魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

17 月日は流れて

 かれこれ森に入ってから早1ヶ月半(地球で言うと3ヶ月)か……ここでの生活も慣れてきたもんだ。

 食料は魔獣やら、木の実がある。家も自然魔法で建てた。服は糸魔法で皮を縫い合わせたり、植物の繊維を編んで作ったりした。

 森の中で衣食住を安定させているとは、昔の俺では考えられないだろうな……ははっ。

「アカネぇー行くぞぉー」

「ガウぅー」(うんー)

 そうそう、アカネの言葉がわかるようになった。

 え? ありえない?

 いやいや、この魔法がある世界でありえないなんてことはないんだよ。

 と、まぁそれはいいとして……何故そんなことが出来るようになったかと言うと、思念魔法なるものを会得したからだ。

 思念魔法とは簡単に言えば、言葉を交わさずとも意思疎通が可能になる魔法だ。

 基本的に自分から相手への一方通行でしか思念を送れないという欠点はあるが、双方が思念魔法を会得していればお互いに思念を送り合うことが出来る。

 思念とは単なる言葉だけではなく、鍛錬を積めばイメージや映像を送ることも可能だ。

 これは便利を通り越して、神ってるってやつだ。

 戦闘では1分、1秒が命取りになる場面もある。そういったときに、言葉を交わさず意思疎通が取れるということは大きなアドバンテージになる。

 そして、思念を飛ばせる距離は魔力量によって変わるらしい。

 俺とアカネははっきり言って、異常な魔力量をしている。

 絶級魔法(街一つを破壊できるほどの魔法)が数発は余裕で使えるほどだ。

 どうしてこうなったのかは知らない……知らないもんは知らないっ!

 俺だっておかしいとは思ったさ! けど、気がついたらこんな風に……まぁ、しょうがないよね。

「いるなー」

 俺は索敵範囲内に入った魔獣の魔力を感じとる。

 アカネは俺が気づくより先に動き出し、雷を纏って消える。雷魔法『サンダーフォルム』だ。

 俺が少し教えると、すぐに使えるようになってしまった……使い魔の学習能力の高さが恐ろしい。

 そして数分後、何もなかったかのようにアカネは帰ってきた。

 本当に何もなかったわけではなく、まさに瞬殺で魔獣を倒してきたのだ。

「お疲れ」

「ガウー」(弱かった)

「いやいや、お前が強いだけだろ」

「ガウ、ガウ」(ユーリの方が強い)

「そ、そう? お世辞いっても何も出ないぞ」

 確かに総合的な戦闘力で言えば、俺の方が1枚上だろう。けれど、アカネの索敵能力、魔法展開速度は俺より上だ。

 そういった面でアカネの右に出るものは、この森にはいないだろう。

 しかし、それで驕らないのがアカネのいいところだ。

 決して慢心せず、確実に相手を倒す。

 是非とも敵にはしたくない。本当に。

「血は大丈夫か?」

「ガウ」(うん)

「そっか」

 アカネは口数が少ない。と言うよりも、喋ることに慣れていないのかもしれないな。

 それでもちゃんと答えてくれるし、何より顔を見ればだいたい思っていることはわかる。

 ***

 現在の拠点についた。

 周りには結界魔法を付与魔法で付与することで、持続的な結界を創り出しているため、魔獣の奇襲は心配ない。

 そして、森の探索を続けてわかったことがある。

 それは、この森はいくつかの層で出来ているということだ。

 まず、森に入った最初の辺り……魔獣の強さで言えば、上級、最上級下位が多くいた場所だ。そこを、仮に第一層と呼ぼう。

 そして、アカネと出会った辺りが第二層。今、拠点にしているのも第二層で、次の層に近い場所だ。

 最後に探索が進んでいない第三層。この先はどうなっているのか分からない。

 魔獣の強さは絶級のものばかりだ。

 生半可な準備では前に進むことは愚か、全滅しかねない……だからと言って、力の差があるわけではない。

 十二分な準備をすれば、突破はできる。

 そのためにも、さらなる鍛錬を積む必要がある。

「アカネ、ちょっと行ってくる」

「ガウ」(わかった)

「すぐに戻ってくる」

「ガウぅ」(無理しないでね)

「あぁ、わかってる」

 アカネに一言告げた俺は、家を飛び出した。

「転移!」

 俺の足下に魔法陣が現れる。

 そして、次の瞬間には拠点とは違う場所に、俺は転移魔法で転移した。

 周りを見渡す。辺り一面は魔獣でいっぱいだ。

「さぁ、ひと暴れしますか!」





 終わりなき森にて、規格外な魔術師が誕生する日はそう遠くはないだろう。





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