魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

37 試験終了と異変

 申し訳ありません。
 本当に申し訳ありません……。



 初手、俺は強化魔法で脚力を強化したその脚でガイドさんに迫る。

 急速に迫る俺にガイドさんは眉ひとつ動かさない。というより、俺のことを見ていない。

 俺が立っていた場所に視線を向けたままだ。

 戦闘中に相手を見ないなんて……余程余裕があるのか、もしくは何かの作戦か?

 一度距離を置いて様子を伺うか?

 でも、魔力の流れは感じない。何かの魔法が発動する可能性は極めて低いはずだ。

 ハッタリ?

 それならやはり正面に意識を向けさせて、次の手につなげる!

 ガイドさんの懐に潜り込む。

 しかし、これでもガイドさんは反応しない。

 俺は迷いを断ち切り、攻める。

 迫った勢いを乗せた拳をガイドさんのアゴに向けて繰り出す。

 アレ? おかしい。

 俺は違和感を感じ、すんでのところで拳を止める。

 拳圧でガイドさんの前髪がなびく。

「なっ!?」

「……え?」

 やっと俺に目線を合わしたガイドさんの顔は驚愕に染まっていた。

「いつの間に……」

 ガイドさんの呟きを聞いて納得がいく。

 俺の動きが見えてなかったのか。

 ガイドさんから少し離れ、構えを解く。

「……」

「……」

 少しばかり沈黙が続く。

 悪いことをしていないのに、何故か悪いことをしてしまったかのようなこの罪悪感はなんだろう?

「えーと、その、何だ……試験は合格だ」

 歯切れ悪くガイドさんが言う。

 その表情には動揺が残っていた。

「やったね! ユーリくん!」

「すごいです! ユーリ様っ!」

「……当然、でも……おめでとう」

 離れて見ていたセレーナたちが駆け寄ってきた。

 興奮した様子のセレーナとリリー。淡白な言い方だがアカネも喜んでいるようだった。

 まぁ、何はともあれ合格は合格だ。

 これからは冒険者ってことになるのかな?

 まだ手続きとかはしていないし、正確にはそれを済ませてからだろうけど。

 試験が終わり胸をなでおろしていた、その時だった。

 ――――ドガーンッ!!!!

 町の南側から何かを破壊するような爆音が響いた。

 更に破壊音は続く。

 魔力探知で相手がどんなやつかは最初の破壊とともにわかった。

「……龍」

 サンサイさんが言っていた龍の目撃情報は本当だったようだ。

 ただ、龍人の可能性は低い。

 魔力の流れが龍人のそれとは違う。

 だとしても不審な点はある。

 龍種は魔獣の中でも知性があり、長命な個体は思念魔法による対話も可能だと言う。

 そして何より龍種は自身の縄張りから離れることを極端に嫌うという種族性をもつ。

 何かある。

「セレーナとリリーはここに居てくれ。アカネ、行くぞ」

「んっ」

「わたしも一緒に!」

 セレーナが俺の袖を掴み、俺をジッと見つめる。その瞳の中には不安と寂しさの色が強く混じっていた。

 俺はセレーナを守るために強くなった。

 側にいたら守れない、なんてことはない。

 セレーナがどこに居たって守ってみせる。

 本当は連れて行かない方がいいとは思うけど、不安な思いはさせたくないとも思う。

 寂しい思いはもっとさせたくない。

「わかった。一緒に行こう」

「うんっ!」

 セレーナが太陽のような明るい笑顔を見せる。

「ぼ、僕も、連れて行ってください!」

「リリーも?」

「お願いします!」

 リリーだけ置いていくのも可哀想か。

 それに見ることも修行になる。

「わかった。これも勉強だ」

「はいっ」

 アカネ、セレーナ、リリーが俺の側にいることを確認する。

 転移する直前、待ったという声がかかる。

「行くのか?」

 ガイドさんが緊張感のある声で聞く。

 二級冒険者だからこそか、町が危険な状況だとガイドさんは理解しているように見えた。

「はい、行きます」

「そうか……お前はもう立派な冒険者だな」

 何かを決意するようにガイドさんは一度目を瞑ってから、そして再び目を開けた。

「俺も行こう」

「いや、大丈夫ですよ」

「え?」

「多分、俺一人でどうにかできそうですから」

 出鼻をくじかれたような表情でガイドさんは言葉を詰まらせる。

「それじゃ、行ってきますね」

 俺は転移魔法を使い、龍の魔力を感じる方へ4人で転移する。

 転移の間際に「あっ、ま……え!?」という声が聞こえた気がするけど、まぁ後で誤魔か……もとい説明しよう。



 読んで頂きありがとうございます!!

 今日中にもう一話更新します!
 だから許してください……(切願)

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