魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
30 買取窓口
「ここが冒険者ギルドか」
町の中央は正方形に近い大きな空間になっていて、俺たちが通った大通りから見て右角の位置に存在する一際目立つ大きな建物。
他が2階建に対し、冒険者ギルドは4階まであるように見える。それに3軒分の横幅があるため、その存在感は町一番と言っても過言ではない。
「入口はあちらです。みなさん、行きましょう!」
「うん」
「大きい〜!」
「……」
こんなに大きな建物はこの世界に来てから初めてかもしれないな、と思いながらリリーに続く。
開きっぱなしの立派な扉を横目にギルドの中へ入る。
外観に負けず劣らず内観もすごかった。
まず広さ。1階の天井を取っ払って2階分の高さがある1階は、10は軽く超える数の長机と椅子が一体になったものが並び、奥には受付らしきカウンターが設けられている。
5つのついたてが並ぶカウンターの隣には上階へと続く階段が壁沿いに建てられている。
木とレンガで造られた建物は日本の近代的な建物とは違う温かみがあった。
「あの奥にあるカウンターが受付です。左3つが冒険者窓口、その1つ隣が一般者窓口、残り2つが買取窓口です」
窓口にはそれぞれ受付職員が立っていて、冒険者窓口にはちょっとした列が出来ている。
「では、買取窓口へ行きましょう」
「うん」
「あ、待って、ユーリくん」
「……(影に入りたい。一瞬で入れば誰にも見られない)」
「アカネ、まだ影に入るのはダメだぞ」
「……」
恨めしそうに俺を見るアカネに釘を刺しつつ、リリーに続く。
***
私はいつも通り買取窓口で受付業務をしていると、1人の子供がこちらに近づいてくるのがわかった。
新調したばかりなのか汚れ一つない綺麗な黒いローブは、明らかに高級な素材を使っていると見える。
よく手入れされた金髪は、その幼い顔つきながら美形と言わしめる愛らしい顔に高貴さを作り出している。
貴族のご子息かしら?
しかし、貴族が冒険者ギルドを利用することは滅多にない。魔獣討伐などを請け負う冒険者を野蛮だと思っている貴族が多いというのが一つの要因だ。
その子供が窓口のそばに来て、やっとそれが誰だか判明した。
「あらっ! リリーくんじゃない!」
「こんにちは、ナータさん」
礼儀正しく挨拶するリリーくん。
それを見て私も「こんにちは」と返す。
「それにしてもどうしたのその格好? リリーくんだってわからなかったわ」
「これは師匠から頂いたものです。僕の大切な宝物です」
「師匠?」
「はい、魔術の師匠です」
「やったじゃない! ずっと魔術を学びたいって言っていたものね」
リリーくんは「はい」と落ち着いた風に言うが、その表情からは嬉しさがしっかり伝わってきた。
「ところで今日はポーションの買取かしら?」
「いえ、魔獣の素材を持ってきました」
魔獣の素材?
私はてっきりいつもと同じように自家製ポーションを持ってきたのだと思っていたが、どうやら違うらしい。
それにしても魔獣の素材なんて道端に落ちているようなものではないし、ましてやリリーくんが魔獣を倒せるほどいきなり強くなったとは考え難い。
私は不審に思いつつ、ローブの内側から荷物袋を取り出すリリーくんを見る。
「これなんですけど……」
次々とカウンターに置かれていく素材。500トルメロー(50センチ)くらいの黒い角が数十本、それよりやや小さい赤みを帯びた牙が数十本、さらにリリーくんが着ているローブの素材と同じ皮が数十枚……って多いわよ!
