしたのはここだけの秘密だ。(アカネにバッチリ見られてました)
読んで頂きありがとうございます!!
イチャイチャさせるのは楽しいですね。
このままずっとイチャイチャさせてもいいですか?(いや、ダメに決まってるだろ)
次回からは、魔法陣を描いたら転生〜イチャイチャするだけのスローライフ〜が始まります。お楽しみに!
※始まりません。
この3日間はほとんどを書庫で過ごしていた。
と言うのも、キャロットの書庫は長の家ほどではないが、それに近いくらいに書物が蔵書されていたのだ。
予想を超える書物の量に正直驚いたが、それよりも嬉しさの方が勝っている。
それはそうだ。
本、書物とは情報。
情報を得ることで、それは知識となって時に大きな力となる。
実は、その言葉は集落にいたときに読んだ書物からの引用だ。
情報は知識に、知識は力になるというは確かにその通りだと思う。
知っていると、知っていないでは大きく違うこともある。
俺は書物から魔法の知識を得た部分もたくさんあって、その意味を何度も実感していた。
この書庫にある書物の多くは地理、歴史、伝記であり、魔導書(魔法の指南書のこと)や物語のようなものは少ない。
これも文化の違いというやつなのだろう。
俺は魔力の腕を書庫に200本ほど具現化して書物を片っ端から目を通している。
魔力の腕に視覚も共有することで、一々肉眼で見なくとも書物が読める。
さらに、魔術で鍛えた並行思考技術を使うことで複数の書物を同時に読めるため、この書庫にあるすべての書物に目を通し終わるのもあと少しだ。
「ユーリくん、ここの意味教えて」
隣で書物を読んでいたセレーナがわからないところを指差して聞いてくる。
その際に俺の体にピッタリと体を寄せてくるため、セレーナのいい匂いが鼻孔をくすぐって、胸がソワソワとして何かがヤバイ。
セレーナのことだから、わざとではないのだろうけど、というか嫁だからいくらでもくっついていいんだけど、俺の理性を少し、もう少しだけ考慮してほしい。
「ユーリくん?」
俺の顔を純粋無垢な表情でセレーナが覗く。
煩悩を必死に打ち消して、俺は何とか答える。
「こ、これは……という意味で、もう少しざっくり言うと……ってことだね」
「そっか! ありがとう、ユーリくん」
そう言ったセレーナは無邪気に俺に抱きつく。
に、逃げてくれ、セレーナ! 俺の中に眠る狼が暴れ出そうとしてるっ! くっ、もうダメか……。
「ユーリ様、少しいいですか?」
「わうっ! な、なに? リリー」
セレーナに襲い掛かろうと出していた両腕を慌てて背中に隠し、何事もなかったかのように取り繕う。
「わう? あ、そうではなくて、この書物何ですが……」
リリーもわからないところがあったらしく、俺はリリーの疑問点を丁寧に答えていく。
質問の多くは魔術関連であり、少ないながらもこの書庫にあった魔導書をリリーは読んでいた。
魔術について基本的な部分は同じだが、龍人族と人族の違いなのか解釈が所々違う。
それに、明らかに魔術のレベルが龍人族と比べて遅れている。
種族的な能力の差はしょうがないとは言っても、ここにある魔導書は龍人族の子供が遊びながら覚えるところだ。それをさも高度な技術として書かれている。
うーん、何でだろ?
「リリー、この魔導書も参考程度に読むだけでいいよ」
「はい、ユーリ様」
リリーはこくりと一度頷き、それから言葉を続ける。
「初日にも参考程度にとおっしゃっていましたけど、この書庫に置いてある魔導書はそれほどまでに実践的ではないのですか?」
「何て言ったらいいのかな。目玉焼きの作り方を無理やり難しく説明しているような、そんな感じなんだよ。目玉焼きなんて、卵を割って焼く、工程で言えばそれだけだ」
「なるほど……」
「確かに、目玉焼きが火加減や焼き時間で変わるように、魔法も魔力やイメージによってその効果は変わる。でもそれは、経験やその場によって変化していくものだから、定石があったとしても例外はいくらでも存在する」
「はい」
いつの間にか魔術講義になってるな。
セレーナも隣でふむふむと頷いて聞いている。
集落にいるときに、セレーナには一度教えているから復習だな。
「魔導書はあくまで「魔法へと導く書物」であり、魔法を定めるものではないんだ」
「ユーリ様、わかりました! 魔法は1つではない、ということですね」
「うん、正解」
俺がそう言って、頭を軽くポンポンと撫でるとリリーは嬉しそうに笑う。
うん、この笑顔は完全に女の子だよね。
「魔法の話をしていたら、魔法の練習がしたくなってきました。僕、外に行ってきます!」
「そっか、気をつけてな」
「はい!」
それでは行ってまいります、とお辞儀をしてリリーは書庫を去る。
その姿を見て、俺は魔法の練習に明け暮れた過去の自分を思い出して重なって見えた。
頑張れ、少年よ。
こんな気持ちになってしまうのは、俺も歳をとったということなのかな? いや、この世界だとまだ12歳なんだけどね。
「ねぇ、ユーリくん」
「なに?」
「私、ここの意味がわかったよ! これはね……ということでね、だから……ということなんだよ」
うん、合ってる。
合ってるけど、それ、さっき俺がした説明と同じだね。
「……ね?」
セレーナの何かを期待する瞳が俺を見つめる。
ね? とは……。
えーと……あ、そういうことか。
「すごいね、セレーナ! よしよし」
「ふふふ」
俺はセレーナの頭を優しく撫でる。
満足そうなセレーナの表情を見て、俺の頬も緩んでしまう。
俺の嫁が可愛すぎて困っている件。
しばらく二人でイチャイチャしたのはここだけの秘密だ。(アカネにバッチリ見られてました)
読んで頂きありがとうございます!!
イチャイチャさせるのは楽しいですね。
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