初心者がVRMMOをやります(仮)
エンチャントの仕方
しばらく、気まずい沈黙が続く。
「……えっと、少し作業風景見る?」
ジャスティスの問いに、カナリアはこくこくと頷いてきた。
そこまで怯えなくてもいいのにとジャスティスは思ってしまう。そしてよくこの怯えた小動物をジャッジが手懐けたものだと。
「そこまで怯えなくていいよ。取って食うわけじゃないから」
「食う!?」
そこに反応するのは、正直止めて欲しいところだ。
「ミ・レディ。念のため言っておきますか、ジャスティス様が仰っている『食べる』は食事の意味ではありませんよ」
「食事以外で『食べる』ことってあるんですか?」
念のためと言いながらも、わざわざセバスチャンが言ってくるあたり、そういう勘違いをしていた事があるのかもと思ったが、カナリアの返答で思わず絶句した。
どんな純粋培養で育てばこうなるのか。自分がもの凄く汚れきった生き物に感じてしまう。
「その話はあとででいいだろ。ってか、他のやつにそれ聞くなよ?」
ジャッジあたりに聞きそうだと思ってしまった。ジャッジのことだ、聞いたらイエローカードを渡されない程度に手を出してくる。
「……と、とりあえずその話から離れるぞ。
今回使うのはスパイダーシルクとシルバーワイヤー。まずはスパイダーシルクを糸状にすることろから見せるから」
その言葉にぱぁっとカナリアの顔が明るくなる。……ジャッジが構う理由がわかったような気がした。
「これがスパイダーシルク。見たことは……」
ふるふるとカナリアが首を振る。
「初期クエストでシルクスパイダーあったよな?」
「……蜘蛛が……」
ぼそりとカナリアが呟いた。蜘蛛が怖くて、一度も受注していないんです、と。
「そこにいるんだが」
「いやぁぁぁぁ!!」
シルクスパイダーがいる方向を指差すだけで、飛びのきセバスチャンにしがみついた。
「ミ・レディ! 飼育しているのは大人しいタイプです。怯えなくてもいいですよ」
「蜘蛛やだぁぁぁ」
よく見れば可愛いのだが。ジャスティスが飼育している数少ないペットでもある。ちなみにもう一つはメリノーンだ。
「ジャスティス様。大変申し訳ないのですが、作業を進めていただいて構いませんか?」
手に持ったスパイダーシルクに視線を移したセバスチャンが言った。
「今回はスパイダーシルクとシルバーワイヤーを合わせるんだが、一本の糸にするところからよじり合わせていく。シルバー自体が持つ、抗菌のエンチャントを利用するためだな」
スパイダーシルクを二本と、シルバーワイヤーを一本。これを組み合わせるために紡績の機械に置く。
「で、例えばここで汚れないようにする、と思ったらその魔法をかけていく。この場合は俺が開発した『ダーディ・ディスペル』という魔法だ。よじる段階で永続魔法としてかけるんだ」
そう言ってタブレットを取り出し、「ダーティ・ディスペル」を唱え、機械を回していく。機械のスピードが速くなったので、三十分ほどで何とかできるようになる。その間、MPが保てばというただし書きがつくが。
今回はカナリアに貰ったアクセサリーがかなりありがたかった。MND、WIS、INTをUPさせるだけでなく、MPの自動回復がついている。おかげでMポーションは飲む量が少なくて済むのだ。
ジャスティスが作業をしている間、カナリアは一言も言葉を発しなかった。ただひたすら、ジャスティスの手元だけを見てる。
魔法を唱えて発動させる時、杖などの媒体があれば杖から魔法が発せられる。杖などにそのINTUPなどのエンチャントが杖についているし、手に持っているからだ。持っていない場合は、手から魔法が出る仕組みになっている。
だから、カナリアが手元を見るというのはかなり理にかなっている。
ジャッジが教えたのか、それともディッチが教えたのか分からないが、覚える立場の人間としては最高だとジャスティスは思った。
「で、これで一つのエンチャントがつきました。『鑑定』してごらん?」
そう言われて初めてカナリアが動いた。そしてタブレットを取り出してその紡いだ糸をたじっと見ている。
「……『抗菌』と『ダーディ・ディスペル』がついてます」
「そう。これでエンチャントの完成。同じように布を織る時にもう一つの魔法をかけながら織っていくと、もう一つのエンチャントがつく。縫う時も同じ。だから手作業の方がエンチャントはつきやすいんだ」
タブレットで作業すればかなり早くて楽だが。
「ちょっとだけやってみようか。Mポーションは持ってる?」
「あ、はい」
おどおどとしながら、カナリアが答えてきた。
「MPが減りきる前にMポーションは飲むこと。でないと一部エンチャントが切れる場合があるからね」
こくんと頷いたカナリアが、己の傍にMポーションを置いて、スパイダーシルク三本を使った紡績に取り組んでいく。
どうやらカナリアが使うのは、状態異常回復魔法「ディスペル」のようだ。
静かに、カナリアが集中してやっていく。その集中力にジャスティスは脱帽した。
