魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
18 1次試験
長と話してから3日後、俺の武龍団入団式は行われた。
訓練場を会場にして武龍団総員と、セレーナを始めとした俺のことを知る人たちに参観されながら入団式は滞りなく進んだ。
ただ俺の入団式は異例だらけのものになった。
最年少入団、人族入団、最年少班長就任……などなど。
若干のどよめきもあったにはあったが、みんな認めてくれたのか沢山の拍手を送ってくれた。
入団式が終われば次は宴だ。
美味しい料理とお酒(俺は飲んでないけど)に囲まれて楽しく騒がしい1日が過ぎた。
入団式から数日が経過した。
俺は長との話にもあった班員の選抜をするために訓練場にて志願者の試験をしていた。
入団式の日に試験のことを話したのだが、ざっと見たところ30名ほどいる。いくら対象が武龍団全員とは言え多いような気が……。
でも、それだけ期待されているのかもしれないと考えると嬉しくなる。
志願者は昔からの顔見知りの人もいれば、あまり話したことがない人もいた。
さすが武龍団と言ったところか、指示はなくとも自然と整列している。
その列を横に見ていくと……。
「ん? 母さん……気のせいか」
「副団長! ドキドキしますね!」
「うるさいぞ、フリージア。もうすぐ試験が始まる」
うん、母さんだ。
それにフリージアお姉ちゃんもいる。
多分、見学だよね。しっかり列に並んでるけど……。
俺は母さんに声をかけることにする。
「母さん」
母さんは俺が近づいてくることに気がついてなかったのか、ビクッと肩が跳ねる。
「ゆ、ユーリっ、どうしたんだ?」
「いや、聞きたいのはこっちだよ! ……まさかとは思うけど、母さんも試験を受けるとか言わないよね?」
母さんはわかりやすいくらい視線を泳がせてから言い訳を並べていく。
「違うんだ! フリージアがな、どうしても試験を受けたいと言うものだから、邪魔をしないか監視しに来たんだ!」
「ちょ! 副団長!? 付いて来いって言ったのはふく、モガモガッ!?」
母さんはフリージアお姉ちゃんの口を強引に閉じさせて鬼のような目で睨みつける。
そして何もなかったかのように俺の方も見てニコッと笑う。
「な?」
「母さんとフリージアお姉ちゃんはそこで見学!」
俺は訓練場の端の方をビシッと指差して言う。
母さんたちは列から抜けると、また言い争いながら俺が指差した場所まで行くのであった。
武龍団全員とは言ったって、班長、班長補佐級は自粛しようよ。
***
「皆さん、試験に参加して頂きありがとうございます!」
俺が一言発すると、みんなの視線が一気に俺へと集まるのがわかる。
「これから試験を始めたいと思いますが、その前に注意事項を説明します」
注意事項は
・試験は3段階(1次、2次、最終試験)に分かれていて、その都度合否を決定していく。
・龍化は禁止とする。
・他の受験者の妨害はしないこと。
主な注意事項はこんなところだ。
試験を3段階にしたのは思ったよりも人数が多かったためで、龍化を禁止したのは外の世界で龍化なんかしたら一瞬にして騒ぎになるからだ。
そうなれば龍帝国に気づかれるのは当然だし、そもそも騒ぎが大きくなると動きづらくなる。
3つ目は武龍団に関して言えば心配はいらないと思う。母さんの部下だもんね。
「では1次試験――始め!」
受験者たちは一斉に各々の目前にある氷塊へ殴り、蹴り、魔法を放つ。
1次試験は制限時間内(太陽が真上に来るまで)に俺が創り出したヒト3人分くらいある氷塊を破壊するという内容だ。
「ヤッ!」
俺のすぐ側にいる受験者の1人が今まさに氷塊を殴る。しかし……。
「痛ッ! か、かてぇ…………」
手を摩りながらその堅さに不審な目を向けていた。
そして他のところでも同じようなことが起こっていた。
***
「副団長、アレただの氷塊じゃないんですか?」
「氷塊は氷塊だが、ユーリがつくった氷塊だからな」
「あぁ……なるほど」
ただの氷塊なら武龍団の者が破壊できないわけがない。それも一撃で破壊できるはずだ。
しかし今回の試験の氷塊はきっと鋼鉄よりも堅いのだろう。それだけユーリの魔法は異常というわけだ。
受験者が可哀想に思えてくるな。
いや、それくらいできなければユーリのサポートはできない。
それにしてもユーリが班長……う、うぅ、泣きそうになるな、危ない、危ない。
「副団長、1人で何やってるんですか?」
「ほっとけ!」
***
「そこまで! 合否の確認をするのでそのまま待機してて下さい」
氷塊が破壊されている位置を確認して、あらかじめ作っておいた名簿にチェックを入れていく。
結果、1次試験合格者は29名中11名。
半分以下、いや約3分の1か?
