初心者がVRMMOをやります(仮)
リタイアの理由
久方ぶりのギルド「カエルム」の本拠地。そこでジャッジは難しい顔をしていた。
現在、カナリアはマリル諸島へ「お遣い」に行かせている。この話はカナリアにとって酷だからだ。
「で、急きょリタイアした理由を教えてもらおうか」
ディッチが全員を代表して詰め寄った。新素材に興味があったのはカナリアだけではない。
「あれは、スフィンクスの罠なんだよ」
ぼりぼりと頭を掻きながら、ジャッジは答えた。詰め寄って来たディッチや、防具を作るはずのジャスティスよりも、クィーンが怖い。
「スフィンクスという名を、我は知らぬがクリス殿の現実での知り合い『ビラル』のことか?」
「分かってんなら聞くなや」
エジプトに籍を持つ、クリスの知り合い、それがスフィンクスだ。そして、ある意味ジャッジよりも厄介な男である。
奴が「スフィンクス」と名乗っているのには、理由がある。それがジャッジから言えることだった。
「ふむ。二つの理由がありそうじゃな」
「え? 確か謎かけ大好きなモンスターだよね」
イッセンがすぐに首を傾げていた。
「それはギリシャに伝わるスフィンクスじゃ。戦において死を見守る存在ともされておるの。子供を攫うという話もあるが。我が先ほど挙げた名前で間違いなのなら、神の使いに由来する」
「陰険策士様、なんであれだけで分かるんだよ」
「げぇむは最近になってやったがの、昔げぇむ好きの者と一緒におった故、スフィンクスという名前には聞き覚えがあっただけじゃ」
クィーンの顔の広さを舐めていた。ジャッジは頭を抱えた。
「あれは厄介じゃぞ。おそらく今回の出来事は布石じゃ」
「意味わかんねぇ」
クィーンに対してそこまで言葉を崩せるイッセンもすごい、そうジャッジは思ったが、周囲に言わせれば「お前が言うな」であろう。
「ほほほ。お主らよりも長く生きておる故、色々と伝手があるだけじゃ。最悪ツインスパイダーもワイルーとやらも滅ぶ可能性があるの」
「いや、滅ばない」
ジャッジは断言する。
「今回の一件で双方とも悪進化する」
「……は?」
「カナリアが素材のためとはいえ、あいつらを止めようとしただろ? そのお礼ボーナスとして教えてもらったんだが……」
出来れば言いたくないし、カナリアに関わって欲しくない。
「言え。多分カナリア君は言わないと納得しない」
「ジャッジ、カナリアちゃんに説明する前にあたしらに教えてくれる約束だろ。あたしらにも言えなかったら、無理だ」
兄妹二人に説得され、ジャッジは決心した。
「ツインスパイダー小さかっただろ? あれが共食いして、スパイダーシルクより十倍ほどでかくなるらしい」
「……は?」
「ついでに世話するワイルーたちもでかくなる上、双方揃ってVIT、DEF、MDFは99999。ワイルーのSTRは99998、ツインスパイダーのINTが99997な。HPもバカ高いから、まずもって倒すどころか捕獲すら難しくなるぞ」
ちなみに、99999というのがカンストした値である。
「何そのムリゲ」
「最初に行った奴らが友好的なら、一応そのまま。攻撃した時点でそうなるらしい。攻撃した後、その場にいたプレイヤーには問答無用で反撃してくるから、助けに入ろうとするとこっちがダメージ食らう上に、攻撃の当たり判定がワイルーたちにつく。つまりは、攻撃しちまうってことだな。
もう一つの情報として、既に身体はでかくなってるらしいぞ」
「いや、そういう問題じゃなくてさ」
げっそりとしながらも、必死になって「可愛い従妹のため」と聞いていたイッセンが、突っ込みを入れてきた。
「カナリア、でっかい犬も苦手だろ? こりゃしくったわと聞いて思った」
「そういう問題じゃねぇだろ!!」
ジャスティスまでもが怒鳴って来た。
「仕方ないだろ。それが『隠し』だったって話だ」
ついでに言うなら、そのクエストでツインスパイダーやワイルーに攻撃した者は、「生きとし生けるものへの冒涜」という称号が付いて、モンスターに襲われやすくなるが、素材が手に入りにくくなるという恩恵付きだ。
「それでリタイアしたわけか」
「別々でクエスト受けといてよかったと思ったよ」
全員があっさりと納得した。
「その人にお礼代わりになんか作るか」
ぼそりとジャスティスが呟く。
「いいねぇ。久方ぶりに武器防具でネタもん作るか?」
「じゃあたしも錬金術で何か作ろ」
「あ。俺も原付の制限速度以下しかスピードの出ない車でも作るか」
