魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
16 調査班
壮絶な話だった。
当時、龍人国は初代龍王――師匠から二代龍王へと世代が変わり、何事もなく平和な時間が過ぎていたはずだった。
しかし、二代龍王の世界支配宣言により龍人至上主義をもつ者たちが過激派となり、龍人国では穏健派(反至上主義)との内戦が勃発してしまう。
師匠率いる穏健派は最初こそ勢力で勝ってはいたものの、過激派の戦力に圧されていく。
ついには形勢逆転されてしまった穏健派は全滅を恐れ、女子供を中心とした龍人を現在の集落がある場所まで逃がした。
穏健派は最後の力を振り絞り、過激派の勢力を削る。
師匠が過激派のトップである二代龍王と刺し違えることで龍人国の内戦は一旦終止符が打たれた。
だが、龍人国の復興は敵わず小さな争いが絶えない荒れた場所になってしまったのだという。
一方、森へと逃れた穏健派の生き残りは巨樹を中心に森を切り拓き、少しずつ現在の集落へと形を変えていった。
その中心人物こそが二代龍王の実子である長の母――ホワイトである。
集落はできたが、その存在を露見することはあってはならない。
そのためにいくつかの掟を定め、外界との繋がりを断ち、その存在を秘匿することで集落の安寧を守ってきた。
そして現在に至る。
師匠は話し終わったが、ホールドは未だ解いていただけない。
途中何度か話に集中できなくなりそうになって危なかった。
穏健派の生き残りがその後どうなったかは師匠に変わって長が話したが、どちらの話も衝撃的だった。
今ある幸せは過去の龍人の犠牲と不断の努力によって得られたものなんだ。
「ユーリも背景はわかったじゃろ……本題は龍帝国にこの集落が見つかった、そうじゃな? ベルホルト」
「はい、その通りでございます」
龍帝国に集落が見つかった――――。
「遅かれ早かれという話でした。そうじゃ、ユーリにはまだ話せていなかったのぉ……」
それは俺が『終わりなき森』に入って1ヶ月(地球では2ヶ月)が経った頃の話。
ボスが俺を終わりなき森へと誘ったという事実、そして謎の女(今となっては龍帝国の差し金だったと言える)がボスを連れ去っていったということだった。
その話を聞いて、怒りは感じた。
だけど、そのことによってアカネと師匠に出会え、強くなれたことも事実だ。
許すことは決してないが、憎みはしないと思った。
ただし、また俺の大切な人たちを泣かせるようなことがあったら只では置かない。
「集落は見つかってしまったが、直ぐに事が起きることはなかろう。そもそも龍帝国は全世界の支配が目的じゃ――――」
しかしそこで長の目が変わる。
「じゃがな、儂は同じ龍人としてその愚行を止めなければならないと思っている。外界がどんな場所だったか儂は覚えてないが、ただ1つ言えることは龍人が支配する世界が正しいわけがないということじゃ」
それから長は穏やかな口調で続ける。
「儂らは1人で生きているのではない。多くのものから恩恵を受けて生きている。たとえ外の世界と関わりがなくとも、そのことは忘れてはならぬ」
「よく言った! ベルホルト!」
長の言葉に師匠は嬉しそうに俺の肩をバシバシ叩く。
痛い……。
「その通りなのじゃ! さすがホワイトの息子じゃのっ。そうとなればやることは決まっているな」
「何をするんですか?」
「ベルホルト、お主から言ってくれ」
「はい……ユーリ、今日ここに呼んだのはお主に任せたいことがあるからなんじゃ」
「任せたいこと?」
長は1度頷き、そして再び話を続ける。
「龍帝国の愚行を阻止するために、武龍団では新たに森の外、つまりは外界への調査を目的とした『調査班』の第五班の設立を決定した」
調査班!?
武龍団には攻撃班の第一班、第二班、防衛班の第三班、情報収集班の第四班だけだったはずだ。
「それにあたりユーリの武龍団入団を要請し、第五班の班長に任命したい」
えーと、待て待て。
俺を武龍団に入団させるというのはひとまずいいとして、新設されは班の班長が俺? え、母さんと同じってこと?
「もちろん第五班については掟の対象とはならない」
「えぇぇぇぇえええッ!!」
待て待て待て待て。
それはつまり集落の外へ出てもいつでも戻って来れるってこと?
往き来自由というやつですか?
俺の覚悟は一体…………。
思考停止中。
「よかったのぉーマスター! これで気兼ねなく旅立てるのじゃ」
「あ、はい。そうですね」
「嬉しくないのか?」
うん、そうだな。
過程はどうあれ、結果的に自分にとって最高の状態になったんだ。
これよりいいことはない。
まぁいいか、だね。
「嬉しいよ、最高に!」
「……グスッ、グス」
「母さん?」
「よがっだぁ〜、ほんどうによがっだよぉ〜」
母さんが号泣していた。
このことを知っていたから目が合った時、母さんは笑顔だったのか。
そして、安心して泣いちゃった?
フリージアお姉ちゃんが母さんの背中をさすっている。フリージアお姉ちゃんもつられて泣きそうになっていた。
「それでユーリ、返事はどうじゃ?」
長が聞く。
それはもちろん――――
「任せて! 俺が、武龍団が龍帝国を止めよう!」
『おう!』
会議場に闘志の声が響き渡った。
読んで頂きありがとうございます!!
1日遅れですが、2周年突破!
これまで描い転にお付き合い下さり心より感謝しています!
そして、これからもお付き合い下さいっ!
また、人気投票にぜひご参加下さい!