どの素材も嘘のように劣化がなく、生きた状態で採取したのではと疑いたくなるほどだ。
素材買取としては最高品質と言っても過言ではない。
「……これ、全てリリーくんが?」
「ま、まぁ、そ、そんな感じです」
怪しい。これは裏があるわ。
しかし、ギルド職員として利用者の内情を詮索するのは規則違反だ。特別な理由もなく入手方法を聞き出すのは以ての外である。すごく気になるけど。
「まぁいいわ。査定するから、ギルド証を預からせてね」
「はい」
「査定するから後ろの席で少し待ってて」
リリーくんからギルド証を受け取り、私はかなり量がある素材を見て応援を呼ぶ。
カウンターの後ろにある査定台に素材を運び、応援で来た職員は早々に査定作業を始める。
私も始めようと思ったその時だ。応援で来た彼が青ざめた顔で私を見ていた。
「え? どうしたの?」
「これ、よく見てください」
私は差し出された黒い角を見る。そしてやっと事態の異常さに気がついた。
黒い角を持つ魔獣はそれなりにいる。だが、この角はそう言った次元の話ではない。
「まさか『二角獣』の角なの!?」
自分の目が信じられない。
「僕も信じられません。でも、この漆黒の色と模様は僕が知る限り、バイコーンしか思い当たりません」
そう、彼の言う通りだ。
黒、それも漆黒と呼べるほど深い黒。そこに存在する独特な波紋を何重にも重ねたような模様は厄災獣の一種、二角獣バイコーンの角を意味する。
厄災獣とは1体で町(街)を壊滅状態にできる脅威をもつ魔獣のことを指す。
そのバイコーンの角が32本。バイコーン1体から2本取れるとして、単純計算で16体……。
1体でも緊急避難警報が発令されるレベルなのよ。それが16体って……異常だわ。
「何が起こっているの?」
真相を知っているのは恐らくリリーくんだけだろう。
これは冒険者ギルドとして状況の把握が必要だわ。
ただ問題なのはリリーくんが冒険者ではないということね。
「先輩……この牙、怪獅子の牙です。それにこの皮は蛇竜王の皮ですよ……」
「…………」
読んで頂きありがとうございます!!
昨日更新できずに申し訳ありません……。
書き溜めできればいいのですが(ないものねだり)
それに厄災獣とか言って、素材を無事に買い取ってもらえるんですかね(作者は誰?)
町の中央は正方形に近い大きな空間になっていて、俺たちが通った大通りから見て右角の位置に存在する一際目立つ大きな建物。
他が2階建に対し、冒険者ギルドは4階まであるように見える。それに3軒分の横幅があるため、その存在感は町一番と言っても過言ではない。
「入口はあちらです。みなさん、行きましょう!」
「うん」
「大きい〜!」
「……」
こんなに大きな建物はこの世界に来てから初めてかもしれないな、と思いながらリリーに続く。
開きっぱなしの立派な扉を横目にギルドの中へ入る。
外観に負けず劣らず内観もすごかった。
まず広さ。1階の天井を取っ払って2階分の高さがある1階は、10は軽く超える数の長机と椅子が一体になったものが並び、奥には受付らしきカウンターが設けられている。
5つのついたてが並ぶカウンターの隣には上階へと続く階段が壁沿いに建てられている。
木とレンガで造られた建物は日本の近代的な建物とは違う温かみがあった。
「あの奥にあるカウンターが受付です。左3つが冒険者窓口、その1つ隣が一般者窓口、残り2つが買取窓口です」
窓口にはそれぞれ受付職員が立っていて、冒険者窓口にはちょっとした列が出来ている。
「では、買取窓口へ行きましょう」
「うん」
「あ、待って、ユーリくん」
「……(影に入りたい。一瞬で入れば誰にも見られない)」
「アカネ、まだ影に入るのはダメだぞ」
「……」
恨めしそうに俺を見るアカネに釘を刺しつつ、リリーに続く。
***
私はいつも通り買取窓口で受付業務をしていると、1人の子供がこちらに近づいてくるのがわかった。
新調したばかりなのか汚れ一つない綺麗な黒いローブは、明らかに高級な素材を使っていると見える。
よく手入れされた金髪は、その幼い顔つきながら美形と言わしめる愛らしい顔に高貴さを作り出している。
貴族のご子息かしら?
