初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

リタイアできないレイド戦の幕開け


「……マジかよ」
 その言葉が誰の口から出たのかも分からなかった。もしかしたら己の口かもしれない、そうディッチは思った。

「名月クエスト」の兎狩りは同じ要領だったため、あっさりとクリア。兎レイドになると思いきや、目の前に現れたのは兎型のぬいぐるみ。つまりはユニである。
 次の瞬間、場所がいきなり変わり、そこにいたのは見覚えのない十二単と束帯を着た男女、そしてジャッジ。
「お前がいるってことは、カナリアがボスか!」
 ジャスティスが叫び、ジャッジがにやりと笑ったことで、正解だと全員が分かった。
「どんな無理ゲーだ!!」
 イッセンが早々に離脱宣言をしようとしていた。

「つか、俺とカナリアを倒してくれ」
「……はぁ!?」
「倒すともれなくカナリアがふざけた神事をしなくて済むようになる」
「断るっ! そのあとお前からのPvPが怖いわ!!」
 ジャスティスが全員の声を代弁していた。

 白い十二単に身を包んだカナリアが三人の後ろに佇む。カナリアの隣にはアルテミスとセバスチャン。詰んでいる、と誰もが思った。

 仮に、ジャッジたちを倒せたところでセバスチャンとユニ、それからリアを連続で倒すのはどこぞのレイドよりも難易度が高い。おそらく「攻防クエスト」並みの難易度だ。最悪はそれ以上の難易度をほこる可能性もあるのだ。
 そして、仮にクリアできたとしてもジャッジからの闇討ちすら考えられる状況。
 誰がそんなクエストをこなしたいと思うのか、一度ジャッジに問い詰めたくなってくる。
「……クエストリタイア!」
「ラジャー!!」
 ディッチの指示に「神社仏閣を愛する会」のメンバーまでもがはもって答えた。

 しかし、リタイアすること叶わず。

 地獄のレイド戦が待ち受けていた。

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