「初心者VRMMO(仮)」小話部屋

神無乃愛

美玖と女帝と保の初めての年末年始 その3


「~~っ! 美味しいですっ!!」
 ゆっくりと正月を楽しむのは記憶がある限りで初めてである。しかも悠里からのおさがりとはいえ、振袖まで着せてもらっている。
「はい、お年玉ですよ」
「ありがとうございますっ!!」
 禰宜田家の重鎮たちからというお年玉をまとめて悠里から貰う。……去年まで貰ったお年玉の総額はありそうな厚みになっている。
 お礼を言いに行くのは昌代からも止められており、現在は別室で親しい人物とおせちをつまんでいる。欲を言えば、さゆりや昌代とも一緒に過ごしたかったとおもう美玖だった。
「他の面子とはゲーム内で顔を合わせることにしてる。マリル諸島にある神社に初詣だな」
 すでに現実の神社にお参りをしてきた良平が他の面子に言う。ちなみに、お土産と称してお守りやら屋台の料理やらを持ち込んでいる。

 多すぎて何を食べていいか迷ってしまうという、うれしい状況に美玖は陥っていた。


 そして、一息ついたところで「TabTapS!」に繋ぐことにした。


「カナリアちゃんー。あけましておめでとー」
「エリさん、あけましておめでとうございます」
 マリル諸島に出かけると、とある神社でエリが巫女姿になっていた。
「一応ねー。これもクエストなんですよー。全クエストクリアで今着てる巫女服がもらえるのー。これ着るとMNDがかなり上がるから便利ー」
 昨年はSTRが上がる巫女服だったという。巫女服でなぜSTR!? という突っ込みはスルーされた。
「スタッフの思いつきだそーですよー。一昨年はおみくじ形式であたりは全ステータスアップ。外れると全ステータスの大幅ダウンでした。複数ひけたのが唯一の救いでしたよー」
 ちなみに大吉が全ステータスアップで、全体の0.01%という鬼な数字だったらしい。そして大凶が全ステータス大幅ダウンで全体の10%を占めていたという。
「……そういやそんなことが掲示板に書かれてたな」
 ジャスティスがそう呟いたとき、カナリアはふと疑問に思った。どんな確率でそのくじびきがよういされていたのだろうか、と。

 すぐさま過去の掲示板をエリが見せてくれた。そして、カナリアは呆れた。
 次点の吉が0.99%、中吉9%、吉10%、小吉20%、末吉20、凶30%で、凶は全ステータスの小幅ダウンだったらしい。
「その時は特定の神社に特定の順番で初詣に行かなくてはいけなかったんですけどー」
 行った神社の数とお賽銭の金額によって貰えるくじ引きの数が変わっていたらしい。
 余談だが、一番可愛らしい巫女服は大凶だったというから始末におえないのだ。
「今になって思えばですけどー。おそらくみんな同じ巫女服で何かのクエスト行ってたらー、限定クエスト行ったのかなーっておもうんですよねー」
「それこそ今更だな」
 そんな話をしながらも、カナリアたちはおみくじを引き、現実世界と同じように結んでログアウトした。


「美玖」
 ヘッドギアを外して待っていた保が、美玖に話しかける。
「次は現実リアルの神社に行こうな」
「はいっ」
 嬉しそうに頷く美玖を保は優しく抱きしめた。

 その願いが叶うまでにはもう少し時間が必要だった。

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