日本円でダンジョン運営

sterl

罪ト罰 全てを伝える者

 これはアドゥルとカオスゴッドの戦いの直前に、アドゥルから言われたことだ。

「マスター様、これより我はカオスゴッドに、混沌に挑みます。ですが……、場合によっては、しばらくの療養をお願いすることになるかもしれません」

 アドゥルがそれほどまでに危険視するカオスゴッド。ジョセフィーヌがいるから療養は必要ないと思うのだが。アドゥルもそれは解っているはずだ。なら、それをも超える何かがカオスゴッドにはあるのだろうか?

 そして、その答えはすぐに証明された。

 12時を過ぎ戦闘時間に入ると、ゆっくりとカオスゴッドが歩き出す。小さな歩幅で、少しずつ。

 そして、霧の手前まで差し掛かった。あの霧は全ての知覚、概念を惑わし、許可無き存在が通ろうとすれば霧を抜けた先を操作されてしまう幻影の霧だ。

 しかし、カオスゴッドには通用しなかった。霧に侵入したかと思うと、刹那、霧が何事も無かったかのように消えていた。晴れた視界には、荒れた墓地と戸惑うアンデットが姿を表す。

 さらにカオスゴッドは歩く。近づくアンデットは、みなカオスゴッドに触れる前に塵となって崩れ落ちていく。

 さらにカオスゴッドは歩く。襲い来る暴虐や殺戮は力及ばず闇に溶け、幻影や恐怖さえも光に変えて。

 さらにカオスゴッドは歩く。ゲリラ豪雨のように降り注ぐ七大罪の悪魔の猛攻さえ、ものともせず。

 さらにカオスゴッドは歩く。これ以上は進ませないと立ち塞がった色欲のヤギを、触れるだけで爆散させ。

 さらにカオスゴッドは歩く。主の元へは行かせないと攻撃を繰り出す冥土に腕を奪われながらも、その首を撥ね飛ばして。

 さらにカオスゴッドは歩く。やがて立ち塞がるのは、死霊の王、カースキングのみ。

 そしてカオスゴッドは立ち止まった。

『罪ト罰。ワタシは忘却を赦さない。重責を抱え、苦しみに生きよ』

「あっ、がああぁあぁぁあっ!すま、なかった、アルフレッドっ……」

 やがてカースキングは倒れた。苦悶に満ちた顔で、頭を抱えながら。

『ワタシはメッセンジャー。審判の刻は、まだ早い』

 最後のその言葉は、私に向けられているような気がした。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品