初心者がVRMMOをやります(仮)
後始末
ひらりとグリフォンから降りてきた、金髪碧眼のエルフ族の男にカナリアはあっけに取られた。
「俺はギルド『深窓の宴』のギルマス、レイ。元うちのメンバーが迷惑をかけた。申し訳ない」
「追放したならいいさ。それよりもカウンターに行って始末書を書くんだな」
ディッチが冷たく突き放していた。
町の人たちにも謝れ! そう言いたかったが、既にカナリアは言える状況ではなかった。
「カナリアからだ。町の住人にも謝れとよ。……カナリアにとってNPCもPCも同じ。それが誠意だと思え」
カナリアの思惑を汲み取ったジャッジが言う。
「……分かった」
カナリアたちが町の中に入ると、すぐさまよく行くショップの店長が駆け寄ってきた。
「カナリアちゃん、無事か!?」
「はい。お陰様で。店長のお店は?」
「……南に面していたから、壊滅だよ。あ、カナリアちゃんのお師匠たちは無事だ! アトリエをやられた人たちもいるが」
守りきれなかった。それがカナリアにとってかなり悔しかった。
「カナリアちゃんたちは北を門以外はほとんど無傷で守ったじゃないか。我々はそれを感謝しているよ」
「店長さん……」
「だから、町の復興のためにたくさんのアクセサリーを卸してくれ。そして材料を買ってくれ」
それが何よりの手伝いだと店長は言う。
「はい……」
店長の優しさが身に沁みた。そして、強くなり守れるようになりたいと心の底から思った。
「カナリアちゃん、復興のためのアクセサリーを作ろうか」
「はい」
スカーレットの言葉にも元気なく頷いた。
「さて、腹減った。セバス君のご飯を美味しくいただこうではないか!」
「……セバスチャンには先程炊き出しのお願いをしました」
壊滅した家もあるのだ。ご飯を食べれない人たちもいる。その人たちのためにと、カナリアは先程セバスチャンにお願いしたばかりだ。
「さすがカナリア君だ。炊き出し自体、自警団たちがやり始めたら戻ってくるだろう。それからでいい」
ディッチが明るく言う。
拠点に戻ったカナリアたちは驚くことになる。セバスチャンが炊き出しに行く前に、カナリアたちの食事を用意して行ったのだ。そしてその全てをリースに頼んでいる。
「デザートは冷蔵庫に入っているそうです。酒は、マスターが好きなものを持ってくるようにと。カナリア嬢のためのジュースも冷蔵庫です」
抜かりない。全員が同時に思ったことだった。
アイテム分配と反省会を始めることになった。
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