魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
29 町とギルド証
俺たちは転移魔法を使い町の近くまで転移した。
町は村とは違い、木造の立派な防壁で囲まれている。
規模も村が民家10軒前後だったのに対し、町はその10倍くらいはあると思う。
集落は面積で言えばこの町の数倍はあるが、こんなに建物と建物が密集した造りになっていないからか、町というものが新鮮に感じた。
「ユーリ様、入口はあっちです。行きましょう!」
「あ、うん」
俺はリリーに手を引かれ、入口へ進む。
「あ! ずるいっ、わたしも!」
そう言ってセレーナが反対の手を握ってきた。
そんなに対抗しなくても、と思いつつもちょっと嬉しい。
俺は後ろから鋭い視線を感じながら、町の入口にたどり着いた。
入口には門番らしき中年の大男が1人立っていた。
「君たちギルド証は持っているか?」
大男は落ち着いた低い声で聞く。
ギルド証? 通行証的なものか?
俺はリリーに耳打ちして聞いてみる。
「ギルド証って何?」
「ギルド証をご存知ないのですか?」
リリーは少し驚いた顔をしてから、すぐに教えてくれる。
ギルド証とは世界各地に存在する『冒険者ギルド』と呼ばれる施設から発行される身分証のようなものらしい。
町以上の規模になると入るためにギルド証の提示を求めらるため、大抵の人はギルド証を持っているとのことだ。
「俺たちはギルド証を持ってないけど……」
「そうですね……ちょっと待っていて下さい」
そう言ってリリーは門番の近くまで行き、何か話し始めた。
少しばかりして、リリーが戻ってくる。
「皆さんのギルド証は紛失したことにしました。幸い僕はギルド証を持っているので、今回はそれで通してくれるそうです」
リリーのコミュニケーション能力の高さに感心しつつ、俺は感謝する。
「助かったよ」
「いえ、これくらい弟子として当たり前のことです!」
「それでも、ありがとう。リリー」
「はいっ」
嬉しそうにリリーが頬を緩ませた。
***
門を抜け、町に入るとまた一段と迫力を感じた。背の高い建物がずらりと並び、町の中央へと伸びる大きな道をつくっている。
中央へ近づくごとに人と店が増え、活気に満ちていた。
「集落より小さいのに人がいっぱいだね」
セレーナが俺の近くまで寄ってきて話しかけてくる。
俺は頷き返して改めて町を見渡す。
道に沿って並ぶ建物は2階建てのものが殆どで、その多くが1階が店舗、2階が住居のつくりになっているようだった。
そして何より気になるのは飲食店の多さだ。
人が出入りしている店の多くが飲食店であり、行列が出来ている店さえある。
これは調査が必要そうだ。
「いい匂い!」
セレーナの言う通り、この通りは美味しい匂いで充満していた。
アカネもスンスンと鼻を鳴らしてしまうくらいのいい匂いがあちらこちらで香った。
いい匂いに気を取られていたが、そう言えばリリーに聞きたいことがあったのだ。
「リリー、ギルド証の発行には何が必要?」
「ギルド証ですか? そうですね、まずお金が必要です。確か5万Gだったと思います」
そこで俺は気がついた。
俺たち、無一文じゃない?
「俺たち無一文なんだけど……」
「えっ!? それは冗談で……はないみたいですね」
立ち止まったリリーは俺の顔を見て察してくれる。
「実は、この国の貨幣についてもよく知らないんだ」
「そ、そうなんですね。貨幣についてお教えするのは簡単ですが、困りました……5万G、いえ3人なので……15万G、そんな大金を僕は持っていません」
本当に困った顔をしているリリー。
確かに困ってはいるけど、それよりリリーってもしかして頭が良い子?
俺はもちろん日本の義務教育を終えて、高校にも進学したからこんな計算は一瞬だけど……リリーってまだ8歳くらいだよね?
この国では逆にこれが普通なのか?
