レジス儚記Ⅰ ~究極の代償《サクリファイス》~

すずろ

第六章 第二話「洞窟集落」

 辿り着いた目的地、その入り口は山の急斜面に出来た洞窟だった。
 帝都ハーディアとは山を挟んで反対側にあたる場所らしい。

「姐さん、ここは……?」
「ドワーフの洞窟集落でありんす」

 木枠で囲まれた入口を、屈みながらくぐる四人と一匹。

「狭いっすね……」
「ドワーフは他の種族よりも背丈が小さいからの」

 奥のほうからは、カッキンカッキンと何か金属音のようなものが聞こえている。
 その音のするほうへ、長い階段をしばらく下る陽太たち。
 すると開けた場所へ出た。
 そこは東京ドームぐらいありそうな採掘場だった。
 ハンマーを振りかざし仕事に励む沢山のドワーフたちがいる。
 魔女は鎌の柄の先でコツンコツンと地面を叩く。
 来客に気づいたようで、ドワーフたちが一斉にこちらを向いた。
 魔女は大声で叫ぶ。

「酋長はおるかや!」

 ざわざわとした後、奥にある無数の穴の一つからドワーフの男が現れた。
 石や骨で出来たアクセサリーを体中に纏うその男、彼が酋長であることは確認するまでもなかった。
 陽太たちはその男のいる場所へ向かった。

「なに用じゃ」
「この者たちを、ダンジョンに挑戦させてくりゃれ」

 魔女は酋長に向かってそう言った。
 すると酋長が呟く。

「またか……」
「また? またとはどうゆう意味でありんすか?」
「こないだもお前たちのような子供が一人でやってきたのだ」

「もしや……そいつは黒い髪をした童子ではなかったかえ?」
「ああ、そこにおる小僧と似ておったな。半年もかからず出てきよったわ」
「なんたること……! 邪鬼め、それほどまでに」

 邪鬼というと、竜族の一件で陽太を操っていた奴のことだ。
 そして陽太やアメリアの命はそいつに狙われると魔女が言ってた。
 つまりは今のところ、憎むべき敵というわけだ。

「姐さん……邪鬼って奴も、黒髪なのか」
「……ええ」

 あってほしくない予感が陽太の頭に浮かぶ。
 もしやそいつ、自分と同じように召喚された人族なのでは、と。
 自分を操ってあれだけの残虐行為を行った奴が、同じ人族であって欲しくない。
 だから陽太は、それ以上聞けなかった。
 聞く勇気がなかった。

「では、案内してくりゃれ」
「わかった。お前ら四人とその一匹が入るのだな?」
「や、わっちは一度クリアしておるから入れん」
「ほう……見たことがない顔だが」
「……わっちゃ、ぬしよりも長くこの世を生きておりんすにえ」

 魔女がそういうと酋長は目を細め、見つめる彼女の銀髪から何かを悟る。
 酋長は結構な年に見えるが、魔女のほうが数倍の時を生きていた。
 クリアしたのは先代の酋長の時、いや先々代だろうか。
 ずいぶん昔のことだ。
 魔女はとっくに地属性最上級魔法を使える。
 そして酋長は踵を返し、出てきた穴へと向かう。
 ついて来いと手で合図しながら。


 穴の中を四つん這いで進んでいく陽太たち。
 無数の穴は、それぞれ住居や会議室、見張り部屋など、いろいろな場所へと繋がっているらしい。
 迷路のように入り組んでおり、ドワーフの案内なしでは辿り着けないどころか、帰ることもできなくなるそうだ。
 酋長に案内され辿り着いた場所は、十畳ほどの小さな部屋だった。
 辺りには松明が焚かれ、その中心には、地面に小さな穴がある。
 井戸のような。
 それにしては小さすぎるが。

「先にその召喚獣を納めよ」
「ココちゃんですかっ!? わかりましたっ」

 召喚獣を魔本の中へと戻すアメリア。

「では、準備はよいか?」
「へ? 準備って?」
「あ、待ってくりゃれ」

 状況が理解できないままあたふたしている陽太に向かって、魔女は愛用の鎌を放り投げる。
 陽太の身長の二倍はあろう鎌。

「わわっ、重っ!」
「それを貸してやりんす。なんとしてもクリアして戻って来なんし」
「え? どこから?」
「ちなみに途中で中断はできんからの」

「では、行くぞ」

 そう言って酋長は、陽太に向けてハンマーを振りかざす。
 ポコンと頭を殴られた陽太。
 すると酋長たちがみるみる大きくなっていく。
 魔女も、アメリアも、ルナまで巨大化していく。

「いや、違う! 俺が小さくなってるのか!!」

 陽太は小指サイズにまで縮んでいった。
 そして酋長はアメリアやルナディにもハンマーを振りかざし、三人をすくい上げると、鳥居の奥にある小さな穴へと放り込んだ。

「キャー!!!」

 悲鳴を上げながら、落ちていく陽太たち。
 途中、下から吹き上げる上昇気流のような風で落下速度は緩められ、三人はポテンと地面に到着した――

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