魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

27 魔術の基礎

 




 あぁ、魔術だ、魔術。ワクワク、ドキドキ。マ・ジュ・ツ!!

 俺はあまりの嬉しさにハイテンションになってしまう。もし、俺にしっぽが存在するならば、全力でブンブン回しているだろう。

 お母さんは立ち、俺は床に体育座りで座っている。どこから持ってきたのか、お母さんの横には黒板のようなボードが存在する。どうやら、お母さんはボードを使って教えてくれるらしい。

 まるで授業だね! ん? 実際に魔法を使ったりしないのかな?

「今日は魔術の基礎について話すぞ。ちなみに、魔法は使わないからな」

 な、なんだって! まぁ、魔法の話は大好きだから残念じゃないし、むしろ嬉しいです!

「ユーリ、先に言うが私は魔術・・は教えてやれるが、魔法・・は教えることができない」

「……?」

 俺は首を傾げ、わけがわからないというサインを送る。お母さんは軽く笑い、俺の疑問に答えてくれた。

「要は、魔法を使った戦い方――戦術なら教えることができるということだ」

 あー、そういうことか。魔法での戦い方なんて魔法を打ち出せばいいと思っていた節があったから、嬉しい! 魔法は己の力で何とかするさ!

「わかったー!」

「よし、それでは魔術の稽古を始める!」

「はーい!」

 俺は元気よく手を上げ、やる気を全身で表す。お母さんに伝わったのか、その顔は柔らかい笑みになっている。

「まず、第一に魔法を使うには魔力が必要だ。わかるな?」

「うん!」

 魔力は魔術師の命ともいえる。魔力が使えないとなれば魔術師は無力だ。武術をやっているのは、そういった状況になっても戦えるように、といった理由もある。

「魔力の残りを考えながら、いつ、どのタイミングで、どんな魔法を使うかが基本だ。相手は常に止まっているとは限らないからな」

 うん、そうだ。的にあてるのとは、わけが違う。相手は魔獣や、人という可能性だってある。相手が攻撃をしてくることだって、ないわけじゃない。

「そして、詠唱をするか、しないかで戦い方もかわる。龍人は龍化している状態なら詠唱は必要ないが、人族は大抵の者は必要らしい。ユーリはどうなんだ? もしかしたら無詠唱ができるようになったりしてな」

「う、うん」

 あ、既にできます……。俺、人族なんだよね? あれ?

「次に、魔術師と戦うことを想定した話をするぞ」

「うん」

「魔術師対魔術師の戦いは例えるならジャンケンのようなものだ。相手の魔法を読み、自分の魔法を使う。攻撃するのか、守るのか。それに、火力の高い魔法、攻撃速度が速い魔法、罠を仕掛ける魔法など、扱える魔法によって戦術は様々だ」

 確かにそうだ。魔法には限りがあるし、使い方、タイミングは重要になる。

「自分が扱える魔法を理解し、その上でどの魔法をどのタイミングで使うのか、戦術を組み立てる必要があるんだ」

 確かに……あれ? ってことは……

「えいしょう、しなくていいひとは、どうなるの?」

「そうなんだ。よく気がついたぞ! ユーリ」

「えへへっ」

 照れますなぁー。

「詠唱を必要としない者は、言わば後出しジャンケンのように相手の魔法を見てから使うことができる。さらには、無詠唱による先制攻撃も可能だ」

 え、強くない? 無詠唱って、それだけで有利になるよね。

「ただし、無詠唱をするには強く鮮明なイメージが必要になる。戦いの中で、精神を集中させることは極めて難しい。龍人は種族による特性で、龍化状態なら難なく無詠唱で魔法を使えるがな」

 ずるいっ! っと言っても俺も難なく使えるけどねー。ふふーん。これは、不断の努力の賜物なのですよ!

「とりあえず、魔術の基礎を教えたつもりだが、理解できたか?」

「うん! わかったよ、おかあさん!」

 とってもわかりやすかった。でも、まだ基礎だ。これからの稽古が楽しみだ!

「よし、これからは早朝は武術、夕食前は魔術についてやるからな!」

「はーいっ!」

 俺は子供らしく大きな声で返事をする。実を言えば、心が踊りすぎて子供心が蘇っているのだが……そこは気にしないでおく。

 だって、今の俺ぼくはまだ子供だもの!





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