セレーナとアカネはどうかって? 無論、できません。勉強より大切なものがあるはずさ……。
「ユーリ様、お聞きしてもいいですか?」
「ん? 何?」
「ユーリ様はもう一度、あのシザーマンティスを倒すことができますか?」
「うん、いくらでも」
「いくらでも!? ……し、失礼しました。それならお金を手に入れるのは簡単ですよ!」
「本当!」
「はいっ、冒険者ギルドでは魔獣の素材の買取もしているので、倒した魔獣の素材を売って換金しましょう!」
「それってどんな魔獣でもいいの?」
「はい。素材の状態が良ければ買取額も高くしてくれますよ」
「それなら空間魔法に余った魔獣の素材があるから狩りに行かなくても大丈夫だな」
修行中にひたすら戦ってたから魔獣の素材はたくさんある。
だから毎食豪華にしても食料には困らないし、むしろ全て食べきるには覚悟がいるくらいだ。
食べられない部分は、落ち着いたら武器でも作ってみようかと思っていたから取って置いてある。売れるものもそれなりにあるはずだ。
「く、空間魔法……」
(いつも気になっていたのです。ユーリ様方3人が荷物を全く持ち歩いていないのはそういう理由だったのですね)
あ、またやってしまったか?
リリーの表情は転移魔法を始めて使った時と似たようなものになっていた。
「ユーリ様、失礼ながら空間魔法を人目につくところでお使いにならない方がいいかと思います」
「そうだね。気をつけるよ」
空間魔法も多分、伝説の魔法扱いだよね。
そう言ったところにも気が回るとは、俺はいい弟子を持ったよ。
「ユーリくん、どうしたの? 道に迷った?」
「大丈夫。これからギルド証を作りに行こう」
「リリーちゃんが持ってたやつ?」
そうだよ、とセレーナに返してから、俺はアカネをチラリと見る。
俺の背を盾にするように隠れて、影に入りたそうに見えた。
だけど、アカネには人前で影に入ってはダメだと言ってあるため我慢しているのだろう。
やっぱり町は刺激が強かったか?
いきなり逃げ出さないところを見ると成長を感じる。
可哀想だが、ギルド証を作るまではまだ我慢してもらおう。頑張れアカネ!
「それじゃ、冒険者ギルドまで案内してくれるか?」
「はいっ」
俺たちはリリーを先頭に活気が溢れる方へと進んで行くのであった。
読んで頂きありがとうございます!!
町にはとりあえず入れましたね。よかったよかった。
お金について出てきましたが、5万G(仮)くらいに思って頂けると幸いです……。
変更の可能性もありえます。
見切り発車な作者で申し訳ありません。
町は村とは違い、木造の立派な防壁で囲まれている。
規模も村が民家10軒前後だったのに対し、町はその10倍くらいはあると思う。
集落は面積で言えばこの町の数倍はあるが、こんなに建物と建物が密集した造りになっていないからか、町というものが新鮮に感じた。
「ユーリ様、入口はあっちです。行きましょう!」
「あ、うん」
俺はリリーに手を引かれ、入口へ進む。
「あ! ずるいっ、わたしも!」
そう言ってセレーナが反対の手を握ってきた。
そんなに対抗しなくても、と思いつつもちょっと嬉しい。
俺は後ろから鋭い視線を感じながら、町の入口にたどり着いた。
入口には門番らしき中年の大男が1人立っていた。
「君たちギルド証は持っているか?」
大男は落ち着いた低い声で聞く。
ギルド証? 通行証的なものか?
俺はリリーに耳打ちして聞いてみる。
「ギルド証って何?」
「ギルド証をご存知ないのですか?」
リリーは少し驚いた顔をしてから、すぐに教えてくれる。
ギルド証とは世界各地に存在する『冒険者ギルド』と呼ばれる施設から発行される身分証のようなものらしい。
町以上の規模になると入るためにギルド証の提示を求めらるため、大抵の人はギルド証を持っているとのことだ。
「俺たちはギルド証を持ってないけど……」
「そうですね……ちょっと待っていて下さい」
そう言ってリリーは門番の近くまで行き、何か話し始めた。
少しばかりして、リリーが戻ってくる。
「皆さんのギルド証は紛失したことにしました。幸い僕はギルド証を持っているので、今回はそれで通してくれるそうです」
リリーのコミュニケーション能力の高さに感心しつつ、俺は感謝する。
「助かったよ」
「いえ、これくらい弟子として当たり前のことです!」
「それでも、ありがとう。リリー」
「はいっ」
嬉しそうにリリーが頬を緩ませた。
***
門を抜け、町に入るとまた一段と迫力を感じた。背の高い建物がずらりと並び、町の中央へと伸びる大きな道をつくっている。
中央へ近づくごとに人と店が増え、活気に満ちていた。
「集落より小さいのに人がいっぱいだね」
セレーナが俺の近くまで寄ってきて話しかけてくる。
俺は頷き返して改めて町を見渡す。
道に沿って並ぶ建物は2階建てのものが殆どで、その多くが1階が店舗、2階が住居のつくりになっているようだった。
そして何より気になるのは飲食店の多さだ。
人が出入りしている店の多くが飲食店であり、行列が出来ている店さえある。
これは調査が必要そうだ。
「いい匂い!」
セレーナの言う通り、この通りは美味しい匂いで充満していた。
アカネもスンスンと鼻を鳴らしてしまうくらいのいい匂いがあちらこちらで香った。
いい匂いに気を取られていたが、そう言えばリリーに聞きたいことがあったのだ。
「リリー、ギルド証の発行には何が必要?」
「ギルド証ですか? そうですね、まずお金が必要です。確か5万Gだったと思います」
そこで俺は気がついた。
俺たち、無一文じゃない?
