初心者がVRMMOをやります(仮)
兎の行き先
巨大一角兎の毛皮で服を作っていたのは、カナリアだけではない。カナリアと他のメンバーの違いをまずあげてみることにした。
「まずは二日目からあの角のアクセサリーをつけていた」
ジャスティスがすぐに言う。
「あとは、一度もカナリア君だけ攻撃に回っていない」
ディッチも言う。
「確かに回っていませんね。攻撃どころか補助魔法はこちらにいくつかかけただけ」
カーティスも思い出して言う。
本当にそれくらいしか違いはない。
「あとはー、カナリアちゃんは、小さな破片でもアクセサリーにしたりするんですよねー」
「!!」
エリの言葉に全員が盲点をつかれた気がした。
「神社仏閣を愛する会」にとって、毛皮と角だけがあればよかった。正直、他の部分は捨てていた。そして、スカーレットから見れば錬金素材である「目玉」「血清」「肉」だけがあればいいと思っていた節がある。
カナリアは、どんなモンスターでも「どう使うか」というものを考えていた。その違いはあるかもしれない。
「それ、ジャッジに言うなよ」
今の状況で言ってしまえば、確実に暴走する。暴走を止めるためには「確実に助けられる」状況でジャッジに情報を伝えるのが大事だ。
そんな状況にディッチは思わず頭を抱えた。
GMコールをしてみたが、今回の一件は「システムエラーではありません」という回答が戻ってきた。
つまり、イベントの一環なのだ。たとえクレームとして入れたとしても対応されないだろう。
「くくくくく」
そう、これはイベントだ。ならばどんな手段を用いても敵を排除してカナリアを救い出せばいいのだ。
狂気じみたジャッジの笑みに、外にいた「深窓の宴」と「神社仏閣を愛する会」のメンバーは恐怖を覚えていた。
「ディッチさん、何か情報はつかめましたか?」
いつもの表情でジャッジはディッチに詰め寄る。
「まだだ」
「そうですか。何か分かったら連絡ください」
「ジャッジは?」
「俺は俺なりに」
ジャッジは必死に己の狂気を抑えていた。
それに気付かぬほど、ジャスティスは愚かではない。出て行ったジャッジが通常に近い状況に見えたディッチたちが安心しているなか、ジャスティス一人が不安と戦っていた。
あのままでは昔のように相手を誰彼構わず壊してしまう。そうさせないためには、ジャスティスが一緒にいるしかない。
「先生。俺、ジャッジについてますわ。でないと、昔みたいになっちまうんで」
「……お前がそう言うなら、そうだろうな。……頼む」
「はい」
情報戦から下がるのは、ジャスティスの役目だ。
「何でついてきた?」
「お前の狂気が分からないほど付き合いは短くないつもりだが」
「おかしいなぁ。皆騙されたと思ったのに」
いたって普通の顔、普通の口調でジャッジが言う。こういう時こそやばいというのは、付き合いの長いジャスティス以外は知らないだろう。
「騙されてたぞ。俺以外はな。高校以来俺がどれくらいお前の暴走と付き合ってると思ってるんだ」
「今の彼女さんよりも長いよな」
「黙れ」
くつくつとジャッジが笑っている。同じような笑い方でも、狂気をはらんでいる時は何かが違うのだ。
「……最近なくなったと思ってたんだがな」
「俺も思ってた。……悪い。前よりも酷いかもしれない。カナリアが消えたときの無力さをさ、一瞬で思い出した」
あのあとから、少しずつ狂気に蝕まれているのは、知っている。カナリアが復帰してそばで笑っていることで、それが解消されているものだと思っていた。
「今でも時々、夢を見るんだよ。歪んで消えていくカナリアと、そのあと精神世界で会ったカナリアと、病院で見た美玖を。毎回、ああなる前に助けられたんじゃないかって、夢でうなされる」
「お前があの状況で手を出していたら、ただの犯罪だ」
「分かってるんだけどさぁ」
ふらふらと歩きながら、マリル諸島を見て回る。明け方の兎を見たNPCはかなり多く、どちらに飛んで行ったかも教えてくれていた。
総括すると、カナリアを抱えた兎はマリル諸島の西側に行ったらしい。
「……なぁ、ジャス」
「どうした?」
「マリル諸島の西側って、海だけじゃなかったか?」
「海、のはずだな」
タブレットに表示される正確な地図を見ながら、ジャスティスは答えた。
球状の惑星とされているが、マリル諸島から西は、地球で言う「太平洋」のように広い海があるだけなのだ。
