魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
10 花畑とその後
楽しいランチタイムは和やかに……はとても思えない空気感の中、完食(ほとんど俺が食べた)によって終わりを迎えた。
お腹いっぱい。でも、あの空気感の中にずっといるよりはまだ精神衛生上いい気がする……。
ピクニックの昼食と言ったらもっとこうワイワイしてて、全体的に楽しい!って感じじゃなかった?
会話がなかったとかではないんだけど、2人とも話す時に俺の方しか見ないし、目が合ったら合ったですごく怖い顔で睨み合ってるし……。
あれ、もしかしてもっと仲が悪くなってる?
明らかに仲は良くなっていない。
まさかこんなにも2人の相性が悪いなんて……。
いやいや諦めるのはまだ早いと、俺は悪い思考を振り払いこれから仲良くなると信じることにした。
***
広大な花畑を一周してから集落に戻ることにした俺たちはちょうど半周あたりを歩いていた。
「ユーリくん、あの花の花言葉は何でしょう?」
俺の左手を握るセレーナは桃色の小さな可愛らしい花を指さしている。
「んー何だろう? 小さくて可愛い、とか?」
そのまま過ぎたか。
案の定セレーナは「そのまま過ぎだよぉ」と笑って「正解はね……」と続ける。
「あなたのそばが好き――だよ」
そよ風で髪がなびくセレーナの横顔を見れば、耳は真っ赤に染まり決してこっちを見ようとはしなかった。
反則です。レッドカードです。でも可愛いので許します。
今ならどんな辛い修行でも耐えられると思えるくらい俺は甘ぁい気持ちで満たされていた。
ちょんちょんと、俺の右袖が引っ張られたことで天に昇っていた意識を元に戻す。
「どうした?」
「…………ばか」
今、ばかって言われた? アカネに?
何で!?
突然のアカネの罵倒に俺は目を丸くする。
それから何もなかったかのようにアカネは俺の袖を掴んだまま歩いていた。
理由を聞いたらまた怒られそうな気がして俺は何も聞けないまま悶々としていると、セレーナがいきなり立ち止まった。
「ユーリくんは魔法バカだけど、ばかじゃないよ!」
魔法バカも違うよ?
「……なら、あほ」
「あほじゃない!」
「……ニブチンッ」
「それもちが、う? じゃなくて……何でそんな悪口言うの?」
俺を挟んで繰り広げられる口論に割り込む余地はなく、ただ呆然と使い魔の罵倒を受け止め恋人のフォローに心の中で賛同するほかなかった。
「……………………知らない」
「ちょっと待って! あっ……」
アカネはセレーナの止める声を振り切って俺の影へ潜り込んでしまう。
セレーナは俺の影を見つめ肩を落としていた。
「ユーリくん、ごめんね。アカネちゃんとケンカしちゃって……」
「いや、俺の方こそアカネがごめん……」
とっさに俺は謝ったが、それが正しいのかはわからない。
「わたしの方がお姉さんなのに……ね」
そう言ってセレーナは歩き始める。
その後ろ姿を見て俺はどちらが悪いと決めつけることはできなかった。
セレーナにはセレーナの、アカネにはアカネの思いや考えがあると思うから。
今はそっと離れていた手を再び繋ぎ直して、残りの道を一緒に歩いていく。
花畑を抜け、集落の近くまで帰って来た頃には少し元気を取り戻していたように見える。
広場の方に用があるらしくセレーナとは途中で別れ、沈んでいく夕陽を眺めながら俺は家に向かって歩いていた。
「ユーリ」
「母さん」
母さんが近くにいるのはわかっていたけど、なぜかはわからない。いや、俺を待っていたのかも……。
「付いて来てくれ」
「うん」
母さんに付いて行く。見慣れた道だからこそ目的地はすぐにわかった。
数分で着いたその場所は訓練場だ。
何もない訓練場の真ん中で母さんは立ち止まり俺の方へと振り返る。
そして一拍置いてから母さんはゆっくりと口を開いた。
「――――決闘だ、ユーリ」
読んで頂きありがとうございます!!
作者の亀執筆が物語にも影響しているのか展開が遅いように感じてしまいますが、ここを乗り切れば本格的に第3章になると思います!
