魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
42 剣の稽古
「始めっ!」
母さんの掛け声を聞いた俺は、素早く木剣を片手に持ち駆け出す。対するフリージアお姉ちゃん――そう呼ばないと怒られる――というと、木剣を中段に構えて此方の出方を伺っているようだ。
まずは初手。フリージアお姉ちゃんの間合いに入った俺は、木剣を両手に持ち直し、上段から斬りつける。駆け出した勢いを乗せることで、剣速と威力をあげる。
「やぁっ!!」
フリージアお姉ちゃんは中段に構えていた木剣を、滑らせるように俺の木剣にあてがう。俺は勢いのままに流されるが、足を踏み込み耐える。そして、二手目を繰り出す。
フリージアお姉ちゃんは対角に木剣を打ち出す。剣と剣がぶつかり、ゴンッという硬い音が響く。押し合いが続き、お互いに引き際を見計らっているのがわかる。
俺が先に動く。俺は体重を木剣に乗せて、一気に押すと直ぐさま下がる。
さすがフリージアお姉ちゃん……剣捌きが上手い。でも、負けないよ。
俺は再び駆け出す。フリージアお姉ちゃんは中段の構えを変えず、どこからでも来いとばかりに剣先がピタリと止まっている。
片手に持っている木剣を地面スレスレまで下げながら、俺は加速する。フリージアお姉ちゃんは無防備な俺を斬るため剣を引く。
そして、俺が間合いに踏み込んだ瞬間、フリージアお姉ちゃんの木剣が俺の肩に迫る。
「もらったぁーっ!!」
フリージアお姉ちゃんは勝利を確信したかのように声を出す。
――カッン!!
剣を弾く音が今、この場を支配する。そして、フリージアお姉ちゃんの首元には俺の木剣が突きつけられている。
「くぅーっ……参りましたぁ」
「そこまでっ!」
母さんの掛け声を聞き、俺は緊張を解く。
「ふふ、ありがとうございました」
俺は木剣を下ろし、フリージアお姉ちゃんに礼をする。礼は武術の基本だ。礼に始まり、礼に終わる。相手をしてくれた者への敬意と感謝の気持ちをもたなければならない。
「ユーリくぅーん! それにしても、あのカウンターは強烈すぎるよぉー」
「下からの急速な斬り上げか……良かったぞ! ユーリ」
「ありがとう、母さん。フリージアお姉ちゃんも、すごい剣捌きだったよ」
俺の作戦としては、カウンターに徹していたフリージアお姉ちゃんに無理やり攻撃をさせて、それをカウンターするという捻くれた寸法だ。
いやー、成功して良かったぁー。若干、捨て身気味で攻めたから、ヒヤヒヤしたよ。
「ユーリくんに言われると照れるなぁー……グスグス、ついに我が弟に超えられる日が来ようとは」
「あたりまえだ! 訓練をサボってばかりのお前が、ユーリに敵うわけないだろ!」
「そうやって副団長はー! サボってないですもんっ。休憩ですもん!」
「なっ! フリージア、お前ってやつは……」
あー、また始まっちゃった。俺は離れて、素振りでもしてよー。
「そもそも、お前は腰がなってないんだ!」
「そんなこと言って、私がユーリくんに褒められたのが羨ましいだけじゃないんですかー?」
「ち、違うっ! 私は断じて、う、羨ましいなどと思ってない!」
「どーだかなー。最近、ユーリくんが構ってくれないって言ってませんでしたっけー?」
「そ、それは、今は関係ないだろっ」
あれ? なんか様子がおかしい。母さんが押されてる。何を話してるんだろ。
「昔は、お母さんっお母さんって来てくれたのに……ユーリぃぃーって言ってませんでしたっけ?」
「言ってないわっ!!」
「俺がどうしたの? 母さん」
「い、いや。なんでもないぞ!」
「くふふっ……副団長がユーリくんに気を取られてるうちに、逃げるべし!」
あ、フリージアお姉ちゃん……気をつけてー。母さんはもう、こっちにはいないよ。ものすごく冷たい笑顔でそっちに向かってたから。
「……なぁ、どこに行くんだ? フリージア」
「え……あ、そうそう。ちょっとお花を摘みに……」
「ふふ、そうか。見え見えの嘘をついてまで、私から逃れたいか……残念だがお前の命はもうない」
「た、たすけてぇー!! ユーリくーんっ!!」
……頑張って。フリージアお姉ちゃん。
俺はとびっきり優しい笑顔を作り、フリージアお姉ちゃんを見る。
「ユーリくーーーんっ……い、いやぁぁっー!」
フリージアお姉ちゃんは母さんに後ろ襟を掴まれて、ズルズルと引きずられていく。その顔は、まるでこの世の終わりでも見ているようだ。
さっ、素振りの続きをしよう。知らぬが仏ってね。
