魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

11 グールアントの大群

 この森に来てからも朝の日課は変わっていない。

 魔力のコントロールと放出、筋トレ、素振りなどを毎日欠かさずやっている。習慣になってしまい、今ではこれをやらないと朝が始まらない。

 俺は右手に集めた魔力を具現化させると、それを粘土のようにくねくねと形を変えていく。

 まずは球で、その次は立方体、その次は四面体など色々な形を作っていく。最後の方は花や小鳥なども実物に近い再現度で、具現化できたと思う。

 うん。魔力量が増えてるし、コントロールや放出の精度も高くなってる。知らず知らずこの森が俺を強くしているのかな?

 魔力コントロール、放出が向上することは魔法の向上にも繋がる。魔力のコントロール、放出は魔法の基本ということだ。

 そろそろ行くか。

 俺の考えでは森の奥へと進まない限り、ここから出られないのだと思う。

 それには魔獣を倒すことも含まれている。

 魔獣の中には一定の魔法が効かないタイプも現れ始めた。もう少し使える魔法を増やしたり、熟練度を高めたりする必要がありそうだ。

 と、考えていたら魔獣のお出ましだ。

「数が多いな……」

 カチカチという刃物をぶつけ合うような音が、それも複数聞こえてくる。

 一体あたりの魔力量はそんなに大きくないが……これは数十体いるな。

 俺は前方から迫り来る魔獣に備えて魔法を発動させる。

「氷の矢よ!」

 俺は氷魔法で数十もの氷の矢を創り出すと、前方に感じる魔力の気配へとその数十の矢を放つ。

 矢は枝にぶつかれば枝を凍らせ、地面に刺さればその地面を凍らせていく。

 今ので数体は倒せたはずだ。

 残りは……まてまて、全然減ってない。てか、むしろ増えてるだろ、これ。

 そして、ついに俺が視覚できるところまで魔獣の群れがやってくる。

「蟻……」

 中級魔獣のグールアントだ。

 グールアントとは簡単に言えば、めっちゃ生命力の高い大型犬くらいの大きさをした蟻だ。

 しかし、この数からしてグールアントを操る女王蟻がいてもおかしくない。

 グールアントの女王種グールアントクイーンは最上級下位の魔獣だが、数十体ものグールアントを一度に従えるため非常に厄介だ。

 指揮の中枢であるグールアントクイーンを倒さない限り、グールアントは止まらない。

 グールアントを倒しつつ、グールアントクイーンに近づき、そして一気に魔法を畳み掛ける。

「ギュギィ!」

 先行してきた一体のグールアントが俺を認識して真っ直ぐこちらへ向かってくる。

「光よ」

 俺は光魔法を使い、光の矢をグールアントに向けて放つ。

 見えている敵には1番の速さを誇る光魔法の方が有効だ。狙ったところを一瞬で射抜くことが出来る。

「ギュギィっ!」

 光の矢は見事、グールアントの胴体に突き刺さる。

 だが、グールアントはその足を動かし続けている。

 頭を潰されても動き続けると言われているグールアントは、半端な攻撃では通用しないということだ。

 光の矢で射たグールアントが俺に向かって飛びかかってくる。

 それを瞬時に雷を纏わせた右拳で俺は殴りつける。

「はっ!」

「ギュギィっ!」

 あー、もう全部殴り飛ばそう。

「強化よ、雷よ」

 全身に力が漲ると同時に、雷の鎧を俺は纏う。

 俺は電光石火の如く走り出し、グールアントを次々と殴り飛ばしていく。ギュギィ、ギュギィっというグールアントの悲鳴が森に響き渡る。

 ……にしても、どんだけいるんだよ! 倒しても倒してもきりがない。

 俺は目の前にある木に気がつかず、ギリギリのところで避ける。

 しかし、その少しの隙が命取りとなるのが森である。

「やばっ、囲まれた」

 見える範囲で30以上はいるな。多分、後ろもそのくらいだ。

『キュキィイ!!』

 ひときわ高い鳴き声が聞こえる。

 グールアントクイーンが命令をしたのだろう。俺を抹殺しろだの、そんなことを。

 グールアントたちの目が一瞬光ると、一斉に俺へ向かって飛び出してくる。

 俺は雷を一気に放出するために魔力を溜める。

 迫り来るグールアントたちに向かって俺は全方位に雷を放出させると、グールアントたちは電流で繋がれ丸焦げとなる。

 ふぅー……なんとか一切できた。

「ギュギィ!」

「なっ! まだいたのかよ」

 俺は完全に油断していたため、グールアントが背後に迫っていること今になって気がつく。

 飛びかかってくるグールアントを避けられないと判断して、とっさに俺は腕を強化魔法で強化する。

 グールアントが俺の腕に噛みつこうとしたその時。

「ガァウっ!!」

 白い毛並みをした、茜色の眼の狼が飛び出してグールアントを噛み飛ばした。





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