初心者がVRMMOをやります(仮)
リタイアできないレイド 1
ディスカスの攻撃が誤ってカナリアに当たり、ジャッジがバーサク状態に陥ったため、全員が「死に戻り」して一度作戦会議と相成った。
「俺、美玖攻撃したくない」
「あたしもー」
「私もですー。ジャッジさん怖いですー」
イッセンたちの言葉に全員が頷き、名月クエストに対してそ知らぬふりをしようとしたその時だった。
――運営からのお知らせです。此度の「名月クエスト」はクリアするまで半永久的に続きます。また、その間他のクエストは一切受けれません。指名クエストに関しては、一部を除き凍結扱いとなります――
「……俺らに何度死ねと」
というか、他のクエストが全く受けられないのが痛い。
この一件に関してジャッジやカナリアからの助言は一切受けれない。ゲーム内でのやり取りは強制的に遮断だされている。現実で取ろうと思えば取れなくないのだろうが、クリア条件をあっさり教えてくれるとは思えない。
「辛気臭い顔をするでない。せっかくの収穫祭関連が台無しじゃ」
この方も辞めると言いつつ存外楽しんでるよなぁ、とディッチは思ってしまう。
だが、亀の甲より年の劫という言葉もある。そんなわけで、思わずクィーンへ相談したのは悪魔のささやきとも言えた。
「……ほほう。有体に言ってしまえば新たな巫女を選出するという話ではないのか? 逆を言えば巫女になりたいものを選んで連れていけばよかろう」
簡単に言ってくれるものである。そして、それで納得してジャッジがカナリアを倒させてくれるとは思えない。
そして、ジャッジの抑えにクィーンとアントニーをパーティに入れようとしたものの、「システムエラー」と出て叶わなかった。
「……おそらく、今いるメンバーでやり切れということではないかな」
いつの間にか来ていたクリスも考え込んでいた。
あまりにも分が悪すぎるのだ。カナリア一人なら何とかなるだろう。ステータスの振りも運に極振りに近い職人スキルだ。タンクや攻撃重視のプレイヤーではない。……発想が突飛なだけで。
そして、それを補うかのように一緒にいるのがジャッジ、そしてAIのセバスチャンにリース。これでは「クリアしないでください」と言っているようなものである。
「これが原因でゲーム抜けるようなことがあったら洒落にならないと思うんだけど」
ぼそりとイッセンが呟く。その声がやたらと響く。
クリアできない、挙句クリアできるまで他のクエストは受けれない。誰しもが離れる。
「困ったね。色々とテコ入れしている真っ最中だし。My dear sonに無理やり抜けてもらうか」
さすがはクリス。腐ってもジャッジを育てた男である。強引な手段を取る時の顔やらしぐさまでもが似ている。
「現実時間の明日までに役員会議で無理やり通すから。それまで持ちこたえられるかな」
「……俺ら落ちるし。明日繋ぐ」
「賢明な判断だ」
そして何とか、鬼のようなクエストは「クリアできる程度のクエスト」へと変わった。
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