母さんの掛け声を聞いた俺は、素早く木剣を片手に持ち駆け出す。対するフリージアお姉ちゃん――そう呼ばないと怒られる――というと、木剣を中段に構えて此方の出方を伺っているようだ。
まずは初手。フリージアお姉ちゃんの間合いに入った俺は、木剣を両手に持ち直し、上段から斬りつける。駆け出した勢いを乗せることで、剣速と威力をあげる。
「やぁっ!!」
フリージアお姉ちゃんは中段に構えていた木剣を、滑らせるように俺の木剣にあてがう。俺は勢いのままに流されるが、足を踏み込み耐える。そして、二手目を繰り出す。
フリージアお姉ちゃんは対角に木剣を打ち出す。剣と剣がぶつかり、ゴンッという硬い音が響く。押し合いが続き、お互いに引き際を見計らっているのがわかる。
俺が先に動く。俺は体重を木剣に乗せて、一気に押すと直ぐさま下がる。
さすがフリージアお姉ちゃん……剣捌きが上手い。でも、負けないよ。
俺は再び駆け出す。フリージアお姉ちゃんは中段の構えを変えず、どこからでも来いとばかりに剣先がピタリと止まっている。
片手に持っている木剣を地面スレスレまで下げながら、俺は加速する。フリージアお姉ちゃんは無防備な俺を斬るため剣を引く。
そして、俺が間合いに踏み込んだ瞬間、フリージアお姉ちゃんの木剣が俺の肩に迫る。
「もらったぁーっ!!」
フリージアお姉ちゃんは勝利を確信したかのように声を出す。
――カッン!!
剣を弾く音が今、この場を支配する。そして、フリージアお姉ちゃんの首元には俺の木剣が突きつけられている。
「くぅーっ……参りましたぁ」
「そこまでっ!」
母さんの掛け声を聞き、俺は緊張を解く。
「ふふ、ありがとうございました」
俺は木剣を下ろし、フリージアお姉ちゃんに礼をする。礼は武術の基本だ。礼に始まり、礼に終わる。相手をしてくれた者への敬意と感謝の気持ちをもたなければならない。
「ユーリくぅーん! それにしても、あのカウンターは強烈すぎるよぉー」
「下からの急速な斬り上げか……良かったぞ! ユーリ」
「ありがとう、母さん。フリージアお姉ちゃんも、すごい剣捌きだったよ」
俺の作戦としては、カウンターに徹していたフリージアお姉ちゃんに無理やり攻撃をさせて、それをカウンターするという捻くれた寸法だ。
いやー、成功して良かったぁー。若干、捨て身気味で攻めたから、ヒヤヒヤしたよ。
「ユーリくんに言われると照れるなぁー……グスグス、ついに我が弟に超えられる日が来ようとは」
「あたりまえだ! 訓練をサボってばかりのお前が、ユーリに敵うわけないだろ!」
「そうやって副団長はー! サボってないですもんっ。休憩ですもん!」
「なっ! フリージア、お前ってやつは……」
あー、また始まっちゃった。俺は離れて、素振りでもしてよー。
「そもそも、お前は腰がなってないんだ!」
「そんなこと言って、私がユーリくんに褒められたのが羨ましいだけじゃないんですかー?」
「ち、違うっ! 私は断じて、う、羨ましいなどと思ってない!」
「どーだかなー。最近、ユーリくんが構ってくれないって言ってませんでしたっけー?」
「そ、それは、今は関係ないだろっ」
あれ? なんか様子がおかしい。母さんが押されてる。何を話してるんだろ。
「昔は、お母さんっお母さんって来てくれたのに……ユーリぃぃーって言ってませんでしたっけ?」
「言ってないわっ!!」
「俺がどうしたの? 母さん」
「い、いや。なんでもないぞ!」
「くふふっ……副団長がユーリくんに気を取られてるうちに、逃げるべし!」
あ、フリージアお姉ちゃん……気をつけてー。母さんはもう、こっちにはいないよ。ものすごく冷たい笑顔でそっちに向かってたから。
「……なぁ、どこに行くんだ? フリージア」
「え……あ、そうそう。ちょっとお花を摘みに……」
「ふふ、そうか。見え見えの嘘をついてまで、私から逃れたいか……残念だがお前の命はもうない」
「た、たすけてぇー!! ユーリくーんっ!!」
……頑張って。フリージアお姉ちゃん。
俺はとびっきり優しい笑顔を作り、フリージアお姉ちゃんを見る。
「ユーリくーーーんっ……い、いやぁぁっー!」
フリージアお姉ちゃんは母さんに後ろ襟を掴まれて、ズルズルと引きずられていく。その顔は、まるでこの世の終わりでも見ているようだ。
さっ、素振りの続きをしよう。知らぬが仏ってね。
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