レジス儚記Ⅰ ~究極の代償《サクリファイス》~
第二章 第四話「図書室」
もらった学校案内の中から校内図を取り出し、図書室へと向かう陽太。
特別教室などのある別棟に図書室もあるようだ。
中庭の渡り廊下を抜け、一階の図書室へと辿り着く。
始業式とあってか、こちらの棟には人の気配が全くない。
図書室といっても、図書館レベルの広さだ。
受付カウンターにも人がいないようなので、勝手にお邪魔する。
――魔法書のコーナーは……っと。
まずは最上級魔法についての資料を探すことにした陽太。
実際、せっかく異世界に来たのだから、早く凄い魔法を使ってみたいという衝動もある。
火属性、水属性、地属性、風属性……魔法書のコーナーにはそれぞれの属性に分かれていて、かなりの数の本が並んでいた。
――来て正解だったな。
そう思いながら、とりあえず火属性の一番分厚そうな本を手に取り、その場に座り込む陽太。
ぺらぺらとページをめくり、最上級魔法について書いてないかを探す。
「…………つか、読めねえ」
基本的な日常会話の単語はマスターしているものの、専門用語がびっしり書いてある魔法書は、陽太にとってただの意味不明な暗号にしか見えなかった。
頭を抱える陽太。
すると誰もいないはずの図書室で、陽太は急に背後から首に手を回され誰かに抱きつかれた。
「うわああああ!!」
びっくりして図書室の端っこまで飛び退く陽太。
振り向くとそこには、群青色のワンピースを着た、空色の髪に透き通るような白い肌の女の子が立っていた。
「また会えて、うれしいの」
「君は……昨日の」
ハーリオンから降りてきた時に、水球の湖で溺れていた少女だった。
「陽たん……」
「え? 俺、名前言ったっけ……?」
「今朝の集会で聞いたの」
「もしかして君もこの学校の生徒なのかい?」
「ルナは陽たんと同じ四年生、魔法クラスなの」
「まじか、同い年か」
「ここで何してるの?」
「あ、ああ。ちょっと最上級魔法ってどんなのかなーなんて。でも全然読めないや。さっぱりだ」
「ルナが教えてあげるの」
「ほんとに? それは助かるな。じゃあ、まずここは何て書いてあるんだ?」
「違うの」
「……なにが?」
「最上級魔法、教えてあげるの」
「は?」
そう言ってルナディは、いきなりスカートの裾をめくり、魔の三角地帯、いわゆるデルタゾーンを露わにした。
「ちょちょちょちょっ! なにやってるの!?」
「ルナの魔法なの」
さすがにこんな幼女に発情することはないが、いきなりスカートを捲り上げられては目のやり場に困る。
「見て?」
「や、見てって言われても……まだ心の準備が。おけけも生えてねーし……」
戸惑いながら横目でルナディをちらちら見る陽太。
すると、ルナディの右ふとももには――
黒の紋章が刻まれていた。
最上級魔法の証だ。
「まさか……それ」
「うん。水属性最上級魔法の紋章なの」
――おいおい、こんな子供にも使えちゃうのか。
最上級魔法ってもしかして、意外と安いもんなのか、と陽太は少しショックを受ける。
「その代わり、ルナにも教えてほしいの」
「なにを?」
ルナディは陽太の前に、ちょこんと座って呟く。
「その手首の魔法」
そうか、昨日手首の紋章を見られたんだった。
それで交換条件を出してきた訳だな。
一応あれから手首には包帯をリストバンドのように巻き、他人に見られないようにはしている。
しかし、どうする陽太。
水属性の最上級魔法か……とても魅力的である。
教えてもらいたいのはやまやまだが、代わりに教える時属性魔法は危険すぎるんじゃないだろうか。
それに【星霜の途絶】に必要な詩歌はアメリア父に教えてもらってはいるものの、自分は解除の魔法が使えないので二度と使ってはいけないと念押しされている。
「ルナは、この魔法を覚えてどうするつもりなんだ?」
「秘密なの」
「それじゃあ教えられないな。これはな、かなり危険な魔法なんだ。代償がヤバい」
「お願い……教えて」
必死に潤んだ瞳で陽太を見つめるルナディ。
何か深いわけでもあるのだろうか。
「その水属性最大級魔法というのは強いのか?」
「ルナの【水妖の一涙】はおっきな水の球を発生させる、すごい魔法なの」
「水の球……? もしかして昨日の……」
「うん。空から人が落ちてきたから、クッションを作ろうと思ったの」
「じゃ、じゃあ、俺らはルナの魔法で助けてもらったってわけか!?」
「結局、ルナが溺れちゃったの。助けてくれてありがとなの」
「いやいや違うだろ、なに感謝しちゃってんだ。つまりルナは、俺らの命の恩人ってことじゃないか」
となると選択の余地はない。
恩を返すことのほうが最優先事項である。
あれだけの水魔法を咄嗟に、そして人の為に使うことができる子なら、【星霜の途絶】を教えても悪い使い方はしないだろう。
「……ルナはディスペルの魔法、使えるか?」
