初心者がVRMMOをやります(仮)
巫女の守人(もりびと)
溢れでた涙は、抱きかかえていた一角兎の腕にかかり、そして兎たちとこぼれていく。
淡い光が周囲を照らす。
巨大一角兎は愛くるしいぬいぐるみとなり、傍にいた兎たちは白兎は黒兎へ、黒兎は巨大一角兎へと変貌していく。
――巫女の涙――
――誰が泣かせた?――
――あやつらか?――
――否――
――では誰ぞ?――
――かぐや、月詠――
「何じゃ?」
――誰が巫女を泣かせた?――
「分からぬ。誰が巫女を泣かせた?」
――かぐやと月詠も分からぬのか――
――困ったぞ――
兎たちの会話をよそに、カナリアはぬいぐるみになった一角兎を抱きしめて、ジャッジのそばへ行こうとする。
――巫女、あやつらは危険――
「ジャッジさんは危険じゃない。ずっと私を守ってくれてる人」
――巫女を守る者?――
――それは我らなり――
「この場は清き場所なり。血で汚すは認められぬ!」
かぐやが何かを唱えると、ジャッジたちの足を絡め取るように蔦が伸びた。
「なっ!?」
しかし、それもすぐにタブレットに触れたジャッジによって解除される。
「ふざけんなって言ってんだろ? それとも本当にここをお前らの血の海にしてやろうか?」
「だ、駄目です!!」
カナリアは必死になって叫び、今にもかぐやたちに襲い掛かろうとしていたジャッジに抱きついた。
「駄目です。ジャッジさん。ジャッジさんが傷つきます」
「巫女、ひどい。我を放り投げた」
誰かが呟いていたが、カナリアは真っ直ぐジャッジを見つめた。
「今の状態で剣を振るっても、ジャッジさんが傷つくだけです。そんなジャッジさん、見たくないです」
「カナリア?」
「ジャッジさんは優しい人です。私を何度も助けてくれました。だから、今は剣を収めてください」
「カナリアッ!!」
ジャッジがもの凄い力でカナリアを抱きしめ返してきた。
「ジャッジさんっ! 苦しいです」
「無事で、よかった」
その言葉だけで、カナリアは嬉しくなる。
「私は無事です。怪我もしてません。大丈夫です」
だから、苦しまないで。そう言う前にカナリアに変化が起きた。
カナリアの身体を光が包み込む。
そして、その光にジャッジとジャスティスは弾かれた。
「カナリアッ!!」
「落ち着くがよい」
月詠と名乗った男が静かに言う。
「『月の島』が『娘香の巫女』を選んだのだ」
その言葉どおり、カナリアの周りにまた兎たちが集まる。
「島は巫女を選び、巫女は己の生き様を選ぶ」
「つまり?」
今にも斬りかかりそうなジャッジを抑えつつ、ジャスティスは月詠に訊ねた。
「巫女はこの島に来るものを選び、そして己の足でこの島と他を行き来する」
出来ればこの島に留まって欲しかった、その言葉を月詠の口調から読み取った。
「しかし、汝らはどのようにしてここに来た? 巫女を選ぶ段階に入った『月の島』は男子どころか、巫女以外は誰も入れないはずだが」
「……こいつのチートスキル。ぶっちゃけ言うとクラッキングに近いな。運営会社もちょっと慌てふためいてたみたいだ」
「何があった?」
「俺も分からん。運営会社となんかやり取りをしたみたいだ。犯罪者にならないようにどうするか話し合ったみたいだぞ」
「何を話しあったのであろうな」
「さてね、俺も知らん。
……こいつも根っからのゲーマーだから、普段はこんなことをしないんだが……」
カナリアが危険になったことであっさり解禁してしまうあたり、かなり危ない。それはカナリアが昏睡状態に陥った時に、気付いてはいた。
まさか、ここまで酷くなっているとは思わなかったが。
「二度とせぬなら、我らも大人しくしておるよ」
「あんたらも自立思考型か」
「特定いべんとに関わる者たちは全て『自立思考型』だ。でなくば、不測の事態に対応できぬ。
それにしても、汝らは何か特定いべんとを達成したのか?」
「……いんや。俺たちがこれを始めたときには、限定イベントは全てクリアされてるってことになってたな。カナリアのAIが『自立思考型』なんだ」
「珍しいこともある」
「カナリアだからな」
もう、全てをそれで片付けてしまいたい。カナリアと関わってから、通常ではあり得ない事柄に巻き込まれすぎた。
