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初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

茶会と誼 2

 外見と声が一致してないな、それがクリスの第一印象だった。
「慣れ親しんだ姿のほうがいいかと思ったの」
 楽しそうにその女性は言う。
「その格好だと逆に気づかれにくいんじゃ……」
「大丈夫よ。『World On Line』ではこの姿で会ってるもの。逆に別のアバターにしたほうが分かりにくいわ」
「……それもそうか。イッセンたちが別アバターにしてるからそのつもりになってた」
「ふふふっ。あと、これもお土産。ゼラチナパウダーとスライムコア。狩りたてよ。それからこれは美……じゃなくてカナリアちゃんに。エアラビットの毛皮」
「……婆さん、絶対さっきのがおまけの土産だろ。陰険策士様、婆さんたちが来たぞ」
 どうやらクィーン直々に呼んだ一団らしい。思わずタブレットでその女性のステータスを確認した。

 名前:マープル
 LV:二十五

 それだけで十分だった。まさかあの、、マープルがこのゲームに参戦してくれるなど。

「これは、ようこそ」
「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。本当に遠慮なく身内全員でお邪魔しております」
「構わぬ。あの時はまともに話も出来なかったゆえ」
「私もです。それに、あなたには感謝しきれないくらいです」
「それはこちらの台詞。あのように心優しい子に育てるのは難しいこと」
「ふふふ。私は何もしていません。あの子の性根が優しかったからですよ」
「お祖母ちゃん! おばばさん!!」
 ぱたぱたと嬉しそうにカナリアがキッチンから出てきた。
「あら、また可愛らしくなったのね。あとで写真撮らせてちょうだい」
「うんっ。これね、ジャスティスさんが作ってくれたの」
「あら、ジャス君が?」
「いっくんとりりちゃんとお揃いなのっ!」
 嬉しそうにカナリアが報告していた。
「あとでジャス君にもお礼を言わないとね」

 そこで初めて、中断されていた紹介が開始された。

「こちらはクリス殿という。あとはその部下らしいが、我も名前を知らぬゆえ紹介できぬ。こちらはマープル殿。カナリアの母方祖母にあたる」
「お噂はかねがね」
「あら、どんな噂かしら」
 楽しそうにマープルと紹介された女性が言う。
「私の後ろにいるのは娘夫婦と息子夫婦です。孫たちはホスト側になっているようですので、紹介は省きます」
 その言葉で、後ろにいた男女が自己紹介をしてきた。それが終わり次第、こちらも全員挨拶を返した。

 そんなことをしているうちに、あっという間に茶会の時間となった。

「……つかさ、祖母ちゃん」
 マープルのステータスを確認したイッセンが少しばかり驚いて問いかけていた。
「いっくん、どうしたの?」
「いつ、始めたの?」
「さっきかしら? 現実リアルで四時間ほど前」
 その言葉で、全員が驚いた。たった四時間でどうやったらLVを二十五もあげれるというのか。
「だって、家族みんなも一緒なんですもの。コツは同じだし」
 そう言い切れるのはマープルだから。ある意味マープルも非常識の塊である。
「薙刀がなかったのが痛かったけど。とりあえず一番安い槍を買って、それで延々とやっただけよ」
「言っとくけど、一年以上やってる俺たちの中でのベテラン、まだLV七十五だからね?」
 それもどうかと思ってしまうのだが。
「あらあら。そのうち一緒に行こうかしら」
「……そうしてやって」
 その言葉にカナリアが嬉しそうにしていた。

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