初心者がVRMMOをやります(仮)
名月クエスト 2
「カナリア。風魔法使えるか?」
「はいっ。ジャスティスさんにも『植物系モンスターを捕獲するなら、風がいい』って言われたので、頑張って習得してきました!」
どのあたりを狙うのが一番いいのかまで説明してくれたという。さすがジャスティス。ジャッジは心の中で感謝した。
「あと、おばばさんからお茶の原料になりそうなものがあったら持ってくるように言われました。他には、アサミタイも採って来るようにって」
着々と茶道の準備を進めているらしい。
「ミ・レディ。まずはどのようにするか、決めましょうか」
「はい」
相変わらず休息場でティーセットを広げる光景は変わらない。数人のプレイヤーがガン見していくが、それも慣れてしまった。
しかも、いくつかのクエストや、納品依頼、そして指名クエストで仲良くなったプレイヤーの中には、一緒に休んでいくものまで増えている。
「カナリアちゃんはこれから何のクエストするのー?」
数少ない女性プレイヤーで、尚更数が少なくなる庭師のエリが声をかけてきた。彼女は初期の頃からカナリアにアクセサリーを依頼しており、かなり仲がいい。妖精タイプで戦う時は刀を使う。
「『名月イベント』に来てみました」
気がつくとエリもスコーンと紅茶をセバスチャンから受け取っていた。
「カナリアちゃんもかー。って事はジャッジさんはカナリアちゃんの付き添いなわけですねー」
「悪いか」
「いいえー? カナリアちゃんは放っておくと余計なものが引っ付いちゃいますからねー。……指名クエスト大変みたいだけど、大丈夫ー?」
どうやらエリも新しいアクセサリーをカナリアに頼んだらしいが、カウンターで断られたらしい。
「目がしょぼしょぼするくらい、昨日もやって終わらせました。たくさん依頼をしていただけるのは嬉しいんですが、彫刻するだけでも結構時間がかかるので一日で作る個数を制限してるんです」
「……って事は手作業かー」
「? だってタブレットで作ったら性能落ちちゃいますよ?」
「相変わらずいい子だよねー。それなら仕方ないかー。ってかさ、カナリアちゃんの場合時間短縮魔法使うとどうなるのー?」
きょとんとした顔で間短縮魔法、というのが分からないのがありありと分かった。
「カナリアちゃん……まさかと思うけどー」
「そのまさかだろうな。おおよそのゲーム的発想をカナリアがしたことないぞ」
「ジャッジさん教えてあげなきゃー。恋人でしょー」
掲示板で話題になってからそんなに時間が経っていない。そのせいでかなり知り合い連中にもからかわれる羽目になっていた。
「いいか、そんなもの教えた日にゃ……」
ぽん、とジャスティスが袱紗用に仕上げた布の一部をカナリアに渡す。
ぴょこぴょこと動いたウサミミだけを残し、カナリアは作ることに没頭し始めた。
布を小さく切り、メリノーンから採取した羊毛をフェルト上にしたものに巻きつけたり、メンモドキを綿状のものを入れたりと、色々している。
「……前後撤回ー。教えないほうがいいー」
「だろ? 余計面倒な作業を行って大変になるのが目に見えてる」
しみじみと呟いたジャッジに、エリは頷きのんびりとくつろぎ始めた。
「出来ましたっ! 桜の花みたいにしてみました」
ちまちまと作業すること暫く。作ったものを見せてくれた。
「これっ。時間が開いたときにタブレットでもっと作ってー!」
「ふぇ? エンチャントつきませんよ?」
「そんなものこれに要らないのー 新年の飾りに使うのー。日本の美ー!!」
誰もいないところでの叫びでよかったとジャッジは思った。
「いいかもです! きっとメンバーの皆さんも喜んでくれるかもです!」
キラキラとした目で、カナリアがジャッジを見つめてきた。
「ディッチさんたちに一言断りを入れろよ」
「はいっ」
「その依頼、私が受けさせてー」