しかし、貴族が冒険者ギルドを利用することは滅多にない。魔獣討伐などを請け負う冒険者を野蛮だと思っている貴族が多いというのが一つの要因だ。
その子供が窓口のそばに来て、やっとそれが誰だか判明した。
「あらっ! リリーくんじゃない!」
「こんにちは、ナータさん」
礼儀正しく挨拶するリリーくん。
それを見て私も「こんにちは」と返す。
「それにしてもどうしたのその格好? リリーくんだってわからなかったわ」
「これは師匠から頂いたものです。僕の大切な宝物です」
「師匠?」
「はい、魔術の師匠です」
「やったじゃない! ずっと魔術を学びたいって言っていたものね」
リリーくんは「はい」と落ち着いた風に言うが、その表情からは嬉しさがしっかり伝わってきた。
「ところで今日はポーションの買取かしら?」
「いえ、魔獣の素材を持ってきました」
魔獣の素材?
私はてっきりいつもと同じように自家製ポーションを持ってきたのだと思っていたが、どうやら違うらしい。
それにしても魔獣の素材なんて道端に落ちているようなものではないし、ましてやリリーくんが魔獣を倒せるほどいきなり強くなったとは考え難い。
私は不審に思いつつ、ローブの内側から荷物袋を取り出すリリーくんを見る。
「これなんですけど……」
次々とカウンターに置かれていく素材。500トルメロー(50センチ)くらいの黒い角が数十本、それよりやや小さい赤みを帯びた牙が数十本、さらにリリーくんが着ているローブの素材と同じ皮が数十枚……って多いわよ!
どの素材も嘘のように劣化がなく、生きた状態で採取したのではと疑いたくなるほどだ。
素材買取としては最高品質と言っても過言ではない。
「……これ、全てリリーくんが?」
「ま、まぁ、そ、そんな感じです」
怪しい。これは裏があるわ。
しかし、ギルド職員として利用者の内情を詮索するのは規則違反だ。特別な理由もなく入手方法を聞き出すのは以ての外である。すごく気になるけど。
「まぁいいわ。査定するから、ギルド証を預からせてね」
「はい」
「査定するから後ろの席で少し待ってて」
リリーくんからギルド証を受け取り、私はかなり量がある素材を見て応援を呼ぶ。
カウンターの後ろにある査定台に素材を運び、応援で来た職員は早々に査定作業を始める。
私も始めようと思ったその時だ。応援で来た彼が青ざめた顔で私を見ていた。
「え? どうしたの?」
「これ、よく見てください」
私は差し出された黒い角を見る。そしてやっと事態の異常さに気がついた。
黒い角を持つ魔獣はそれなりにいる。だが、この角はそう言った次元の話ではない。
「まさか『二角獣』の角なの!?」
自分の目が信じられない。
「僕も信じられません。でも、この漆黒の色と模様は僕が知る限り、バイコーンしか思い当たりません」
そう、彼の言う通りだ。
黒、それも漆黒と呼べるほど深い黒。そこに存在する独特な波紋を何重にも重ねたような模様は厄災獣の一種、二角獣バイコーンの角を意味する。
厄災獣とは1体で町(街)を壊滅状態にできる脅威をもつ魔獣のことを指す。
そのバイコーンの角が32本。バイコーン1体から2本取れるとして、単純計算で16体……。
1体でも緊急避難警報が発令されるレベルなのよ。それが16体って……異常だわ。
「何が起こっているの?」
真相を知っているのは恐らくリリーくんだけだろう。
これは冒険者ギルドとして状況の把握が必要だわ。
ただ問題なのはリリーくんが冒険者ではないということね。
「先輩……この牙、怪獅子の牙です。それにこの皮は蛇竜王の皮ですよ……」
「…………」
読んで頂きありがとうございます!!
昨日更新できずに申し訳ありません……。
書き溜めできればいいのですが(ないものねだり)
それに厄災獣とか言って、素材を無事に買い取ってもらえるんですかね(作者は誰?)
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