レジス儚記Ⅰ ~究極の代償《サクリファイス》~

すずろ

第六章 第四話「格闘」

 朦朧とする三人。
 陽太は魔女に借りた鎌を見つめる。
 ――このままここに居ても助けは来ない。

「やるしか……ねえ」

 そう呟いて、陽太は立ち上がる。


 三人はまた階段を降り、地下十階へと向かった。
 そこにはまだ巨大なヘビの姿があった。
 中央でとぐろを巻いている。

「寝てるのかな……」

 まぶたが無いので目は瞑らないようだが、頭を下しじっと佇んでいるヘビのモンスター。
 陽太たちに気づいていないのは間違いない。

「このまま奥の階段までこそっと行けないでしょうか……」
「いや、どっちにしろこのままだと飢え死にするだろ。あれを倒すんだ」
「お肉……じゅるり」
「ルナ、瞬歩を頼む」

 そう言うとルナディは陽太に瞬歩の魔法をかける。
 千歩だけ目にもとまらぬ速さで動けるようになる時属性魔法だ。

「あ、でしたらちょっと待ってくださいっ」
「どうした?」

 アメリアは魔本を取り出し、ココを呼び出した。
 不死鳥たちは出てこないのに召喚獣は出てくるようだ。
 ドワーフに本ごと小さくされたからであろうか。
 理由がどうあれ、戦力が増えるのはありがたい。

「ココちゃん、陽太様と協力してあのヘビと戦ってくれませんかっ?」
「任せるにゃ! ご主人様のために!!」
「よし、頑張ろうなココ」
「話しかけんな、クズ」
「魔女二世キター!!」

 せっかく罵倒キャラと離れたかと思ったのに、ここにもいました。
 しかし、鎌を借りた陽太も戦い方に慣れているわけではないので、前衛職は大歓迎である。
 ココは格闘タイプの召喚獣だ。

「じゅるり」

 ルナディはココを見てよだれを垂らす。

「ほら、頑張らないとルナに食われちゃうぜ!」
「よ、よし、陽太! やっちまうにゃ!」

「うおりゃあああ!!」

 鎌を持って飛び出す陽太。
 気づいたヘビがピクッと顔を上げる。
 その隙にココは反対側へと回り込む。

 ――ブンッ!
 陽太の攻撃は空を切った。
 瞬歩をかけてもヘビの移動速度は追いつかないほどのスピードだった。
 そこへ後ろからココが飛び出して、ヘビの首元に噛みつく。
 しかしこちらも、ガリリという音だけで、ヘビの皮には傷すらついていない。
 ヘビは口を開き、陽太に向かってシャーッと威嚇したあと、しがみ付いているココを振りほどくように首を左右に動かした。
 撥ね退けられたココは、思いっきり岩の壁へとぶつかり、のめり込む。

「ココちゃん!!」

 急いで駆け寄り、治癒魔法を掛けるアメリア。
 一方のヘビは陽太のほうを向き直り、口を大きく開けて噛みつこうとしている。
 噛みつくというより、ぱっくんといってしまう勢いだ。

「ウォーターウォール!!」

 そこへルナディが魔法を唱え、陽太の目の前に水の障壁を作り出す。
 首を引き、一度はひるむヘビだったが、舌をペロペロと出し入れしたかと思うと、すぐにその障壁めがけて顔から突っ込んできた。
 するとなんと障壁を軽々くぐり抜けてしまった。
 ヘビは首を横に振り、陽太を顔面で殴打した。
 吹っ飛ばされ、陽太も壁に打ち付けられる。
 そして今度はルナディを視認したヘビ。
 ウネウネと彼女に近づいていく。

「ぐっ……!」

 するとアメリアに回復してもらったココがまた飛び出し、ヘビの背後から駆け寄る。
 ちなみにココは【相利共生】という能力を持っている。
 味方をかばう代わり、治癒魔法による回復率が上がるというパッシブな能力だ。
 それによって瞬時の回復が可能であった。
 尻尾のほうから胴体を駆け上がるココ。

「えいっ!!」

 ココはヘビの左目を引っ掻いた。

 ――シャーッ!
 頭を大きく揺らし、暴れるヘビ。
 どうやらココの攻撃は、目に傷をつけたようだ。

 その隙にアメリアは陽太のもとへ駆け寄り、治癒魔法をかけ始める。
 ココはルナディの前に立ち、守るように臨戦態勢をとる。

「ルナちゃん! 雷魔法を撃ってみてくださいっ!!」
「……わかったの!」

 アメリアに指示され、ヘビに向かって小さなステッキを向けるルナディ。

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