既に簡単な提携が生まれたことを、ジャッジはディッチたちに報告をいれた。
そのままエリとそのAIを入れたろくにんパーティとなり、進めていく。
「カナリアちゃんは何でこんなマイナーな『名月イベント』しようと思ったのー?」
「兎さんの毛皮と角、それからお肉です」
「肉!?」
「エアラビットのお肉は美味しいので、きっと白兎さんたちのも美味しいのかな、と。毛皮と角はアクセサリーの素材にならないかなぁと思って」
「……そっかー」
引きつった顔が、エリの感情を物語っていた。
「実質俺たちは二日間で終わらせる。そちらは?」
「毎日やってましたー。私にゃ『舞踏会イベント』はその前にある『庭師限定イベント』のほうがメインですからー」
「なるほどな」
「えぇ。私としてはこのイベントは外せないんですよねー。庭師が本業じゃなくて、建築士がメインですからー。
  これのために回復アイテム揃えてるようなもんですー。
  白兎と黒兎の角はかなり丈夫なので、薄く楯状にスライスして甲板とか、たな板に使うんですよー。それから巨大一角兎の角は建築資材としては最ッ高なんですよねー。
特にマリル諸島のNPCの家では『大黒柱』に重宝され……」
「ちょっと待て。エリ、つかぬ事を聞くが」
「なんでしょう?」
「日本建築は得意か?」
「ってか、それをやりたくて私はこのゲームやってるんですけどー? だからマリル諸島のクエストは頑張ってますしー」
「畳は?」
「イ草がないんですよー。で、ススキッスで作ってまーす」
だからこのイベントは外せないんですよー。と暢気にエリは言う。
どうやら亡くなった曽祖父が宮大工だったらしい。祖父の代から宮大工を辞めてしまったということと、弟子入りする場所を見つけられなかったという理由で独学で勉強していたらしい。
「……俺のほうで口利きしておく。でかい依頼がお前に行くかも」
「マジですかー? 期待しないで待ってまーす」
そして、それを伝えるなりクィーンとアントニーが食らいついたのは言うまでもなかった。
「はいっ。ジャスティスさんにも『植物系モンスターを捕獲するなら、風がいい』って言われたので、頑張って習得してきました!」
どのあたりを狙うのが一番いいのかまで説明してくれたという。さすがジャスティス。ジャッジは心の中で感謝した。
「あと、おばばさんからお茶の原料になりそうなものがあったら持ってくるように言われました。他には、アサミタイも採って来るようにって」
着々と茶道の準備を進めているらしい。
「ミ・レディ。まずはどのようにするか、決めましょうか」
「はい」
相変わらず休息場でティーセットを広げる光景は変わらない。数人のプレイヤーがガン見していくが、それも慣れてしまった。
しかも、いくつかのクエストや、納品依頼、そして指名クエストで仲良くなったプレイヤーの中には、一緒に休んでいくものまで増えている。
「カナリアちゃんはこれから何のクエストするのー?」
数少ない女性プレイヤーで、尚更数が少なくなる庭師のエリが声をかけてきた。彼女は初期の頃からカナリアにアクセサリーを依頼しており、かなり仲がいい。妖精タイプで戦う時は刀を使う。
「『名月イベント』に来てみました」
気がつくとエリもスコーンと紅茶をセバスチャンから受け取っていた。
「カナリアちゃんもかー。って事はジャッジさんはカナリアちゃんの付き添いなわけですねー」
「悪いか」
「いいえー? カナリアちゃんは放っておくと余計なものが引っ付いちゃいますからねー。……指名クエスト大変みたいだけど、大丈夫ー?」
どうやらエリも新しいアクセサリーをカナリアに頼んだらしいが、カウンターで断られたらしい。
「目がしょぼしょぼするくらい、昨日もやって終わらせました。たくさん依頼をしていただけるのは嬉しいんですが、彫刻するだけでも結構時間がかかるので一日で作る個数を制限してるんです」