各々がお礼と嫌がらせを込めて用意し始めた。
そのあと、カナリアにもこのことを説明するのだが。
「その地域に近寄れないです」
としょぼくれていた。
現在、カナリアはマリル諸島へ「お遣い」に行かせている。この話はカナリアにとって酷だからだ。
「で、急きょリタイアした理由を教えてもらおうか」
ディッチが全員を代表して詰め寄った。新素材に興味があったのはカナリアだけではない。
「あれは、スフィンクスの罠なんだよ」
ぼりぼりと頭を掻きながら、ジャッジは答えた。詰め寄って来たディッチや、防具を作るはずのジャスティスよりも、クィーンが怖い。
「スフィンクスという名を、我は知らぬがクリス殿の現実での知り合い『ビラル』のことか?」
「分かってんなら聞くなや」
エジプトに籍を持つ、クリスの知り合い、それがスフィンクスだ。そして、ある意味ジャッジよりも厄介な男である。
奴が「スフィンクス」と名乗っているのには、理由がある。それがジャッジから言えることだった。
「ふむ。二つの理由がありそうじゃな」
「え? 確か謎かけ大好きなモンスターだよね」
イッセンがすぐに首を傾げていた。
「それはギリシャに伝わるスフィンクスじゃ。戦において死を見守る存在ともされておるの。子供を攫うという話もあるが。我が先ほど挙げた名前で間違いなのなら、神の使いに由来する」
「陰険策士様、なんであれだけで分かるんだよ」
「げぇむは最近になってやったがの、昔げぇむ好きの者と一緒におった故、スフィンクスという名前には聞き覚えがあっただけじゃ」
クィーンの顔の広さを舐めていた。ジャッジは頭を抱えた。
「あれは厄介じゃぞ。おそらく今回の出来事は布石じゃ」
「意味わかんねぇ」
クィーンに対してそこまで言葉を崩せるイッセンもすごい、そうジャッジは思ったが、周囲に言わせれば「お前が言うな」であろう。
「ほほほ。お主らよりも長く生きておる故、色々と伝手があるだけじゃ。最悪ツインスパイダーもワイルーとやらも滅ぶ可能性があるの」
「いや、滅ばない」
ジャッジは断言する。
「今回の一件で双方とも悪進化する」
「……は?」
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出来れば言いたくないし、カナリアに関わって欲しくない。
「言え。多分カナリア君は言わないと納得しない」
「ジャッジ、カナリアちゃんに説明する前にあたしらに教えてくれる約束だろ。あたしらにも言えなかったら、無理だ」
兄妹二人に説得され、ジャッジは決心した。
「ツインスパイダー小さかっただろ? あれが共食いして、スパイダーシルクより十倍ほどでかくなるらしい」
「……は?」
「ついでに世話するワイルーたちもでかくなる上、双方揃ってVIT、DEF、MDFは99999。ワイルーのSTRは99998、ツインスパイダーのINTが99997な。HPもバカ高いから、まずもって倒すどころか捕獲すら難しくなるぞ」
ちなみに、99999というのがカンストした値である。
「何そのムリゲ」
「最初に行った奴らが友好的なら、一応そのまま。攻撃した時点でそうなるらしい。攻撃した後、その場にいたプレイヤーには問答無用で反撃してくるから、助けに入ろうとするとこっちがダメージ食らう上に、攻撃の当たり判定がワイルーたちにつく。つまりは、攻撃しちまうってことだな。
もう一つの情報として、既に身体はでかくなってるらしいぞ」
「いや、そういう問題じゃなくてさ」
げっそりとしながらも、必死になって「可愛い従妹のため」と聞いていたイッセンが、突っ込みを入れてきた。
「カナリア、でっかい犬も苦手だろ? こりゃしくったわと聞いて思った」
「そういう問題じゃねぇだろ!!」
ジャスティスまでもが怒鳴って来た。
「仕方ないだろ。それが『隠し』だったって話だ」
ついでに言うなら、そのクエストでツインスパイダーやワイルーに攻撃した者は、「生きとし生けるものへの冒涜」という称号が付いて、モンスターに襲われやすくなるが、素材が手に入りにくくなるという恩恵付きだ。
「それでリタイアしたわけか」
「別々でクエスト受けといてよかったと思ったよ」
全員があっさりと納得した。
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ぼそりとジャスティスが呟く。
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