初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

現実世界にて<保の立場>

 医療用VRカプセルの使用が出来るようになったと、保に連絡が入った。
 だが、美玖は治療すら出来る状態ではない。

 先日、やっと美玖と保は話を出来るようになったばかりだ。
「……私の名前は、古瀬 美玖です。高校一年です。初めてやった、VRMMOで保さんに会えて嬉しかった……です」
 あの時、名前を名乗るって約束しましたから。
 たどたどしく話す美玖を抱きしめることすら出来なかった。まだたくさんのチューブに繋がれているのだ。
「これからも、たくさん経験していけばいい。まだ時間はたくさんあるんだ」
「……はい」
 両親のことはまだ話していない。話せる状態ではないと言ったほうが正しい。
「学校、休み終わってますよね。勉強、ついていけるかな」
「良平先生が何とかしてくれるだろ。あの人は、赤点常連連中を立て直したことが何度もあるはずだ」
「……そう、なんですか」
「あぁ。だから安心して休め」
「……はい」
 弱々しく頷く美玖ともう少しだけ話をして、病室を出た。

 目覚めてから二週間。間もなく保は退院許可はおりた。ただ、「保は家に一人でいたら飯もまともに食わない、内緒でゲームしてもおかしくない」という、正芳の言葉であと二週間病院にいることになった。

 正直、退屈である。仕事の量をセーブさせられているわ、副業も少ししか出来ないのだ。今までであれば、その退屈な時間に買い物と休憩、それからゲームをしていた。……ゲームの時間が大半を占めていた。それを禁止させられているのだ。
 正直しんどい。ゲームが出来ないのがここまで辛いとは思わなかった。
 外出許可は簡単におりる。だが、買い物に行くにも誰かしらついてくるため、ストレスも溜まる。
「だったら、美玖ちゃんに新しいパソコン組んでもらえないかしら?」
 千沙が寂しげに微笑んでいた。
「あたしが最後にあげられるプレゼントになるから」


 退院直前になり、保はヘッドギアをつけてみることにした。
「保君!?」
「悠里先輩……問題ないです。少し、眩暈がしただけです」
「それがトラウマ……もしくは後遺症でしょうかね」
 少しばかり嬉々とした顔で医師が言う。
「あ、自分は医者ではないです。医師免許を持った研究者です。年配の先輩方からしか聞いたことがなかったので、初めて見るもんですから」
「お父様ったら、こんな方を寄越したのですか?」
「すみません。若手にやらせるわけにはいかんのですよ。後遺症を残すわけにはいきません」
 研究者は苦笑していた。

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