もう少しだけ集落でのお話にお付き合い下さいっ。
お腹いっぱい。でも、あの空気感の中にずっといるよりはまだ精神衛生上いい気がする……。
ピクニックの昼食と言ったらもっとこうワイワイしてて、全体的に楽しい!って感じじゃなかった?
会話がなかったとかではないんだけど、2人とも話す時に俺の方しか見ないし、目が合ったら合ったですごく怖い顔で睨み合ってるし……。
あれ、もしかしてもっと仲が悪くなってる?
明らかに仲は良くなっていない。
まさかこんなにも2人の相性が悪いなんて……。
いやいや諦めるのはまだ早いと、俺は悪い思考を振り払いこれから仲良くなると信じることにした。
***
広大な花畑を一周してから集落に戻ることにした俺たちはちょうど半周あたりを歩いていた。
「ユーリくん、あの花の花言葉は何でしょう?」
俺の左手を握るセレーナは桃色の小さな可愛らしい花を指さしている。
「んー何だろう? 小さくて可愛い、とか?」
そのまま過ぎたか。
案の定セレーナは「そのまま過ぎだよぉ」と笑って「正解はね……」と続ける。
「あなたのそばが好き――だよ」
そよ風で髪がなびくセレーナの横顔を見れば、耳は真っ赤に染まり決してこっちを見ようとはしなかった。
反則です。レッドカードです。でも可愛いので許します。
今ならどんな辛い修行でも耐えられると思えるくらい俺は甘ぁい気持ちで満たされていた。
ちょんちょんと、俺の右袖が引っ張られたことで天に昇っていた意識を元に戻す。
「どうした?」
「…………ばか」
今、ばかって言われた? アカネに?
何で!?
突然のアカネの罵倒に俺は目を丸くする。
それから何もなかったかのようにアカネは俺の袖を掴んだまま歩いていた。
理由を聞いたらまた怒られそうな気がして俺は何も聞けないまま悶々としていると、セレーナがいきなり立ち止まった。
「ユーリくんは魔法バカだけど、ばかじゃないよ!」
魔法バカも違うよ?
「……なら、あほ」
「あほじゃない!」
「……ニブチンッ」
「それもちが、う? じゃなくて……何でそんな悪口言うの?」
俺を挟んで繰り広げられる口論に割り込む余地はなく、ただ呆然と使い魔の罵倒を受け止め恋人のフォローに心の中で賛同するほかなかった。
「……………………知らない」
「ちょっと待って! あっ……」
アカネはセレーナの止める声を振り切って俺の影へ潜り込んでしまう。
セレーナは俺の影を見つめ肩を落としていた。
「ユーリくん、ごめんね。アカネちゃんとケンカしちゃって……」
「いや、俺の方こそアカネがごめん……」
とっさに俺は謝ったが、それが正しいのかはわからない。
「わたしの方がお姉さんなのに……ね」
そう言ってセレーナは歩き始める。
その後ろ姿を見て俺はどちらが悪いと決めつけることはできなかった。
セレーナにはセレーナの、アカネにはアカネの思いや考えがあると思うから。
今はそっと離れていた手を再び繋ぎ直して、残りの道を一緒に歩いていく。
花畑を抜け、集落の近くまで帰って来た頃には少し元気を取り戻していたように見える。
広場の方に用があるらしくセレーナとは途中で別れ、沈んでいく夕陽を眺めながら俺は家に向かって歩いていた。
「ユーリ」
「母さん」
母さんが近くにいるのはわかっていたけど、なぜかはわからない。いや、俺を待っていたのかも……。
「付いて来てくれ」
「うん」
母さんに付いて行く。見慣れた道だからこそ目的地はすぐにわかった。
数分で着いたその場所は訓練場だ。
何もない訓練場の真ん中で母さんは立ち止まり俺の方へと振り返る。
そして一拍置いてから母さんはゆっくりと口を開いた。
「――――決闘だ、ユーリ」
読んで頂きありがとうございます!!
作者の亀執筆が物語にも影響しているのか展開が遅いように感じてしまいますが、ここを乗り切れば本格的に第3章になると思います!
もう少しだけ集落でのお話にお付き合い下さいっ。
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