というか、お願いします(泣)
簡単にできるので、ぜひぜひご参加下さい!
当時、龍人国は初代龍王――師匠から二代龍王へと世代が変わり、何事もなく平和な時間が過ぎていたはずだった。
しかし、二代龍王の世界支配宣言により龍人至上主義をもつ者たちが過激派となり、龍人国では穏健派(反至上主義)との内戦が勃発してしまう。
師匠率いる穏健派は最初こそ勢力で勝ってはいたものの、過激派の戦力に圧されていく。
ついには形勢逆転されてしまった穏健派は全滅を恐れ、女子供を中心とした龍人を現在の集落がある場所まで逃がした。
穏健派は最後の力を振り絞り、過激派の勢力を削る。
師匠が過激派のトップである二代龍王と刺し違えることで龍人国の内戦は一旦終止符が打たれた。
だが、龍人国の復興は敵わず小さな争いが絶えない荒れた場所になってしまったのだという。
一方、森へと逃れた穏健派の生き残りは巨樹を中心に森を切り拓き、少しずつ現在の集落へと形を変えていった。
その中心人物こそが二代龍王の実子である長の母――ホワイトである。
集落はできたが、その存在を露見することはあってはならない。
そのためにいくつかの掟を定め、外界との繋がりを断ち、その存在を秘匿することで集落の安寧を守ってきた。
そして現在に至る。
師匠は話し終わったが、ホールドは未だ解いていただけない。
途中何度か話に集中できなくなりそうになって危なかった。
穏健派の生き残りがその後どうなったかは師匠に変わって長が話したが、どちらの話も衝撃的だった。
今ある幸せは過去の龍人の犠牲と不断の努力によって得られたものなんだ。
「ユーリも背景はわかったじゃろ……本題は龍帝国にこの集落が見つかった、そうじゃな? ベルホルト」
「はい、その通りでございます」
龍帝国に集落が見つかった――――。
「遅かれ早かれという話でした。そうじゃ、ユーリにはまだ話せていなかったのぉ……」
それは俺が『終わりなき森』に入って1ヶ月(地球では2ヶ月)が経った頃の話。
ボスが俺を終わりなき森へと誘ったという事実、そして謎の女(今となっては龍帝国の差し金だったと言える)がボスを連れ去っていったということだった。
その話を聞いて、怒りは感じた。
だけど、そのことによってアカネと師匠に出会え、強くなれたことも事実だ。
許すことは決してないが、憎みはしないと思った。
ただし、また俺の大切な人たちを泣かせるようなことがあったら只では置かない。
「集落は見つかってしまったが、直ぐに事が起きることはなかろう。そもそも龍帝国は全世界の支配が目的じゃ――――」
しかしそこで長の目が変わる。
「じゃがな、儂は同じ龍人としてその愚行を止めなければならないと思っている。外界がどんな場所だったか儂は覚えてないが、ただ1つ言えることは龍人が支配する世界が正しいわけがないということじゃ」
それから長は穏やかな口調で続ける。
「儂らは1人で生きているのではない。多くのものから恩恵を受けて生きている。たとえ外の世界と関わりがなくとも、そのことは忘れてはならぬ」
「よく言った! ベルホルト!」
長の言葉に師匠は嬉しそうに俺の肩をバシバシ叩く。
痛い……。
「その通りなのじゃ! さすがホワイトの息子じゃのっ。そうとなればやることは決まっているな」
「何をするんですか?」
「ベルホルト、お主から言ってくれ」
「はい……ユーリ、今日ここに呼んだのはお主に任せたいことがあるからなんじゃ」
「任せたいこと?」
長は1度頷き、そして再び話を続ける。
「龍帝国の愚行を阻止するために、武龍団では新たに森の外、つまりは外界への調査を目的とした『調査班』の第五班の設立を決定した」
調査班!?
武龍団には攻撃班の第一班、第二班、防衛班の第三班、情報収集班の第四班だけだったはずだ。
「それにあたりユーリの武龍団入団を要請し、第五班の班長に任命したい」
えーと、待て待て。
俺を武龍団に入団させるというのはひとまずいいとして、新設されは班の班長が俺? え、母さんと同じってこと?
「もちろん第五班については掟の対象とはならない」
「えぇぇぇぇえええッ!!」
待て待て待て待て。
それはつまり集落の外へ出てもいつでも戻って来れるってこと?
往き来自由というやつですか?
俺の覚悟は一体…………。
思考停止中。
「よかったのぉーマスター! これで気兼ねなく旅立てるのじゃ」
「あ、はい。そうですね」
「嬉しくないのか?」
うん、そうだな。
過程はどうあれ、結果的に自分にとって最高の状態になったんだ。
これよりいいことはない。
まぁいいか、だね。
「嬉しいよ、最高に!」
「……グスッ、グス」
「母さん?」
「よがっだぁ〜、ほんどうによがっだよぉ〜」
母さんが号泣していた。
このことを知っていたから目が合った時、母さんは笑顔だったのか。
そして、安心して泣いちゃった?
フリージアお姉ちゃんが母さんの背中をさすっている。フリージアお姉ちゃんもつられて泣きそうになっていた。
「それでユーリ、返事はどうじゃ?」
長が聞く。
それはもちろん――――
「任せて! 俺が、武龍団が龍帝国を止めよう!」
『おう!』
会議場に闘志の声が響き渡った。
読んで頂きありがとうございます!!
1日遅れですが、2周年突破!
これまで描い転にお付き合い下さり心より感謝しています!
そして、これからもお付き合い下さいっ!
また、人気投票にぜひご参加下さい!
というか、お願いします(泣)
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