「うん」
特別教室などのある別棟に図書室もあるようだ。
中庭の渡り廊下を抜け、一階の図書室へと辿り着く。
始業式とあってか、こちらの棟には人の気配が全くない。
図書室といっても、図書館レベルの広さだ。
受付カウンターにも人がいないようなので、勝手にお邪魔する。
――魔法書のコーナーは……っと。
まずは最上級魔法についての資料を探すことにした陽太。
実際、せっかく異世界に来たのだから、早く凄い魔法を使ってみたいという衝動もある。
火属性、水属性、地属性、風属性……魔法書のコーナーにはそれぞれの属性に分かれていて、かなりの数の本が並んでいた。
――来て正解だったな。
そう思いながら、とりあえず火属性の一番分厚そうな本を手に取り、その場に座り込む陽太。
ぺらぺらとページをめくり、最上級魔法について書いてないかを探す。
「…………つか、読めねえ」
基本的な日常会話の単語はマスターしているものの、専門用語がびっしり書いてある魔法書は、陽太にとってただの意味不明な暗号にしか見えなかった。
頭を抱える陽太。
すると誰もいないはずの図書室で、陽太は急に背後から首に手を回され誰かに抱きつかれた。
「うわああああ!!」
びっくりして図書室の端っこまで飛び退く陽太。
振り向くとそこには、群青色のワンピースを着た、空色の髪に透き通るような白い肌の女の子が立っていた。
「また会えて、うれしいの」
「君は……昨日の」
ハーリオンから降りてきた時に、水球の湖で溺れていた少女だった。
「陽たん……」
「え? 俺、名前言ったっけ……?」
「今朝の集会で聞いたの」
「もしかして君もこの学校の生徒なのかい?」
「ルナは陽たんと同じ四年生、魔法クラスなの」
「まじか、同い年か」
「ここで何してるの?」
「あ、ああ。ちょっと最上級魔法ってどんなのかなーなんて。でも全然読めないや。さっぱりだ」
「ルナが教えてあげるの」
「ほんとに? それは助かるな。じゃあ、まずここは何て書いてあるんだ?」
「違うの」
「……なにが?」
「最上級魔法、教えてあげるの」
「は?」
そう言ってルナディは、いきなりスカートの裾をめくり、魔の三角地帯、いわゆるデルタゾーンを露わにした。
「ちょちょちょちょっ! なにやってるの!?」
「ルナの魔法なの」
さすがにこんな幼女に発情することはないが、いきなりスカートを捲り上げられては目のやり場に困る。
「見て?」
「や、見てって言われても……まだ心の準備が。おけけも生えてねーし……」
戸惑いながら横目でルナディをちらちら見る陽太。
すると、ルナディの右ふとももには――
黒の紋章が刻まれていた。
最上級魔法の証だ。
「まさか……それ」
「うん。水属性最上級魔法の紋章なの」
――おいおい、こんな子供にも使えちゃうのか。
最上級魔法ってもしかして、意外と安いもんなのか、と陽太は少しショックを受ける。
「その代わり、ルナにも教えてほしいの」
「なにを?」
ルナディは陽太の前に、ちょこんと座って呟く。
「その手首の魔法」
そうか、昨日手首の紋章を見られたんだった。
それで交換条件を出してきた訳だな。
一応あれから手首には包帯をリストバンドのように巻き、他人に見られないようにはしている。
しかし、どうする陽太。
水属性の最上級魔法か……とても魅力的である。
教えてもらいたいのはやまやまだが、代わりに教える時属性魔法は危険すぎるんじゃないだろうか。
それに【星霜の途絶】に必要な詩歌はアメリア父に教えてもらってはいるものの、自分は解除の魔法が使えないので二度と使ってはいけないと念押しされている。
「ルナは、この魔法を覚えてどうするつもりなんだ?」
「秘密なの」
「それじゃあ教えられないな。これはな、かなり危険な魔法なんだ。代償がヤバい」
「お願い……教えて」
必死に潤んだ瞳で陽太を見つめるルナディ。
何か深いわけでもあるのだろうか。
「その水属性最大級魔法というのは強いのか?」
「ルナの【水妖の一涙】はおっきな水の球を発生させる、すごい魔法なの」
「水の球……? もしかして昨日の……」
「うん。空から人が落ちてきたから、クッションを作ろうと思ったの」
「じゃ、じゃあ、俺らはルナの魔法で助けてもらったってわけか!?」
「結局、ルナが溺れちゃったの。助けてくれてありがとなの」
「いやいや違うだろ、なに感謝しちゃってんだ。つまりルナは、俺らの命の恩人ってことじゃないか」
となると選択の余地はない。
恩を返すことのほうが最優先事項である。
あれだけの水魔法を咄嗟に、そして人の為に使うことができる子なら、【星霜の途絶】を教えても悪い使い方はしないだろう。
「……ルナはディスペルの魔法、使えるか?」
「うん」
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