「……って事は手作業かー」
「? だってタブレットで作ったら性能落ちちゃいますよ?」
「相変わらずいい子だよねー。それなら仕方ないかー。ってかさ、カナリアちゃんの場合時間短縮魔法使うとどうなるのー?」
きょとんとした顔で間短縮魔法、というのが分からないのがありありと分かった。
「カナリアちゃん……まさかと思うけどー」
「そのまさかだろうな。おおよそのゲーム的発想をカナリアがしたことないぞ」
「ジャッジさん教えてあげなきゃー。恋人でしょー」
掲示板で話題になってからそんなに時間が経っていない。そのせいでかなり知り合い連中にもからかわれる羽目になっていた。
「いいか、そんなもの教えた日にゃ……」
ぽん、とジャスティスが袱紗用に仕上げた布の一部をカナリアに渡す。
ぴょこぴょこと動いたウサミミだけを残し、カナリアは作ることに没頭し始めた。
布を小さく切り、メリノーンから採取した羊毛をフェルト上にしたものに巻きつけたり、メンモドキを綿状のものを入れたりと、色々している。
「……前後撤回ー。教えないほうがいいー」
「だろ? 余計面倒な作業を行って大変になるのが目に見えてる」
しみじみと呟いたジャッジに、エリは頷きのんびりとくつろぎ始めた。
「出来ましたっ! 桜の花みたいにしてみました」
ちまちまと作業すること暫く。作ったものを見せてくれた。
「これっ。時間が開いたときにタブレットでもっと作ってー!」
「ふぇ? エンチャントつきませんよ?」
「そんなものこれに要らないのー 新年の飾りに使うのー。日本の美ー!!」
誰もいないところでの叫びでよかったとジャッジは思った。
「いいかもです! きっとメンバーの皆さんも喜んでくれるかもです!」
キラキラとした目で、カナリアがジャッジを見つめてきた。
「ディッチさんたちに一言断りを入れろよ」
「はいっ」
「その依頼、私が受けさせてー」
既に簡単な提携が生まれたことを、ジャッジはディッチたちに報告をいれた。
そのままエリとそのAIを入れたろくにんパーティとなり、進めていく。
「カナリアちゃんは何でこんなマイナーな『名月イベント』しようと思ったのー?」
「兎さんの毛皮と角、それからお肉です」
「肉!?」
「エアラビットのお肉は美味しいので、きっと白兎さんたちのも美味しいのかな、と。毛皮と角はアクセサリーの素材にならないかなぁと思って」
「……そっかー」
引きつった顔が、エリの感情を物語っていた。
「実質俺たちは二日間で終わらせる。そちらは?」
「毎日やってましたー。私にゃ『舞踏会イベント』はその前にある『庭師限定イベント』のほうがメインですからー」
「なるほどな」
「えぇ。私としてはこのイベントは外せないんですよねー。庭師が本業じゃなくて、建築士がメインですからー。
  これのために回復アイテム揃えてるようなもんですー。
  白兎と黒兎の角はかなり丈夫なので、薄く楯状にスライスして甲板とか、たな板に使うんですよー。それから巨大一角兎の角は建築資材としては最ッ高なんですよねー。
特にマリル諸島のNPCの家では『大黒柱』に重宝され……」
「ちょっと待て。エリ、つかぬ事を聞くが」
「なんでしょう?」
「日本建築は得意か?」
「ってか、それをやりたくて私はこのゲームやってるんですけどー? だからマリル諸島のクエストは頑張ってますしー」
「畳は?」
「イ草がないんですよー。で、ススキッスで作ってまーす」
だからこのイベントは外せないんですよー。と暢気にエリは言う。
どうやら亡くなった曽祖父が宮大工だったらしい。祖父の代から宮大工を辞めてしまったということと、弟子入りする場所を見つけられなかったという理由で独学で勉強していたらしい。
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