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初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

現実世界にて<意外な繋がり>


 仕事が終わって家に帰ると、良平は保からもらったメールを悠里に見せた。
「ゲームでもお茶が出来るのはいいです。セバスさんが紅茶を淹れてくださってますから、私とお母様がお茶を点てるというのも味ですわね」
 まさか、悠里と美玖の精神統一のためだとは言えなくなった。
「それに女子会をするのにもってこいですわ。美味しい和菓子をお抹茶でいただくというのも悪くないですし。そういう意味では別に四畳半の和室に拘らなくてもよろしいんじゃないでしょうか?」
 なるほど、と良平は思った。
「茶釜よりも茶せんと茶杓と柄杓、それからなつめが問題ですわ。茶せん、茶杓、柄杓は竹で作られたものがいいですし、棗は漆塗りのものがいいですわ。
 一度お祖母様にも入っていただいて、形状をしっかり見ていただいたほうが……」
「悠里、ちょっと待って」
 少しばかり暴走気味の妻を、良平は抱きしめた。
「そんなに大変なの?」
「お母様も真贋は確かですが、私では心許ないですもの。それでしたらお祖母様に色々見ていただいたほうが、いいものが出来そうです」
「あのね、悠里」
「? 良平さん、どうしました?」
 分かっていないであろう妻に、良平は一つため息をついた。
「それをしてしまうって事は『TabTapS!』に女帝が参戦するって事だよ?」
「……あ」
 どうやら今頃気付いたらしい。
「でも、いいものが作れるのですよ? 職人冥利に尽きると思いませんか? それに正芳君も袱紗ふくさというものを作るいい機会です。懐紙なども作る方法を皆さんが模索してしまえば、きっと上手くいきますわ」
 良平さんだって、いいものを作るために職人さんと話をしたいでしょう? そう言われてしまえば、返す言葉もなかった。


 良平は、ディスカスの連絡先だけを知らない。そして、名前も知らないのだ。
 知っているのは正芳と晴香だけだ。だから、晴香にディスカスへの連絡を頼み、他は悠里に頼む。
 存外あっさりと、了承がもらえ翌々週には北ヶ原へ全員で向かった。
「まず自己紹介しようか。どういう順番?」
 晴香が言うが、誰一人口を出さない、否出せない。それくらいのオーラを昌代が纏っている。
「年齢順でいいんじゃないですか? どっちにしても言いだしっぺは砂○け婆様だ」
 その言葉に正芳と良平と同い年くらいの男がふいていた。
「類は友を呼ぶとはよく言うたものじゃ。我は禰宜田 昌代。げーむとやらには一切関わっておらん」
 年齢順と言いながらもそのあとはそれぞれが適当に紹介していく。
山田 冬樹やまだ とうき。『ふゆき』じゃなくて、『とうき』と読む。一応今月からアパレルショップのバイヤーになった。二十年以上前のオフ会からジャッジとの付き合いはあるが、連絡先も名前も今まで知らなかった。逆に五年くらい前に知り合ったジャスと、八年前くらいに知り合ったレットとは連絡のやり取りがある」
「野々宮 保。フリーのSE。ディスとはいつもオフ会かゲームで会うから連絡先を教えていなかった」
「富岡 諒庵です。美術教師です」
「ひょっとして、清涼庵せいりょうあん縁の方か?」
「さすが、禰宜田の女帝様。よくお分かりで」
 別次元レベルで知り合いだった教頭と昌代に、良平は驚いた。
「もう、絵は描かぬのか?」
「気が向いたら、とだけ申し上げておきます」
 以前は数多の賞に輝いたという教頭だが、今は筆をもつこともほとんどない。

 美玖の自己紹介も終わり、茶道具の話になってく。
「やはり、禰宜田の女帝様に監修いただき最初は作ったほうがよさそうだ」
 その言葉で、とんでもないことになる。


 そして、茶道文化が「TabTapS!」に花開いた瞬間でもあった。

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