MPが切れるまでカナリアは糸を紡いでいた。
それを見守るジャスティスを他のメンバーが見ていて、笑いの種にしていたことをあとで知ることになった。
「……えっと、少し作業風景見る?」
ジャスティスの問いに、カナリアはこくこくと頷いてきた。
そこまで怯えなくてもいいのにとジャスティスは思ってしまう。そしてよくこの怯えた小動物をジャッジが手懐けたものだと。
「そこまで怯えなくていいよ。取って食うわけじゃないから」
「食う!?」
そこに反応するのは、正直止めて欲しいところだ。
「ミ・レディ。念のため言っておきますか、ジャスティス様が仰っている『食べる』は食事の意味ではありませんよ」
「食事以外で『食べる』ことってあるんですか?」
念のためと言いながらも、わざわざセバスチャンが言ってくるあたり、そういう勘違いをしていた事があるのかもと思ったが、カナリアの返答で思わず絶句した。
どんな純粋培養で育てばこうなるのか。自分がもの凄く汚れきった生き物に感じてしまう。
「その話はあとででいいだろ。ってか、他のやつにそれ聞くなよ?」
ジャッジあたりに聞きそうだと思ってしまった。ジャッジのことだ、聞いたらイエローカードを渡されない程度に手を出してくる。
「……と、とりあえずその話から離れるぞ。
今回使うのはスパイダーシルクとシルバーワイヤー。まずはスパイダーシルクを糸状にすることろから見せるから」
その言葉にぱぁっとカナリアの顔が明るくなる。……ジャッジが構う理由がわかったような気がした。
「これがスパイダーシルク。見たことは……」
ふるふるとカナリアが首を振る。
「初期クエストでシルクスパイダーあったよな?」
「……蜘蛛が……」
ぼそりとカナリアが呟いた。蜘蛛が怖くて、一度も受注していないんです、と。
「そこにいるんだが」
「いやぁぁぁぁ!!」
シルクスパイダーがいる方向を指差すだけで、飛びのきセバスチャンにしがみついた。
「ミ・レディ! 飼育しているのは大人しいタイプです。怯えなくてもいいですよ」
「蜘蛛やだぁぁぁ」
よく見れば可愛いのだが。ジャスティスが飼育している数少ないペットでもある。ちなみにもう一つはメリノーンだ。
「ジャスティス様。大変申し訳ないのですが、作業を進めていただいて構いませんか?」
手に持ったスパイダーシルクに視線を移したセバスチャンが言った。
「今回はスパイダーシルクとシルバーワイヤーを合わせるんだが、一本の糸にするところからよじり合わせていく。シルバー自体が持つ、抗菌のエンチャントを利用するためだな」
スパイダーシルクを二本と、シルバーワイヤーを一本。これを組み合わせるために紡績の機械に置く。
「で、例えばここで汚れないようにする、と思ったらその魔法をかけていく。この場合は俺が開発した『ダーディ・ディスペル』という魔法だ。よじる段階で永続魔法としてかけるんだ」
そう言ってタブレットを取り出し、「ダーティ・ディスペル」を唱え、機械を回していく。機械のスピードが速くなったので、三十分ほどで何とかできるようになる。その間、MPが保てばというただし書きがつくが。
今回はカナリアに貰ったアクセサリーがかなりありがたかった。MND、WIS、INTをUPさせるだけでなく、MPの自動回復がついている。おかげでMポーションは飲む量が少なくて済むのだ。
ジャスティスが作業をしている間、カナリアは一言も言葉を発しなかった。ただひたすら、ジャスティスの手元だけを見てる。
魔法を唱えて発動させる時、杖などの媒体があれば杖から魔法が発せられる。杖などにそのINTUPなどのエンチャントが杖についているし、手に持っているからだ。持っていない場合は、手から魔法が出る仕組みになっている。
だから、カナリアが手元を見るというのはかなり理にかなっている。
ジャッジが教えたのか、それともディッチが教えたのか分からないが、覚える立場の人間としては最高だとジャスティスは思った。
「で、これで一つのエンチャントがつきました。『鑑定』してごらん?」
そう言われて初めてカナリアが動いた。そしてタブレットを取り出してその紡いだ糸をたじっと見ている。
「……『抗菌』と『ダーディ・ディスペル』がついてます」
「そう。これでエンチャントの完成。同じように布を織る時にもう一つの魔法をかけながら織っていくと、もう一つのエンチャントがつく。縫う時も同じ。だから手作業の方がエンチャントはつきやすいんだ」
タブレットで作業すればかなり早くて楽だが。
「ちょっとだけやってみようか。Mポーションは持ってる?」
「あ、はい」
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どうやらカナリアが使うのは、状態異常回復魔法「ディスペル」のようだ。
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