初心者がVRMMOをやります(仮)
悪意のレイド戦
「これでよし」
NPCの町など知ったことではない。「深窓の宴」に所属する男、トールは思った。
ここのところ有名になっている職人がいるとギルド内でも噂になった。そして、偶然にもそのアイテムを落札できた。ギルドに入れて、作らせれば儲かる。そんなことを思った。
それを実証させるために、何度か名指し依頼をしたものの拒否を食らい、むしゃくしゃしていた。そして、それを他のPCが持っていることに腹を立てた。
その職人のいる町はどこか。
調べればすぐに分かった。「初心者の町」。
ふざけたことを。やり始めのやつが、クエストを選んでんじゃねぇよ。そう毒ついたこともある。
何度依頼をしてもはじかれる理由が、自分にあると全く思わなかったのだ。
どうせルーキーしかいない町だ。少しばかり強いモンスターの群れを呼び寄せれば、すぐに緊急クエストに発展する。
念のためにと、フレンドを町中に拠点を移させた。
それから数日後、緊急クエストの知らせを受ける。
そして、わざと五人でカウンターに向かい、クエストを受ける。
やっぱり来たか。それが「深窓の宴」に所属する男たちの感想だった。
上手いことに一人だ。だったら入れればいい。
だが、スカーレットと呼ばれる女が来たことでそれが不発に終わる。それどころか、どこのギルドにも所属しない男四人も一緒になってPTを組み始めた。
「レイド戦へもつれ込ませるぞ」
「ちょっ! トールさん!」
「黙れよ。まだLV五十にも満たないやつが。俺に従え」
ここに拠点を移した男が反論しようとしたのを、殴って従わせた。
これが、トールの誤りであった。
ウサミミナースと一緒にいたのは、「TabTapS!」ばかりでなく、他のゲームでも有名になっている者だとは知らなかった。
そして、ウサミミナースが「深窓の宴」と深い関わりがあることも知らなかった。
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