試験としては無難なのかもしれないけど、本当はもう少し残って欲しかったのは正直なところだ。
そんなに難しかったかな?
俺は不合格となってしまった人たちに来てくれたことをお礼しながら見送っていく。
そして残った11名にお昼休憩の後に2次試験を行うことを伝え解散する。
「お疲れ様」
「お疲れ〜」
母さんとフリージアお姉ちゃんが声をかけてくれる。
「ありがとう。慣れないことをするとやっぱり疲れるね」
「そうだな。でも、私は上出来だと思うぞ」
「そうかな?」
言葉ではそう言いつつも母さんに褒められてすごく嬉しかった。
するとフリージアお姉ちゃんが割り込むように話す。
「ユーリくん聞いてよぉ、副団長たらね、ユーリくんが動く度に一々反応して――痛ッ!? 痛い! 痛いです! ごめんなさい! 私は何も見てません!」
「話の途中で悪いがフリージアがどこか痛いみたいだ。具合を見てくるから話の続きは帰ってからでもしよう」
「う、うん」
「残りの試験も頑張れ」
母さんは笑顔でそう言ってからフリージアお姉ちゃんを抱きかかえる。
反してフリージアお姉ちゃんの目は助けてと訴えていた。
あんなに絶望感のあるお姫様抱っこってあるんだね……。
しばらく呆然とその姿を眺めていると、俺を呼ぶ声が聞こえる。
振り返るとセレーナが手を振っていた。
読んで頂きありがとうございます!!
入団式は別の機会で書けたら書きたい、やっぱり書けないかも、でも書きたいって感じです!
はい、どうでもよいです。
心の声)3章長くなるかも……。
訓練場を会場にして武龍団総員と、セレーナを始めとした俺のことを知る人たちに参観されながら入団式は滞りなく進んだ。
ただ俺の入団式は異例だらけのものになった。
最年少入団、人族入団、最年少班長就任……などなど。
若干のどよめきもあったにはあったが、みんな認めてくれたのか沢山の拍手を送ってくれた。
入団式が終われば次は宴だ。
美味しい料理とお酒(俺は飲んでないけど)に囲まれて楽しく騒がしい1日が過ぎた。
入団式から数日が経過した。
俺は長との話にもあった班員の選抜をするために訓練場にて志願者の試験をしていた。
入団式の日に試験のことを話したのだが、ざっと見たところ30名ほどいる。いくら対象が武龍団全員とは言え多いような気が……。
でも、それだけ期待されているのかもしれないと考えると嬉しくなる。
志願者は昔からの顔見知りの人もいれば、あまり話したことがない人もいた。
さすが武龍団と言ったところか、指示はなくとも自然と整列している。
その列を横に見ていくと……。
「ん? 母さん……気のせいか」
「副団長! ドキドキしますね!」
「うるさいぞ、フリージア。もうすぐ試験が始まる」
うん、母さんだ。
それにフリージアお姉ちゃんもいる。
多分、見学だよね。しっかり列に並んでるけど……。
俺は母さんに声をかけることにする。
「母さん」
母さんは俺が近づいてくることに気がついてなかったのか、ビクッと肩が跳ねる。
「ゆ、ユーリっ、どうしたんだ?」
「いや、聞きたいのはこっちだよ! ……まさかとは思うけど、母さんも試験を受けるとか言わないよね?」
母さんはわかりやすいくらい視線を泳がせてから言い訳を並べていく。
「違うんだ! フリージアがな、どうしても試験を受けたいと言うものだから、邪魔をしないか監視しに来たんだ!」
「ちょ! 副団長!? 付いて来いって言ったのはふく、モガモガッ!?」
母さんはフリージアお姉ちゃんの口を強引に閉じさせて鬼のような目で睨みつける。
そして何もなかったかのように俺の方も見てニコッと笑う。
「な?」
「母さんとフリージアお姉ちゃんはそこで見学!」
俺は訓練場の端の方をビシッと指差して言う。
母さんたちは列から抜けると、また言い争いながら俺が指差した場所まで行くのであった。
武龍団全員とは言ったって、班長、班長補佐級は自粛しようよ。
