魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
34 迷宮7
重量のある扉が、ゴゴゴッという音を鳴らしながらゆっくりと開く。隙間が徐々に大きくなり、扉の奥が明らかになる。
中は大きな円の形をしていて、広さは集落よりやや小さいといったところだ。だとしても、広いことには変わりない。天井も高く、飛翔魔法を使っても天井までそれなりに時間がかかるだろう。
全体を見渡して気になったものが2つある。
1つは部屋の中央にある謎の台座。
そこに魔道具が隠されているのか、遠目で見る限りではわからない。調べる必要がある。
そして、もう1つが天井に描かれた魔法陣だ。
緻密に描かれたその魔法陣は、強力な魔法であることに間違いない。絶級……もしくはそれ以上か。試練に関するものだと推測できる。
俺はより一層、警戒を強める。
「アカネ」
「ガウ」(なに?)
「いつでも戦えるようにしておいてくれ」
「ガウ」(んっ)
俺は周囲への警戒が散漫にならない程度に、魔法を放てる状態を維持しながら前に進む。
台座に何か文字が刻まれていることがわかる距離まで来る。
その時、天井の魔法陣が光を放ちながら起動する。
「後ろに退がれッ!」
扉の近くまで素早く後退する。
アカネも俺と少し離れたところだが後退している。
俺は魔眼でそれを映す。
見てから後悔した。
あまり後悔はしない俺だが、今回ばかりは知りたくなかった。
それはまるで蒼い太陽のように強大な魔力の塊に見える。これまで戦ってきた魔獣が霞むほどの魔力。
さっきまでの試練はなんだったんだよ。
思わず愚痴りたくなるくらいに差があり過ぎる。
魔眼を戻し、再び見る。
魔力の塊だったものは龍だった。
それも、集落のみんながよく知っている伝説の龍だ。
「――――黒龍王ノワールロワ」
龍人の英雄にして、初代龍王。
その強さは他の種族を寄せ付けぬほど圧倒的であり、一騎当千という言葉が生温いと思えるほどだと言う。黒く輝く龍鱗を見た者は生きては帰れない、という逸話を残している。
神話時代から、長が生まれた(千年以上前)頃まで生きていたと言われていて、約四千年以上生きていたことになる。
これだけ聞くと顔を見るのも恐ろしいと思うが、実は黒龍王は女であり、歴史でも有名なほどの美人だったらしい。
多くの龍人から慕われる偉大な人物だったと書物には記されている。
しかし、そんな偉大な龍人が何故目の前にいるのか。既に亡くなったはずの人物が存在しているのか。
答えはわかっている。
不死化だ。
不死化とは、生前の魔力が大きかった者が死んだ時に稀に起こる現象だ。
不死化したものは生きる屍として、自分の意思とは関係なく世の中に存在し続ける。理性などなく、魔力が尽きるまで動きを止めることはない。
そのため、魔力を得るために生者を殺して魔力を奪い求める。
不死化と言われるだけあり、簡単には倒せない。
しかし、弱点がないわけでもない。
アンデットは光を苦手とする。
光なら何でもいいわけではないが、太陽の光や神聖な光はアンデットを弱体化させることができ、弱体化したアンデットには攻撃が効くようになる。
つまり、目の前にいる黒龍王を倒すには光による弱体化が必要不可欠というわけだ。
「まさか、黒龍王のアンデットが相手とはな」
アカネが俺のすぐ横まで一瞬で来る。
やはり身体的な速さはアカネの方が一枚上だ。
「ガウ?」(強い?)
「かなりな……でも、負けるつもりはない」
そうだ。何を弱気になってるんだ。
俺は負けない。
セレーナと約束したんだ。
それに、今は守りたいものも増えた。
「頼りにしてるぞ、相棒」
「ガウ」(任せて)
顔を見なくても声からわかる。
不安から少し震えていて、でも俺の使い魔として敵に立ち向かっている。
それだけで勇気をもらえる。
これほど心強いものはない。
黒龍王はその足をそっと地につける。
その眼は俺たちを縛り付けるように捉え、息をすることも許されないような緊張感がこの場を支配する。
そして、黒龍王が息を吸い込み一瞬の静寂の後、低い姿勢から背を伸ばし吹き飛ばされそうなほどの咆哮を放つ。
『ゴォォォオオオッ――――!!!!』
それを合図に戦いが始まった。
ノベルバ様での更新が遅くなり申し訳ございません!
