魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

11 長の家

 現在、俺はじっさまの家へ向かっている。家からじっ様の家までは徒歩5分ほどの距離だ。それは子供の足ならばの話なので、実際のところはもう少し近い。

 最近、知ったことなのだが、この世界も地球と同じ1日24時間らしい。ただ、1年間は360日で1ヶ月は60日なのだという。

 火の月から始まり、水の月、風の月、土の月、光の月、闇の月にわけられる。

 ちなみに、俺は1才になってから約1ヶ月が経っている。地球でいえば約2ヶ月ほど経ったことになる。

 ふぅー、やっと着く……。子供の足だと、この距離も遠く感じるなぁ。

 じっ様の家は集落の中心に位置する。巨樹の中をくり抜いて、そのまま家にした感じだ。その大きさ故、集落のシンボルになっている。

 巨樹ハウスの周りには露店が並び、様々な人が行き交い賑わっている。

「おぅ! ユーリじゃねーか! 今日も長のところに行くのか?」

 露店のおっちゃんから声がかかる。

「こんちわー! うんっ! いくおー」

「おう! 元気がいいこった。ほれ、これ持っていきな!」

 おっちゃんは籠いっぱいのゴリンの実を俺の手に持たせてくれる。

 おっちゃん、ちょっと重い……。ぬおぉー! ファイトーイッパーイ!

「おいちゃん、あんとー!」

「いいってことよ! 長によろしくな!」

「あーい」

 俺は籠を引きずらないように、両手で持ちながら歩く。テクテクという音がピッタリだ。

 思えば最近、俺に声をかけてくれる人が増えた気がする。こうやってお土産も持たせてくれるし。これも、お母さんやじっ様のおかげなのかな。

 帰りに綺麗な花でも摘んで、お母さんにプレゼントしようかな。

 そんなことを考えていると、目の前はじっ様の家になっていた。じっ様の家の扉は巨樹と一体化しているので、初見で見つけることは至難の業だ。しかし、このごろ毎日通っている俺は一目で見破る。

 ふふ、こんなの余裕だぜ! でも、わかるようになるまでは相当苦労したけどね。

「じっちゃまー、ユーリだおー」

「ユーリか、よく来たのう。うむ、入るとよい」

「あーい! じっちゃま、あんとー」

 俺は露店のおっちゃんからもらったゴリンの実が入った籠をじっ様に渡すと、駆け足で部屋の奥へ入ってく。

 じっ様の家には様々な書物、例えば魔術、魔法についてのものだったり、人や龍人の歴史についてのものだったりと数えきれないほどある。

 それが壁全体に、びっしり収められいる。壁といっても、この巨大な家の壁なので、その高さ、規模は馬鹿にできない。

「元気がいいのう。転ばぬよう気をつけるのじゃぞ」

「あーい」

「ほっほっほっ」

 俺は本の壁に近づき、手近なところにある一冊の本を手に取る。

 その本は基礎魔法についての本で、子供でも比較的わかりやすい内容になっている。といっても、1才児が読むような本ではない。

「よくもまぁ、飽きずに読むものじゃ」

 だって魔法についてだし。飽きるわけないじゃない。

 そういえば、書物は異世界語で書いてあるが読める。考えられるのは、『龍神の加護』と呼ばれる力のおかげなのかもしれない。

 まぁ、読めることに越したことはないかー。

 俺は手にしている本に目を向け、読み始めるのであった。





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