***
「皆さん、試験に参加して頂きありがとうございます!」
俺が一言発すると、みんなの視線が一気に俺へと集まるのがわかる。
「これから試験を始めたいと思いますが、その前に注意事項を説明します」
注意事項は
・試験は3段階(1次、2次、最終試験)に分かれていて、その都度合否を決定していく。
・龍化は禁止とする。
・他の受験者の妨害はしないこと。
主な注意事項はこんなところだ。
試験を3段階にしたのは思ったよりも人数が多かったためで、龍化を禁止したのは外の世界で龍化なんかしたら一瞬にして騒ぎになるからだ。
そうなれば龍帝国に気づかれるのは当然だし、そもそも騒ぎが大きくなると動きづらくなる。
3つ目は武龍団に関して言えば心配はいらないと思う。母さんの部下だもんね。
「では1次試験――始め!」
受験者たちは一斉に各々の目前にある氷塊へ殴り、蹴り、魔法を放つ。
1次試験は制限時間内(太陽が真上に来るまで)に俺が創り出したヒト3人分くらいある氷塊を破壊するという内容だ。
「ヤッ!」
俺のすぐ側にいる受験者の1人が今まさに氷塊を殴る。しかし……。
「痛ッ! か、かてぇ…………」
手を摩りながらその堅さに不審な目を向けていた。
そして他のところでも同じようなことが起こっていた。
***
「副団長、アレただの氷塊じゃないんですか?」
「氷塊は氷塊だが、ユーリがつくった氷塊だからな」
「あぁ……なるほど」
ただの氷塊なら武龍団の者が破壊できないわけがない。それも一撃で破壊できるはずだ。
しかし今回の試験の氷塊はきっと鋼鉄よりも堅いのだろう。それだけユーリの魔法は異常というわけだ。
受験者が可哀想に思えてくるな。
いや、それくらいできなければユーリのサポートはできない。
それにしてもユーリが班長……う、うぅ、泣きそうになるな、危ない、危ない。
「副団長、1人で何やってるんですか?」
「ほっとけ!」
***
「そこまで! 合否の確認をするのでそのまま待機してて下さい」
氷塊が破壊されている位置を確認して、あらかじめ作っておいた名簿にチェックを入れていく。
結果、1次試験合格者は29名中11名。
半分以下、いや約3分の1か?
試験としては無難なのかもしれないけど、本当はもう少し残って欲しかったのは正直なところだ。
そんなに難しかったかな?
俺は不合格となってしまった人たちに来てくれたことをお礼しながら見送っていく。
そして残った11名にお昼休憩の後に2次試験を行うことを伝え解散する。
「お疲れ様」
「お疲れ〜」
母さんとフリージアお姉ちゃんが声をかけてくれる。
「ありがとう。慣れないことをするとやっぱり疲れるね」
「そうだな。でも、私は上出来だと思うぞ」
「そうかな?」
言葉ではそう言いつつも母さんに褒められてすごく嬉しかった。
するとフリージアお姉ちゃんが割り込むように話す。
「ユーリくん聞いてよぉ、副団長たらね、ユーリくんが動く度に一々反応して――痛ッ!? 痛い! 痛いです! ごめんなさい! 私は何も見てません!」
「話の途中で悪いがフリージアがどこか痛いみたいだ。具合を見てくるから話の続きは帰ってからでもしよう」
「う、うん」
「残りの試験も頑張れ」
母さんは笑顔でそう言ってからフリージアお姉ちゃんを抱きかかえる。
反してフリージアお姉ちゃんの目は助けてと訴えていた。
あんなに絶望感のあるお姫様抱っこってあるんだね……。
しばらく呆然とその姿を眺めていると、俺を呼ぶ声が聞こえる。
振り返るとセレーナが手を振っていた。
読んで頂きありがとうございます!!
入団式は別の機会で書けたら書きたい、やっぱり書けないかも、でも書きたいって感じです!
はい、どうでもよいです。
心の声)3章長くなるかも……。
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