次回からは小説家になろう様と更新を合わせます。
これからもお付き合い頂けたら幸いです!
中は大きな円の形をしていて、広さは集落よりやや小さいといったところだ。だとしても、広いことには変わりない。天井も高く、飛翔魔法を使っても天井までそれなりに時間がかかるだろう。
全体を見渡して気になったものが2つある。
1つは部屋の中央にある謎の台座。
そこに魔道具が隠されているのか、遠目で見る限りではわからない。調べる必要がある。
そして、もう1つが天井に描かれた魔法陣だ。
緻密に描かれたその魔法陣は、強力な魔法であることに間違いない。絶級……もしくはそれ以上か。試練に関するものだと推測できる。
俺はより一層、警戒を強める。
「アカネ」
「ガウ」(なに?)
「いつでも戦えるようにしておいてくれ」
「ガウ」(んっ)
俺は周囲への警戒が散漫にならない程度に、魔法を放てる状態を維持しながら前に進む。
台座に何か文字が刻まれていることがわかる距離まで来る。
その時、天井の魔法陣が光を放ちながら起動する。
「後ろに退がれッ!」
扉の近くまで素早く後退する。
アカネも俺と少し離れたところだが後退している。
俺は魔眼でそれを映す。
見てから後悔した。
あまり後悔はしない俺だが、今回ばかりは知りたくなかった。
それはまるで蒼い太陽のように強大な魔力の塊に見える。これまで戦ってきた魔獣が霞むほどの魔力。
さっきまでの試練はなんだったんだよ。
思わず愚痴りたくなるくらいに差があり過ぎる。
魔眼を戻し、再び見る。
魔力の塊だったものは龍だった。
それも、集落のみんながよく知っている伝説の龍だ。
「――――黒龍王ノワールロワ」
龍人の英雄にして、初代龍王。
その強さは他の種族を寄せ付けぬほど圧倒的であり、一騎当千という言葉が生温いと思えるほどだと言う。黒く輝く龍鱗を見た者は生きては帰れない、という逸話を残している。
神話時代から、長が生まれた(千年以上前)頃まで生きていたと言われていて、約四千年以上生きていたことになる。
これだけ聞くと顔を見るのも恐ろしいと思うが、実は黒龍王は女であり、歴史でも有名なほどの美人だったらしい。
多くの龍人から慕われる偉大な人物だったと書物には記されている。
しかし、そんな偉大な龍人が何故目の前にいるのか。既に亡くなったはずの人物が存在しているのか。
答えはわかっている。
不死化だ。
不死化とは、生前の魔力が大きかった者が死んだ時に稀に起こる現象だ。
不死化したものは生きる屍として、自分の意思とは関係なく世の中に存在し続ける。理性などなく、魔力が尽きるまで動きを止めることはない。
そのため、魔力を得るために生者を殺して魔力を奪い求める。
不死化と言われるだけあり、簡単には倒せない。
しかし、弱点がないわけでもない。
アンデットは光を苦手とする。
光なら何でもいいわけではないが、太陽の光や神聖な光はアンデットを弱体化させることができ、弱体化したアンデットには攻撃が効くようになる。
つまり、目の前にいる黒龍王を倒すには光による弱体化が必要不可欠というわけだ。
「まさか、黒龍王のアンデットが相手とはな」
アカネが俺のすぐ横まで一瞬で来る。
やはり身体的な速さはアカネの方が一枚上だ。
「ガウ?」(強い?)
「かなりな……でも、負けるつもりはない」
そうだ。何を弱気になってるんだ。
俺は負けない。
セレーナと約束したんだ。
それに、今は守りたいものも増えた。
「頼りにしてるぞ、相棒」
「ガウ」(任せて)
顔を見なくても声からわかる。
不安から少し震えていて、でも俺の使い魔として敵に立ち向かっている。
それだけで勇気をもらえる。
これほど心強いものはない。
黒龍王はその足をそっと地につける。
その眼は俺たちを縛り付けるように捉え、息をすることも許されないような緊張感がこの場を支配する。
そして、黒龍王が息を吸い込み一瞬の静寂の後、低い姿勢から背を伸ばし吹き飛ばされそうなほどの咆哮を放つ。
『ゴォォォオオオッ――――!!!!』
それを合図に戦いが始まった。
ノベルバ様での更新が遅くなり申し訳ございません!
次回からは小説家になろう様と更新を合わせます。
これからもお付き合い頂けたら幸いです!
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