気分屋文庫

有賀尋

The person who is destined

...そんな...!予定日じゃないのに...!

僕は教室を飛び出した。
昼休みだから教室にはたくさん人がいたし、αの同級生は皆反応してしまった。
急いで中庭に逃げても、結局見つかってしまう。
複数人のグループに追いかけられ、僕は捕まってしまった。

「...離して...!」
「誰が離すかよ、こんなに匂いダダ漏れにして...!」
「...誰か助けて...!」

僕は声が出せるだけ出した。
すると近くの窓が勢いよく開いた。

「...うるせぇ、起きちまったじゃねーか」

機嫌悪そうに出てきたその人を見た瞬間、僕も襲おうとした同級生も動きが止まった。

...あの人って...

「...おい、あいつってまさか...」

この学校に入学して最初にほかの先輩に教わる事がある。

─ 一葉琉司には近づくな。

そして目の前にいるその人は、まさに近づいてはいけない人だ。でも、僕はこの人に助けを求めるしか助かる方法は無いと確信した。

「一葉琉司...!」
「...た、助けてください...!」

琉司先輩が僕達を見るとニヤッと笑った。

「…あー、なるほど?騒いでたのはてめーらか」

琉司先輩はほんの少しの時間で同級生をボコボコにして行った。

「...くそ、ダメだ戻んぞ!」

殴られた同級生達はどこかに逃げていき、僕はワイシャツで隠して恐る恐る声をかけた。

「...あ、あの...ありがとう...ございました...」
「別に、ムカついたからやっただけだし」

この人だってαだ。
だからこそ離れなきゃ、と思うのに、体が動かなかった。
すると琉司先輩は匂いを嗅いだ。

「...お前発情期?」

...バレた。

「っ...!急に...来ちゃって...」
「薬は」

先輩の目が鋭くなって僕を睨む。

「まだ予定日じゃなくて...持ってないです...置いてきちゃって...」
「これじゃ合わないか」

そう言うとポケットから薬を出した。

「...え...?」
「抑制剤、持ち歩いてんだ俺」

よく見るとそれは本当にただの抑制剤で、僕にあまり効果はない。
不安定な発情期をコントロールするための薬が僕にとっては必要で、でも僕はそれを待っていない。

「...わから...ない...」
「...体に合わねーもん飲ませらんねーしな...」

先輩は困ったように眉を寄せて頭をかいていた。

...困らせちゃダメだ...離れなきゃ...

「...ごめ...なさ...」

限界の体を押し切って立ち上がって離れようとした時、先輩に手を掴まれた。

「待てよ、どこ行くんだよ」
「...だって...先輩...αですよね...僕のせいで...」
「また襲われてーのか?」
「それは...」

それは嫌だ。
そうなったら僕は...!

「...いいこと思いついた、お前、俺の連れになるか」
「...先輩の...連れ...ですか...?」
「俺のお手つきになれば、ここではお前に手出せるやついなくなるし」

先輩の連れに。
そう言われて嬉しくないわけはなかった。
だけど、僕には何も差し出せるものがない。

「...でも...僕何も...」
「何言ってんだ?身体差し出すんだ、代償としては充分だろ」
「...身体...?僕の...ですか...?それで...いい...なら...」
「決まりだ、ついてこい」

そう言って僕の手を引っ張って行った。

あれから数年。
何がどう転んだのかは分からないが、僕達は番になった。
あの場所で出会った時から、どうやら運命は決まっていたらしい。
僕も琉司も仕事が仕事な上に、琉司はNo.1だ。
だけど、琉司はそこでも僕を守ってくれる。
卒業までだと思っていたのに。

「...僕、琉司に守られてばっかり」
「んだよ、なんか言ったか?」
「んーん、なんでもない」

隣に座る琉司を見て微笑むと、琉司は「なんだそれ」と言いながら僕の頭を優しく撫でてくれた。

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コメント

  • 水野真紀

    おもしろいっすーーー
    更新が楽しみだーー
    僕のも読んでくれるとありがちょいぽ

    0
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