マリル諸島をずっと行けば、セイレン諸島に着くという計算になっている。
それをディッチに伝えると、ディッチたちも調べていたらしく、同じ結論に至っていた
「まずは二日目からあの角のアクセサリーをつけていた」
ジャスティスがすぐに言う。
「あとは、一度もカナリア君だけ攻撃に回っていない」
ディッチも言う。
「確かに回っていませんね。攻撃どころか補助魔法はこちらにいくつかかけただけ」
カーティスも思い出して言う。
本当にそれくらいしか違いはない。
「あとはー、カナリアちゃんは、小さな破片でもアクセサリーにしたりするんですよねー」
「!!」
エリの言葉に全員が盲点をつかれた気がした。
「神社仏閣を愛する会」にとって、毛皮と角だけがあればよかった。正直、他の部分は捨てていた。そして、スカーレットから見れば錬金素材である「目玉」「血清」「肉」だけがあればいいと思っていた節がある。
カナリアは、どんなモンスターでも「どう使うか」というものを考えていた。その違いはあるかもしれない。
「それ、ジャッジに言うなよ」
今の状況で言ってしまえば、確実に暴走する。暴走を止めるためには「確実に助けられる」状況でジャッジに情報を伝えるのが大事だ。
そんな状況にディッチは思わず頭を抱えた。
GMコールをしてみたが、今回の一件は「システムエラーではありません」という回答が戻ってきた。
つまり、イベントの一環なのだ。たとえクレームとして入れたとしても対応されないだろう。
「くくくくく」
そう、これはイベントだ。ならばどんな手段を用いても敵を排除してカナリアを救い出せばいいのだ。
狂気じみたジャッジの笑みに、外にいた「深窓の宴」と「神社仏閣を愛する会」のメンバーは恐怖を覚えていた。
「ディッチさん、何か情報はつかめましたか?」
いつもの表情でジャッジはディッチに詰め寄る。
「まだだ」
「そうですか。何か分かったら連絡ください」
「ジャッジは?」
「俺は俺なりに」
ジャッジは必死に己の狂気を抑えていた。
それに気付かぬほど、ジャスティスは愚かではない。出て行ったジャッジが通常に近い状況に見えたディッチたちが安心しているなか、ジャスティス一人が不安と戦っていた。
あのままでは昔のように相手を誰彼構わず壊してしまう。そうさせないためには、ジャスティスが一緒にいるしかない。
「先生。俺、ジャッジについてますわ。でないと、昔みたいになっちまうんで」
「……お前がそう言うなら、そうだろうな。……頼む」
「はい」
情報戦から下がるのは、ジャスティスの役目だ。
「何でついてきた?」
「お前の狂気が分からないほど付き合いは短くないつもりだが」
「おかしいなぁ。皆騙されたと思ったのに」
いたって普通の顔、普通の口調でジャッジが言う。こういう時こそやばいというのは、付き合いの長いジャスティス以外は知らないだろう。
「騙されてたぞ。俺以外はな。高校以来俺がどれくらいお前の暴走と付き合ってると思ってるんだ」
「今の彼女さんよりも長いよな」
「黙れ」
くつくつとジャッジが笑っている。同じような笑い方でも、狂気をはらんでいる時は何かが違うのだ。
「……最近なくなったと思ってたんだがな」
「俺も思ってた。……悪い。前よりも酷いかもしれない。カナリアが消えたときの無力さをさ、一瞬で思い出した」
あのあとから、少しずつ狂気に蝕まれているのは、知っている。カナリアが復帰してそばで笑っていることで、それが解消されているものだと思っていた。
「今でも時々、夢を見るんだよ。歪んで消えていくカナリアと、そのあと精神世界で会ったカナリアと、病院で見た美玖を。毎回、ああなる前に助けられたんじゃないかって、夢でうなされる」
「お前があの状況で手を出していたら、ただの犯罪だ」
「分かってるんだけどさぁ」
ふらふらと歩きながら、マリル諸島を見て回る。明け方の兎を見たNPCはかなり多く、どちらに飛んで行ったかも教えてくれていた。
総括すると、カナリアを抱えた兎はマリル諸島の西側に行ったらしい。
「……なぁ、ジャス」
「どうした?」
「マリル諸島の西側って、海だけじゃなかったか?」
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