初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

変更後クエスト5


 いまだ湧き上がるモンスターに、プレイヤーたちは緊迫していた。
 マリル諸島に拠点を置くギルドメンバーは尚更である。

 今までこの砦がここまで保ったことはないのだ。前回の今頃はとっくに砦が陥落し、全滅して終わっていた時間帯である。
「……結構神経磨り減るな」
 そう呟いたのはチェンだ。
 今までここまで進んだことがないため、そのあとの情報がないのである。

 しかも、リアル時間であと一日かかる。
 現在、カナリアは休息という名のログアウト中だ。その代わりにリリアーヌが入っている。
「いっくんが悔しがってました」
「イッセンも縛りプレイ好きだっけ?」
「そういうの好きですね~~。あとは前人未到のクエストとか」
「……そういう英才教育でも受けたか?」
「多分。伯父さんやパパとよく出かけるし」
 気がつくとジャスティスとリリアーヌは和気藹々と話していた。
「それにいっくん、何回かのクエストでスキル習得してたんですけどね」
「俺、報告受けてないんだけど」
「美玖ちゃんみたいにネタ系じゃないからいいかな、と。『飢餓者の超越』っていうんですよね。こう、アイテム枯渇や奪われる、もしくはLPが0になるとバーサク状態に加えて、通常の二十倍のステータスになるという……」
「十分ネタですよね!?」
 カーティスは思わず突っ込みを入れた。
「んでもって、そのあとアイテムを与える、もしくはHP0になると解除。アイテムで回復した場合はステータスが十分の一になるみたい……」
「今回いないことが惜しまれるよ。おそらくステータス低下は一定時間で解決かな?」
「しません。再度LPを0にするかクエスト終了、もしくは死に戻りで解決です」
「……カーティスさんの言う通り十分ネタスキルだよね? リリアーヌ君もそういうの持ってたりするの?」
「えっと、特には? あたしがいっくんにアイテム与えた場合だけ、『飢餓者の超越』が解除ならない、『飢餓者の伴侶』とか、そういうものだけだと思いますけど」
「二人揃ってて欲しかったかな」
 ジャスティスの言葉に、カーティスは思わず頷いた。

 アイテムの補充はそこまで増えなかったが、翼竜のおかげで休息が取れる。それでMPを回復しつつHPを魔法により回復。そして、そのあたりで採取したもので料理を作りLPを回復できる。
「第二砦に数名向かわせ、そこにある補給アイテムを持ってくる」
 そう、指揮官三人は判断した。ここで篭城してクリアしてみせる。その意気込みのためだ。
 しかし、この砦はモンスターによって囲まれている。それゆえ出て行くだけでも一苦労である。

 攻略段階も一つあがったようで、飛行モンスターまで出てきている。
「あの、その役目美玖ちゃんじゃ駄目ですか?」
 さらりとリリアーヌが言う。
「だって美玖ちゃん、『飛行モンスターの友達』っていうスキル持ちですよね? そしたら向こうの飛行モンスターも手懐けられるんじゃないかと」
「リリアーヌ君、怖いこと考えないで」
「ってか、さっき美玖ちゃん来て、意気揚々と翼竜に乗って出かけちゃいましたよ? 『食材アイテム持ってくる』って」
 しかもセバスチャンと一緒に。

 その言葉に全員が固まった。

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