初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

イッセンの報告会とお菓子

 本来、現実リアルをゲームに持ち込まない主義のイッセンだが、可愛い従妹たちが絡むと少しばかり違ってくる。
 しかも、周一郎が関わっているとなればなおさらである。

 色々抜け道等も考え、クリスを巻き込んで報告することにした。
「……懲りない坊やだねぇ。規約に反したらアカウント停止になる一歩手前なんだけどねぇ」
 クィーンのたてた抹茶を飲んだ後に、クリスはしみじみと言った。
本日の和菓子はスライム風水ようかんと、エアラビット饅頭である。余談だが、エアラビット饅頭は名月に合わせて作る予定をしているらしく、本日は試食第一号となっている。
「相変わらず、上手に作るね」
「あ、それセバス作」
「……どこまで進化を続ける気かな、彼」
 抹茶を点てられる面子がいない時には抹茶を点て、気が付けば蕎麦や饂飩、パスタにラーメンといった麺まで作りこなす上に、フィールドに出ればサポートから戦闘までを幅広くこなす。

 噂では小動物の世話やら、カナリアの製作サポートまでしているという。
「その噂、ホント。セバスさんの存在がチート」
 ジャンボパフェ――全長一メートル。しかもとけることがないという――に食らいつくイッセンがあっさりと答える。
「いくら我々といえど、そこまでの知能を持たせていなかったはずなんだが」
「なってしまったものは仕方あるまい。我の血の者が言っておったが、天文学的確率が関わっておるそうじゃ」
「美玖だからなぁ」
 最近セバスチャンとカナリアに対するある意味思考を放棄したイッセンが呟く。

 クリスすらその一言で放棄したいと思うが、いかんせん問い合わせが多すぎる。

「して、イッセンよ。それ食いきれるのか?」
「だいじょーぶ。一回やってみたかったんだ。リアルじゃどうやっても食いきれないし。祖母ちゃんの喫茶店でも作ってないし。セバスさんに頼んだら作ってくれた」
 カナリアのことで話し合っているはずだが、堂々巡りになってきたところでクィーンが尋ねていた。
「なんかね、このパフェの器はジャスさんとレットさんが特注で作ってくれたみたい。
パフェを見た美玖の目がキラキラしてたからって。でっかいパフェを美玖に見せたかったんだって」
 誰が、と聞かなくてもなんとなくわかる。おそらくジャッジだ。
「あ。みんなだからね。俺が加入する前の『カエルム』メンバー」
「……」
 クリスどころか、クィーンまで絶句していた。
「食べ物を粗末にするなと言うておるに」
 そういう問題ではないと思うのだが。

 初めて己が常識人だと思えたクリスだった。

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