初心者がVRMMOをやります(仮)
本陣、到着
「離してくださいっ!」
がっちりとホールドされ、身動きの取れないままカナリアは懇願した。
「俺だ! 美玖!!」
グリフォンを操る男が叫んできた。カナリアの名前を知っているのは、ディッチとスカーレットだけだと思っていただけに、一瞬にして動きが止まった。
「お前の従兄、周一郎だっ!!」
「へ?」
シュウイチロウ……しゅういちろう……周一郎……思い当たる名前を捜していくにつれ、カナリアは硬直した。
「ほぇぇぇ!?」
「久しぶりだな、美玖。盆前に会えると思わなかったぞ」
いや、こちらは会いたくなかったし。その言葉をカナリアは飲み込んだ。
「私はカナリアです」
「……悪い、カナリア。遅くなった」
周一郎と名乗った男のステータスを確認していく。名前・シュウ。LV百五十。所属ギルド・深窓の宴。この時点でカナリアの拒否は決まった。
「離してくださいっ! まだレイド中です!!」
「阿呆! LV五十にも満たないお前ができるようなレイドじゃねぇ!!」
そう言ってシュウはこちらを見すえた。
「タブレットで確認したならもう分かるな。俺はシュウ。『深窓の宴』のサブマスをやってる。今回は所属ギルドの尻拭いに来た。……分かるか?」
気がつけばカナリアを姫抱っこしている。そうだ。この男は毎度姫抱っこをしてくるのだ。
「全員! 各門へ散らばれ!! モンスターは駆逐! 邪魔するやつはぶっ倒せ!」
「了解っす! サブマス!!」
「レン。お前はここのサポートしろ。スカーレットさんがいる!」
「姐御もPTにいるんすか!? さすが癒しのウサミミ嬢! 惹き付ける人が半端ないっす!」
そう言ってレンと呼ばれた男は、そのまま急降下した。
「メインPTが来るまで、お前は上空で大人しくしてろ」
「嫌です!」
「お前なぁ! 『死に戻り』したいのか!?」
「出来ればしたくありませんけど、私は戦うって決めたんです!」
「頑固者! 知らんぞ」
そう言いながらもシュウはカナリアにアイテムを渡してきた。MポーションにHポーション。それから携帯食料。
「これだけあればしばらくもつだろ。俺は上空旋回してるって、お前のPTに伝えてくれ」
そう言ってカナリアを地上に誘導した。
「カナリア君! レン君から話は聞いた。さて、ギルマス様が出てくるまで時間稼ぎをしようじゃないか」
「はいっ!」
全員にHポーションとMポーション、それから携帯食料を配っていく。
「サンキュ。カナリア」
「私も頂き物ですけど」
ジャッジに答えるくらいの余裕が出来ていた。
まだつたない回復ではあるが、カナリアは必死になって全員に回復をしていた。
「それにしてもラッキーっす。レットの姐御と戦えるし、癒しのウサミミ嬢には回復してもらえるし! こりゃ負けれないっす。んでもって馬鹿なことをしたやつは八つ裂きの刑っす!!」
「同感! 八つ裂きにあたしたちも加わるよ!!」
「お願いするっす!」
軽口を叩きながらも、スカーレットとレンは次々に斬っていく。ジャッジとディスカスはカナリアたちを守りつつ戦う方向へシフトチェンジしていた。ジャスティスは血に集まってくるやつらを駆逐することに決めたようだった。
「や……八つ裂きの刑って……」
「カナリアは気にするな。あいつがああ言ってるってことは、人為的なレイドだってことだ」
銃を撃ち放ちながら、ジャッジが言う。
「レイドとかって、人為的に起こせるんですか?」
「まぁ、な。一部起こせる。後で教える」
「はいっ」
「カナリア君、その調子だ! 今なら余裕がある。広範囲の回復を試してみようか」
「はい」
ディッチがどこで余裕があると判断したのか分からないが、そう言うならばとカナリアはいくつかの回復魔法を作り出す。
種類が多い、というのはこういうときは大変なのだ。
気がついたら、カナリアのMPをほとんど使って発動する広範囲の回復魔法を使っていた。
「カナリア君。今のタップの仕方はおぼえているかい?」
ふるふるとカナリアは否定した。
「そうかい。あとで履歴を見ようか。ここからはMPを回復して、成功するものを重点的に使ってくれ」
「はいっ!」
ディッチの指示にカナリアは従い、必死に回復する。
「レット! ドラゴンのHPは八割を切った!! 全員で総攻撃にあたる!! カナリア君は俺のほうで何とかする」
「了解!!」
カナリア以外の言葉が重なり、ドラゴンへ集中砲火していく。その間にも、カナリアはただひたすら回復魔法だけをかけていた。
「よしっ! 俺とカナリア君でドラゴンは解体する! 他は周囲のMOBを倒してくれ!」
その言葉にまた全員が従う。
新しい杖には「解体」というボタンも設置されている。それを押せば、注射針が勝手に離れ、モンスターを解体していくという、優れものでもある。そして、解体中であろうが、味方に回復魔法もかけれるのだ。
最初は無駄な機能もついていると思ったが、こうなってみると便利である。
解体が終わる頃、再度ドラゴンの急襲があったが、それは「深窓の宴」のメンバーがいとも簡単に討伐していた。
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