初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

たまには忘れたりもする


 そんなやり取りが前日にあったとはつゆ知らず、カナリアはログインしてモンスターたちにご飯を与えていた。
「ジャ……ジャッジさんっ! 大変です!!」
 ご飯やりもそこそこに、カナリアは慌ててジャッジのもとへ走ってきた。
「どうした?」
「レラちゃんたちの角が折れました!! どどど、どうしましょう!? 何がいけなかったんでしょう??」
「……カナリア。タブレットでカシミレラを検索しろ」
 少しばかりため息をついて、ジャッジが言う。

 カシミレラの角は生え変わるのが特徴で、しかも突然折れるのだ。根元からぽっきり折れれば問題ないが、時折途中から変に折れるときもあるという。
 そして、その角は細工などに使われることがあるため、この角を拾うというクエストもあるくらいだ。
 このクエストで問題なのは、「角がどこから折れたか」ということと「折れてからどれくらい時間が経過しているか」ということだ。それにより買取値段の変動が著しい。
 一番いいとされるのは、根元から折れて時間が経過していないもの。そのためだけにカシミレラを狩るということもあるくらいである。
 草食モンスターの割りに凶暴なので、高LVでないと本数を集めるのが難しいのが難点だ。

 この説明文を見たカナリアの目が、光りだした。
「素材ーー!!」
 またしてもぱたぱたと走っていくカナリアを見て、ジャッジは呟いた。
「絶対餌やり忘れるな」

 そして、餌やりを忘れたのはカナリアなのだが、何故かジャッジが他のモンスターたちにど突かれる羽目になった。


 カナリアとジャッジの拠点を久しぶりに訪れたディッチが見たのは、まさにその場面。ど突かれながらもしぶしぶモンスターに餌をやっているジャッジの姿だ。
「カナリア君だからな」
 餌やりを手伝いながら、しみじみとディッチは言う。
 余談ではあるが、カシミレラの角で一番いい状態なのが自然に折れたばかりの角。次点で狩った時に折った角である。
 つまり、カナリアはかなりいい状態の角を手に入れたわけだ。
「ジャッジ、これ終わったらクエスト行くぞ」
「珍しいですね。わざわざ呼びに来るあたりが」
「……お前にメール送っても、電話しても無視されたからな」
 予想以上に餌やりに時間がかかっていたようである。
「これ以上、モンスターを増やさないようカナリア君に言っておくように」
「言いたいのは山々ですが、イッセンたちが推奨しているのでおそらく無理かと」
「なんでまた?」
「イッセンたちももっと爬虫類系モンスターとか飼いたいみたいですから」
「血のなせるわざ、だな」
 従兄妹同士の共通点に、ディッチはまたしてもため息をついた。

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