初心者がVRMMOをやります(仮)
伝承
一角兎は神に近い存在。
それが、カナリアにも分かるほどに神々しかった。
レイド戦に参加していたメンバーも一瞬だけ動きが止まった。
「ひゃぁぁぁ!!」
「カナリア!!」
羽が生えている一角兎の中でも一番大きな兎が、カナリアを抱きかかえふわりと上へ飛んだ。
それが合図のように、全ての兎たちが消え始めた。
「ふざけんなっ!」
慌てて全員が兎を追おうとするものの、あっという間にいなくなってしまった。
「『深窓の宴』と『神社仏閣を愛する会』の数人で急いで解体するように。残りはこのあとの対策を考える。……ジャッジ、お前は頭を冷やせ!」
ディッチがそう言い、ジャッジ以外がすぐさま取り掛かった。
また、守れなかった。目の前でカナリアがいなくなる。二度とそんなことはしないと誓ったはずなのに、またやってしまった。
何が、数多のレイド戦を勝ち続けてきた傭兵だ。大切な存在を守れずに何を抜かすか。
ぎゅっと握り締めた拳から、血が流れていた。
そんな風になったジャッジを暫く放っておくことにして、ディッチたちは次の作戦会議に移っていた。
セバスチャンからも「ミ・レディに危険は迫っていないようです」という回答をもらえたからだろう。自立思考型AIであるセバスチャンは、あっさりと作戦会議に回れるのだ。
「さてと、元々カナリア君を兎コスにした理由ってなんだっけ?」
「島のNPCさんたちがー、カナリアちゃんを見てー、『一角兎様が人の姿になられた』って拝んだからですー」
エリものほほんとして答えている。
「他にもらっている情報は?」
「昔から、兎は月にすんでいるという伝承がマリル諸島には残っています。元は『娘香』という存在が月にいたとされており、いつの間にかその『娘香』がいなくなってしまったために、それを兎たちが探しているのだというのがあります」
カーティスが澱みなく教えてくる。
ヒントが少なすぎると思ったディッチは、そういうものが詳しいアントニーに教えを乞うた。
『それは中国神話じゃないかな? 嫦娥伝説が残っているはずだし。西王母からもらった不老不死の薬を飲んで月にのぼっていったというのがある。確か……その話では嫦娥はヒキガエルになったとされ、そこから兎に転じたはずだよ。ちなみに、中国では不老不死の薬を兎が手杵で粉にしているとも言われているから』
「ありがとうございます」
『で、そんなことを聞いてくるなんて、なんかあったかい? クィーンさんには内緒にしておく……』
「あの方に内緒は無理ですよ」
『ははは。ばれているか。今傍にいるんだけどね』
「!!」
それをスピーカーモードにして聞いていた、「カエルム」のメンバーが凍りついた。だが、聞いてしまった以上、言わないでおくわけにはいかない。
「カナリア君が、羽の生えた巨大一角兎に攫われました。こちらに『娘香』という存在が月にいて、いなくなったために探しているんだという言い伝えがあるそうです」
『うーん。あの子はそういう運命なのかもしれないねぇ。それが本当だとしたら、カナリアさんには危害は加えないと思うよ? 問題はジャッジ君かな』
「既に、荒れてますが」
『やっぱりか。さっさと探さないと駄目だね』
だからこそ、教えを乞うているわけだが。
『こっちとしても合流したいが、中々に鍛えがいのある青年たちばかりだ。手が離せなくてね』
一体何人辛くて逃げ出して、修行が重くなっているんだか。考えただけでディッチは頭が痛くなった。
「こちらでもう少し伝承を調べて、また分からなくなりましたら連絡させていただきます」
『そうしてくれ。あとはパパンさんたちに連絡をクィーンさんが入れたから、手伝いに行くと思う』
「……ありがとうございます」
予想以上におおごとになってしまったと、ディッチはため息をついた。
それが、カナリアにも分かるほどに神々しかった。
レイド戦に参加していたメンバーも一瞬だけ動きが止まった。
「ひゃぁぁぁ!!」
「カナリア!!」
羽が生えている一角兎の中でも一番大きな兎が、カナリアを抱きかかえふわりと上へ飛んだ。
それが合図のように、全ての兎たちが消え始めた。
「ふざけんなっ!」
慌てて全員が兎を追おうとするものの、あっという間にいなくなってしまった。
「『深窓の宴』と『神社仏閣を愛する会』の数人で急いで解体するように。残りはこのあとの対策を考える。……ジャッジ、お前は頭を冷やせ!」
ディッチがそう言い、ジャッジ以外がすぐさま取り掛かった。
また、守れなかった。目の前でカナリアがいなくなる。二度とそんなことはしないと誓ったはずなのに、またやってしまった。
何が、数多のレイド戦を勝ち続けてきた傭兵だ。大切な存在を守れずに何を抜かすか。
ぎゅっと握り締めた拳から、血が流れていた。
そんな風になったジャッジを暫く放っておくことにして、ディッチたちは次の作戦会議に移っていた。
セバスチャンからも「ミ・レディに危険は迫っていないようです」という回答をもらえたからだろう。自立思考型AIであるセバスチャンは、あっさりと作戦会議に回れるのだ。
「さてと、元々カナリア君を兎コスにした理由ってなんだっけ?」
「島のNPCさんたちがー、カナリアちゃんを見てー、『一角兎様が人の姿になられた』って拝んだからですー」
エリものほほんとして答えている。
「他にもらっている情報は?」
「昔から、兎は月にすんでいるという伝承がマリル諸島には残っています。元は『娘香』という存在が月にいたとされており、いつの間にかその『娘香』がいなくなってしまったために、それを兎たちが探しているのだというのがあります」
カーティスが澱みなく教えてくる。
ヒントが少なすぎると思ったディッチは、そういうものが詳しいアントニーに教えを乞うた。
『それは中国神話じゃないかな? 嫦娥伝説が残っているはずだし。西王母からもらった不老不死の薬を飲んで月にのぼっていったというのがある。確か……その話では嫦娥はヒキガエルになったとされ、そこから兎に転じたはずだよ。ちなみに、中国では不老不死の薬を兎が手杵で粉にしているとも言われているから』
「ありがとうございます」
『で、そんなことを聞いてくるなんて、なんかあったかい? クィーンさんには内緒にしておく……』
「あの方に内緒は無理ですよ」
『ははは。ばれているか。今傍にいるんだけどね』
「!!」
それをスピーカーモードにして聞いていた、「カエルム」のメンバーが凍りついた。だが、聞いてしまった以上、言わないでおくわけにはいかない。
「カナリア君が、羽の生えた巨大一角兎に攫われました。こちらに『娘香』という存在が月にいて、いなくなったために探しているんだという言い伝えがあるそうです」
『うーん。あの子はそういう運命なのかもしれないねぇ。それが本当だとしたら、カナリアさんには危害は加えないと思うよ? 問題はジャッジ君かな』
「既に、荒れてますが」
『やっぱりか。さっさと探さないと駄目だね』
だからこそ、教えを乞うているわけだが。
『こっちとしても合流したいが、中々に鍛えがいのある青年たちばかりだ。手が離せなくてね』
一体何人辛くて逃げ出して、修行が重くなっているんだか。考えただけでディッチは頭が痛くなった。
「こちらでもう少し伝承を調べて、また分からなくなりましたら連絡させていただきます」
『そうしてくれ。あとはパパンさんたちに連絡をクィーンさんが入れたから、手伝いに行くと思う』
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