初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

七夕とクィーンの女子力(?)


「七夕……かぁ」
「神社仏閣を愛する会」の本拠地でそうめんをすすりながら、カナリアは呟いた。実のところいまいちピンとこないのだ。
 節句の一つとしか未だクィーンに教えられていないせいでもある。
「どうして、そうめん?」
「さぁ?」
 エリも分かっていないようである。
「何ということだ! 私のほうが詳しいのか?」
 わざとらしくカーティスが頭を抱えていた。
「ギルマスだってー、笹と短冊くらいしか知らないでしょー?」
「いや、織姫と彦星の話も!!」
「カナリアちゃんが知りたいのはー、もっと込み入ったことー。クィーン様しか答えられないー」
「いや、そうめんは天の川に例えたもの!!」
 カーティスの答えに、カナリアはなるほどと思った。
「違いますよ」
 学校関連がひと段落して、己の拠点に戻っていたアントニーがあっさりと否定した。

 そのあと、アントニーから説明を受けつつそうめんは美味しくいただいた。
「なんかー、現実リアルよりも詳しく教えてもらえるからー、文化に詳しくなったー」
 エリの言葉に、カナリアも頷く。

 日本にいるのに、日本の伝統文化を知らない。ゲーム内でそれをここまで痛感するとは思えなかった。
 お茶の淹れ方ひとつとっても、全部アントニーやクィーンに教えてもらっている状況なのだ。
「四字熟語に『温故知新』というのがあるでしょう。今回はその逆ですが、日本に伝わる文化を覚えていくのはいいことですよ」
 どうであれ、自国の文化を知らなければ他国と話はできない。そうアントニーは付け足した。
「日本のイメージは『舞妓』『芸妓』『着物』『サムライ』『大和撫子』といったものですからねぇ。そういう意味ではクィーン殿は日本のイメージを具現化してますよねぇ」
「……」
 カーティスの言葉に、カナリアとエリが顔を見合わせた。
 確かに。あれでかつらをかぶれば見事「ザ・日本」だろう。
 いかんせん、すぐ扇子で肩を叩くのはいかがかと思うが。
「鬘をかぶらなくても、大丈夫ですよ。あの方、必要に応じてまげも結いますし」
「Wonderful! Japanese beauty!!」
 カーティスが興奮しているところ悪いが、そこまでしている人が近くにいたということに驚きを隠せない二人だった。


 後日、カナリアは現実リアルでその姿を見ることになるが、あまりにも似合いすぎていたため、何も言えなかったという。

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