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初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

乱入者


「確かに、私はこのゲームを選んだ理由は、マイナーで出来れば知り合いと出会わない月額料金のかからないものだったからです」
「そうであろう? なれば汝はここで満ち足りるはず」
「そうですね。始めたばっかりだったら、それで十分だったと思います」
「では、今は違うと?」
「はい。私はゲームを始めてジャッジさんと出会って、それからたくさんの人達と出会いました。中には私を排除しようとする人たちもいましたが、助けてくれる人のほうが圧倒的に多かったんです。
 だから、このゲームを続けられました」
 逆を言えば、ジャッジたちに会わなければ、このゲームを続けられた自信がない。そうなれば、娘香の巫女にも選ばれなかっただろう。
「兎さんたちが脱皮できないのは大変だと思います。でも、私はこの島だけで満足できると思えないんです」
 それくらい自分の欲が深くなっている。
「ここを出る、ということは一角兎たちを見捨てることになるぞ?」
 かぐやの言葉に、カナリアは返せる言葉がない。

「んなわきゃねぇだろうが。ふざけんなっ」
「! ジャッジさん!!」
 どうやって来たのか分からないが、ジャッジが乱入してきた。


「いつ、から聞いてたんですか?」
「カナリアがこのゲームを選んだ理由あたりからかな?」
 ジャッジの代わりにジャスティスが答えた。
「とりあえず、無駄な殺生はしたくないんで、カナリアを返してもらえませんか?」
「彼の者は娘香の巫女となる運命じゃ」
「……ふざけんな」
 現実世界でもゲームの世界でもジャッジはよくクィーンにその言葉を吐くが、何かが違う感じがした。
「皆さん、少し離れてください」
 守ろうとするかのように兎たちがカナリアの周りに集まる。おそらくだが、ジャッジはそれも気に入らないはずだ。
「ジャッジさんっ!」
 ジャッジの傍に行こうとするカナリアを、ここに連れて来た一角兎がすっぽりと腕の中にしまうように抱きかかえた。
「何が『娘香の巫女』だ。ふざけんな。んなもん俺の知ったことじゃない」
 まずい。ジャスティスに目を向けるも、止めることさえ敵わなくなっているようだった。
「兎がいなくなっちまえば、そんなものにカナリアはならなくて済むんだろ? だったら全部狩ってやるよ!」
 その言葉と共にジャッジは二振りの刀を取り出した。
「なっ!? 巫女以外は武器を出せぬはずじゃ!!」
「俺らが来たことで、それは崩れてんだよ」
 何をしたのかは分からないが、ジャッジはかぐやたちの思惑からずれているようだった。
「お願いですっ。皆さんもジャッジさんも助けたいんですっ。だから離してください」
――あなたが巫女になられるのから――
「それはっ……」
 ジャッジと一緒にいれなくなるのがこんなに辛いことだとは思わなかった。
「カナリア! とりあえず巫女になる選択をしてくれ!! でもってこっちにきてくれ!」
「ジャス、ふざけんな」
 既にジャッジは巫女になる選択をさせるジャスティスすら敵に見えるようだ。

 巫女になる選択をすれば、ジャッジとゲームで会えなくなるんだろうか。他の「カエルム」のメンバーとも会えなくなるのか。そしてせっかく出来た女友達のエリとも会えなくなる? そう考えただけで悲しかった。
「いや、なんです。私。欲張りだから。ジャッジさんが傷つくの見たくないし、せっかく出来た友達をこんなことで失いたくないし、エリさんが必死になって集めてた巨大一角兎の角も欲しいし、皆さんが傷つくのも嫌だし……」
 選べない。それが辛い。

 カナリアの瞳から涙が溢れていた。

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