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初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

変更後クエスト 13

 ディッチが泣き言を漏らしたくなるほど、ジャッジは何をしていたのかというと。

 ぶっちゃけいってしまえば、前線に立っていた。それだけである。
 しかも、大砲のLVUPで余った材料も駆使して作られたランチャーを片手にである。

 大砲の必要性はまったく変わらない。それなのに、主砲を預かるはずのジャッジがそこを離脱したのだ。代わりに入ったのはエリとラウだ。
「方向よし! エリさんよろしく!」
「はいっ」
 精度はともかく、時間が少しばかりかかってしまうのが難点だ。
 それでも二人が気にしないのは、少しばかり「コツ」を教えてもらったからなのだが。

 勿論、そんなことを指揮官三人は知るはずもなく。
 聞いた瞬間、頭を抱えた。

 ジャッジが前線に出たのは「カナリアと一緒にいたい」というふざけた理由だけ、、だったら、問答無用でディスカスたちが止めただろう。
 今回はその欲望を叶えると同時に、前線維持という大義名分まで作っている。まったくもって厄介な男である。
「どうしてくれようか」
「そんなことを言うよりも、我々も前線で戦うべきですね」
 ウドムとカーティスが言う。ディッチもそれには納得だ。
「まず、俺が行きます。その上でカナリア君を素材から引き離します」
「それが最重要ミッションですな」

 通常ではありえない最重要ミッション。既に今回のクエストでは、それが当たり前になっていた。

「カナリア君っ! それ以上採取ばっかりやってると貴重な素材、あげないよ?」
「……いやです」
「じゃあ、前線で補助魔法お願い!」
 不承不承といった表情でカナリアが、前線に戻る。

 するりとセバスチャンが寄り、カナリアの鞄から色々と持って行く。

 ……が。
「セバス。今なに入れたの?」
「ミ・レディが欲しがっていた素材ですが」
 ヤダこの主従。その言葉を飲み込むだけで精一杯だった。
「カナリア君、ミントに属性攻撃魔法用の補助かけたげて」
「はい」
 何の補助魔法かは分かっていたらしく、すぐにそれを起動させた。
「……ジャッジ、お前は最前線へ行け。そんな立派なランチャー持ってんだ。向こうを退かせろ」
 そうしないとクリアが難しい、と少しばかり話を盛る。
 カナリアの素材に対する執念を知っているジャッジが、大人しく最前線へ行った。
「さて、ここから補助魔法と回復。それに専念。リリアーヌ君とセバスで周囲にアイテム配布」
「はい」
「かしこまりました」
 各々の返答を聞いて、すぐさまディッチは前線へと視線を向けた。

 勝率十割とカーティスに言われたが、そんなもの嘘だ。小さな失敗が多すぎる。

 こういった大きなクエストで失敗していないだけである。

 それを知る古参、特にスカーレットはディッチをこう評する。「臆病者じゃなく石橋を叩いて渡ってるだけ。たまに叩きすぎて石橋を壊す男」と。

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