「俺たち無一文なんだけど……」
「えっ!? それは冗談で……はないみたいですね」
立ち止まったリリーは俺の顔を見て察してくれる。
「実は、この国の貨幣についてもよく知らないんだ」
「そ、そうなんですね。貨幣についてお教えするのは簡単ですが、困りました……5万G、いえ3人なので……15万G、そんな大金を僕は持っていません」
本当に困った顔をしているリリー。
確かに困ってはいるけど、それよりリリーってもしかして頭が良い子?
俺はもちろん日本の義務教育を終えて、高校にも進学したからこんな計算は一瞬だけど……リリーってまだ8歳くらいだよね?
この国では逆にこれが普通なのか?
セレーナとアカネはどうかって? 無論、できません。勉強より大切なものがあるはずさ……。
「ユーリ様、お聞きしてもいいですか?」
「ん? 何?」
「ユーリ様はもう一度、あのシザーマンティスを倒すことができますか?」
「うん、いくらでも」
「いくらでも!? ……し、失礼しました。それならお金を手に入れるのは簡単ですよ!」
「本当!」
「はいっ、冒険者ギルドでは魔獣の素材の買取もしているので、倒した魔獣の素材を売って換金しましょう!」
「それってどんな魔獣でもいいの?」
「はい。素材の状態が良ければ買取額も高くしてくれますよ」
「それなら空間魔法に余った魔獣の素材があるから狩りに行かなくても大丈夫だな」
修行中にひたすら戦ってたから魔獣の素材はたくさんある。
だから毎食豪華にしても食料には困らないし、むしろ全て食べきるには覚悟がいるくらいだ。
食べられない部分は、落ち着いたら武器でも作ってみようかと思っていたから取って置いてある。売れるものもそれなりにあるはずだ。
「く、空間魔法……」
(いつも気になっていたのです。ユーリ様方3人が荷物を全く持ち歩いていないのはそういう理由だったのですね)
あ、またやってしまったか?
リリーの表情は転移魔法を始めて使った時と似たようなものになっていた。
「ユーリ様、失礼ながら空間魔法を人目につくところでお使いにならない方がいいかと思います」
「そうだね。気をつけるよ」
空間魔法も多分、伝説の魔法扱いだよね。
そう言ったところにも気が回るとは、俺はいい弟子を持ったよ。
「ユーリくん、どうしたの? 道に迷った?」
「大丈夫。これからギルド証を作りに行こう」
「リリーちゃんが持ってたやつ?」
そうだよ、とセレーナに返してから、俺はアカネをチラリと見る。
俺の背を盾にするように隠れて、影に入りたそうに見えた。
だけど、アカネには人前で影に入ってはダメだと言ってあるため我慢しているのだろう。
やっぱり町は刺激が強かったか?
いきなり逃げ出さないところを見ると成長を感じる。
可哀想だが、ギルド証を作るまではまだ我慢してもらおう。頑張れアカネ!
「それじゃ、冒険者ギルドまで案内してくれるか?」
「はいっ」
俺たちはリリーを先頭に活気が溢れる方へと進んで行くのであった。
読んで頂きありがとうございます!!
町にはとりあえず入れましたね。よかったよかった。
お金について出てきましたが、5万G(仮)くらいに思って頂けると幸いです……。
変更の可能性もありえます。
見切り発車な作者で申し訳ありません。
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