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初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

現実世界にて<悠里と良平、悠里とさゆりの会話>

 そんな話を聞いた悠里は、微笑んで良平のそばに座った。
「お婆様の場合、仕方ないですわね。母がそれで一度被害にあったらしいので」
「……そんなことあったの?」
「はい。学生時代に禰宜田の家と誼を結ぼうとした家の方々を断ったら、ありもしない噂が社交界にまで拡げられてしまったらしくて……」
 さゆりの母親のことまで持ち出し、大変だったという。
「私も怖くて結末が聞けないんです。お婆様の元旦那様、今は禰宜田の長老と呼ばれる方なんですが、その方が止めに入らなければ、どうなっていたか分からないっておっしゃるし。長老様は破天荒な方で、攻撃を仕掛けてきた相手を『死んだほうがまし。でも死ねない』状態にしたと、武勇伝のように語られてますから。
 あの頃のことを知る方は、長老様のやったことですら『お婆様に比べれば可愛い』とおっしゃいますし」
「……聞くんじゃなかったな」
 不安しかない状態である。

 学校に飛び火してこないことを祈るしかなさそうである。
「お話聞く限り、無理だと思いますよ」
「そういうのをフラグというんです。お願いです。これ以上俺の毛髪と胃が持ちません」
 良平は思わずその場に土下座した。
「分かりました。お婆様にそう、、伝えておきます」
 にこりと微笑む悠里に、良平は思わず見とれた。
「もっとも、その方たちが何もしなければ何も起きないのですよ?」
 そう付け足された言葉に良平は頷く。笑顔が黒くなっていた気もしなくない。

 そして、それを「妻LOVE」なために見過ごした己を、良平は後悔することになる。


 話を聞いた悠里は良平に言われなければ、止めるつもりなどなかった。
 同じ経験をしたことがあるのだ。

 一度目は良家の通う幼稚舎から大学まで一貫教育が行われる場所で。
 二度目はそこから逃げて公立高校に入学して。

 一度目は教師ですらその噂を鵜吞みにし、悠里を避けた。それが猶更悠里を孤立させた。
 そして、悠里は噂の出所を一人で追い、禰宜田家からは「よくやった」と言われる方法で報復した。それに怯えた学校側に嫌気がさして、悠里は逃げたのだ。
 二度目は、良平が防波堤となり未遂で終わった上に、それまで関わり合いを持たなかった人たちと誼を結ばせてもらった。
 良平は無意識でやっていたようだが、それに救われたのだ。だからこそ、交際を反対されたときに、両親に遅まきながら反抗し、今に至るのだ。

 とどのつまり、「深窓の令嬢」に見え、「一般常識がなさそう」に見える悠里も立派な「禰宜田の人間」なのである。
 可愛い妹分、そして身を守るすべすらまともに教えられていない美玖を陥れる輩に遠慮なんてするはずがない。

「良平さんは甘いですわ」
 実家にて良平に聞いた話を、母親にする。
「悠里はやきもちを焼いているのね。良平さんが、ほかの女の子を心配するから」
 なるほど。目から鱗が落ちる気分である。
 そういう問題じゃない、と突っ込みを入れてくれる人物はそこにいなかった。
「お婆様に良平さんの言葉を伝えていただいていい?」
「もちろんよ。それで止まるお義母様じゃないけど」
 止めるつもりもない。その言葉は二人とも飲み込んだ。


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