魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

14 かくれんぼ

「キューウ?」 (かくえんぼ?)

 セレーナが翼をパタパタと羽ばたかせ、宙に浮きながら首をかしげる。その動き、仕草からまさに、愛嬌の塊エンジェルだと言えるだろう。

「うん!」

 今日はセレーナちゃんと、かくれんぼをして遊ぶことにする。ルールは簡単。俺が鬼で、セレーナちゃんは好きなところに隠れる。

 俺がセレーナちゃんを見つけたら俺の勝ちで、セレーナちゃんが時間切れまで隠れきれたらセレーナちゃんの勝ちだ。

「キュウ! キュウ!」 (やろう! やろう!)

「うん、はじめるお!」

 俺は近くにある木に体を向けて、腕で顔を覆う。

「いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお……」

「キュウー」 (わぁーい)

 お、逃げたみたいだ。それに、楽しそうでなによりだね。

「……きゅーう、じゅう! いっくおー」

 さぁ、かくれんぼの始まりだっ!





 ***





 かくれんぼが開始されてから数十分が経った。

 かくれんぼの範囲は、俺たちの家の周辺でそこまで広くはない。それに、セレーナは子龍の姿なので見つけやすいはずなのだが……

 どこ行ったんだろう? セレーナちゃんがあの10年に一人の逸材、天才かくれんぼ達人だったとは。まぁ、冗談はいいとして本当にどこだろう?

 俺は家の裏や木の陰、屋根の上など隈なく探すが、あの愛らしい子龍の姿がどこにも見えない。

 しょうがない、奥の手を使うか……。俺が最近、知ったこの『魔眼』の力でな。フハハハハハ。っはい! 切り替えまして。

 実際は、じっ様の家でたまたま読んだ本の中に書いてあった。

 ――『魔眼』 魔力を視覚できる眼。その中でも、力が強いものは能力が覚醒すると言われている。

 通常、魔眼を持たない者は魔力を視覚することができないらしい。ただし、魔力体――具現化した魔力、魔力によってできた魔法陣などの魔力の塊――は魔眼を持たない者でも見える。

 いやー、常に見えてたからあたりまえなのかと思ってた。魔眼のおかげだったんだねえ。

 俺は目に魔力を流すイメージをすると、次第に視覚に変化が起きる。色がついた世界が、徐々に白と黒に塗りつぶされていく。

 モノクロになった視界にはただ一つ蒼色だけが残り、魔力の流れを教えてくれる。

 魔力はあらゆるものに流れている。花や草はもちろん、虫、鳥などの小動物から大きな動物もだ。ただ、人に比べると色は薄く、流れは穏やかだ。

 家などの物にも流れているが、極端に魔力の色が薄い。そのため、動物や人の方が蒼色が目立っている。

 俺は魔眼で辺りを見渡す。

 んー、どこだー? いないなぁ。後ろは……

「キュウ!」 (わぁ!)

「ひゃっ!」

 びっくりしたー! 後ろにいるとは思わないよー。さすが、かくれんぼ達人だね。まさか、ずっと後ろにいたの? まさに、灯台下暗し。

 変な声も出ちゃったし、ぼく恥ずかしい!

「キュウキュウ」 (ふふふ)

 そうだ、試しにセレーナちゃんの魔力を見てみよう。

「キューウ?」 (なぁにー?)

 ……? えーと、なんだこれ。底が見えないよ。あははー。えぇぇぇー!?

 俺なんか「お、最近、魔力が増えたー。集落1番も夢じゃないね」とか思ってたのに、さっそうに打ちのめされたよ。

 せ、セレーナちゃん恐るべし……。

 まぁ、とりあえず……

「せ、せえーなちゃんみーつけたっ!」

「キュウキューウ!」 (あー、みつかっちゃったー!)

 それはそうだよセレーナちゃん。鬼の前に出てきたら見つかっちゃうよ。セレーナちゃんは天然さんだね。

「キュウ、キューウ!」 (ゆーりくん、もっかいやろー!)

「いいおー!」

 次はセレーナちゃんが鬼でやろうかな。ふふ、この100年に1人の逸材、かくれんぼの神の力を見せてやろう!





 あのあと、開始数秒で見つかってしまったが、セレーナちゃんと俺は今日も楽しく遊ぶのであった。





コメント

  • 黒眼鏡 洸

    285480様
     ある意味、ユーリは魔法オタクなので間違いではないかもです笑
     コメントありがとうございまーす!

    1
  • くあ

    なんか、いいおー、とかオタク?みたいw

    2
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