「初心者VRMMO(仮)」小話部屋

神無乃愛

初めてのXX 3

 答えづらそうにしている保と純粋な目でそれを見る美玖を、クリストファーは面白そうに見ていた。
「それ以上美玖を見んな! 美玖が穢れる!!」
「穢れる!? 私汚れてます?」
「だから違うっての!」
「え? クリストファーさんも保さんも汚れてませんよね?」
「……だーかーらー!! 『食べる』もだが、『穢れる』もそういう意味じゃない! 美玖は綺麗過ぎてそういうのが分からないから、そういう言葉を聞かせたくない!」
「でも……話分かんないの、イヤです」
 少しばかりぷくっと膨れる美玖が、かなり可愛らしく微笑ましい。

 そんな美玖と、保はいつものように額を合わせた。
「これも代償行為だって言ったよね?」
「……は、はぃ」
 今にも消え入りそうな声で、美玖が頷いていた。
「それと一緒。『食べる』も『穢れる』もある意味直接的な言い方じゃない。
 ……それをこういう場所で聞かないこと。それからやろーどもに聞かないこと。あとはリリアーヌと晴香さんにも聞かないこと。OK?」
 少しばかり涙目になった美玖が、保から視線を逸らそうとしない。

 それがまた、扇情的で何とそそられることか。
 これが無自覚というのだから、性質が悪い。

 クリストファーは思わずほくそ笑み、わざとらしく咳きをした。
「盛り上がってるところ悪いのだけれどね、何というか、……こうぐっとクルものがある。little lady、大人しく言うことを聞いていたほうがいい。でないと私のような悪い大人に攫われるよ?」
「ふぇ?」
 やっと視線を逸らした美玖が、不思議そうにクリストファーを見ていた。
「大人はね、子供以上に狡賢く、時として残忍になる。little ladyのように外の世界を知らない子供は、あっという間に餌食になる。
 そうならないためにもMy dear sonの言うことは聞いたほうがいい」
 正直な話、きょとんとして見てくる顔もそそるものがあるのだが。

 少しばかり保と趣味が似ていると思ってしまう。
 言ってしまえば保は反発するだろうが。
「さて、little lady、君にお願いがあったんだ」
「ふぇ?」
 保の腕の中でコテンと首を傾げた瞬間、保は美玖の顔を己の胸に押し付けた。
「た……保さんっ! く……苦しいです!!」
「別にクリスの顔を見なくても会話は出来る。で、美玖に何の用だよ」
「お前には言ったと思ったんだけどね。ゲーム内とリアルでlittle ladyの作ったアクセサリーが欲しい」
 その瞬間、保から「ぶちっ」という音が盛大に聞こえた。
「そのためだけにストーカーまがいのことをしたのかよ! あんたは!!」
「だって、My dear sonが会わせてくれないんだもん。それに、ゲーム内ではしていないじゃないか」
「中年親父が『だもん』だなんて言ったって、気持ち悪いだけだ! 俺どころか美玖まで鳥肌立ってるじゃねぇか!」
「その鳥肌、是非見てみた……」
「ふざけんなっ!!」
「た……保さんっ! 鼻っ! 鼻が!!」
「鼻がどうし……って美玖!? 大丈夫か!?」
 ……別の意味でカオスになってきてしまっていた。

 美玖は保に圧迫され、鼻血が出ただけだったのだが。実は鼻の粘膜はあの事件以来、かなり弱ってしまい、ちょっとした弾みで鼻血が出やすくなっていたのだ。
 そして、保も「出やすい」とは聞いていたが、少し強めに抱きしめただけで、出るとは思っていなかった。
「……すまん」
「くっくっくっ……駄目だ。腹が痛い」
「黙れ!!」
「いや、My dear sonは昔から興味を示したら、粘着的とでもいえる執着心を持っていたが、little ladyが絡むと、……もう、最高だ! また日本に来たかいがあったよ!
 私もね、帰国しなくてはいけないから、土産代わりに欲しかっただけだよ」
「……私のつたないアクセサリーでよければ……」
「よくないっ!」

 結局、ごり押しで美玖にアクセサリーを作ってもらうことに成功した。

 直接美玖から渡してもらえないのが残念だとクリストファーは思う。

 ……が。アメリカにいる知人たちへの土産と共にクリストファー用に作られたアクセサリーは、保とクリストファーの度肝を抜いた。
 そう、二人のアクセサリーは「お揃い」だったのだ。

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