「ほれ、ジャッジとやら。もう、巫女に近づいても大丈夫だ」
「ふざけんなっ!」
こちらを蹴飛ばす勢いでカナリアの方に向かっていくジャッジを、ジャスティスと月詠は生温かい視線で見送った。
「巫女が大変そうであるな」
「カナリア限定だぞ」
「ふむ。なれば『巫女の守人』という称号でも与えようか」
「……そう簡単に称号を与えてもいいのか?」
「巫女に関しては、我らが決めれるのでな」
しれっと言う月詠にジャスティスはため息をついた。
淡い光が周囲を照らす。
巨大一角兎は愛くるしいぬいぐるみとなり、傍にいた兎たちは白兎は黒兎へ、黒兎は巨大一角兎へと変貌していく。
――巫女の涙――
――誰が泣かせた?――
――あやつらか?――
――否――
――では誰ぞ?――
――かぐや、月詠――
「何じゃ?」
――誰が巫女を泣かせた?――
「分からぬ。誰が巫女を泣かせた?」
――かぐやと月詠も分からぬのか――
――困ったぞ――
兎たちの会話をよそに、カナリアはぬいぐるみになった一角兎を抱きしめて、ジャッジのそばへ行こうとする。
――巫女、あやつらは危険――
「ジャッジさんは危険じゃない。ずっと私を守ってくれてる人」
――巫女を守る者?――
――それは我らなり――
「この場は清き場所なり。血で汚すは認められぬ!」
かぐやが何かを唱えると、ジャッジたちの足を絡め取るように蔦が伸びた。
「なっ!?」
しかし、それもすぐにタブレットに触れたジャッジによって解除される。
「ふざけんなって言ってんだろ? それとも本当にここをお前らの血の海にしてやろうか?」
「だ、駄目です!!」
カナリアは必死になって叫び、今にもかぐやたちに襲い掛かろうとしていたジャッジに抱きついた。
「駄目です。ジャッジさん。ジャッジさんが傷つきます」
「巫女、ひどい。我を放り投げた」
誰かが呟いていたが、カナリアは真っ直ぐジャッジを見つめた。
「今の状態で剣を振るっても、ジャッジさんが傷つくだけです。そんなジャッジさん、見たくないです」
「カナリア?」
「ジャッジさんは優しい人です。私を何度も助けてくれました。だから、今は剣を収めてください」
「カナリアッ!!」
ジャッジがもの凄い力でカナリアを抱きしめ返してきた。
「ジャッジさんっ! 苦しいです」
「無事で、よかった」
その言葉だけで、カナリアは嬉しくなる。
「私は無事です。怪我もしてません。大丈夫です」
だから、苦しまないで。そう言う前にカナリアに変化が起きた。
カナリアの身体を光が包み込む。
そして、その光にジャッジとジャスティスは弾かれた。
「カナリアッ!!」
「落ち着くがよい」
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その言葉どおり、カナリアの周りにまた兎たちが集まる。
「島は巫女を選び、巫女は己の生き様を選ぶ」
「つまり?」
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出来ればこの島に留まって欲しかった、その言葉を月詠の口調から読み取った。
「しかし、汝らはどのようにしてここに来た? 巫女を選ぶ段階に入った『月の島』は男子どころか、巫女以外は誰も入れないはずだが」
「……こいつのチートスキル。ぶっちゃけ言うとクラッキングに近いな。運営会社もちょっと慌てふためいてたみたいだ」
「何があった?」
「俺も分からん。運営会社となんかやり取りをしたみたいだ。犯罪者にならないようにどうするか話し合ったみたいだぞ」
「何を話しあったのであろうな」
「さてね、俺も知らん。
……こいつも根っからのゲーマーだから、普段はこんなことをしないんだが……」
カナリアが危険になったことであっさり解禁してしまうあたり、かなり危ない。それはカナリアが昏睡状態に陥った時に、気付いてはいた。
まさか、ここまで酷くなっているとは思わなかったが。
「二度とせぬなら、我らも大人しくしておるよ」
「あんたらも自立思考型か」
「特定いべんとに関わる者たちは全て『自立思考型』だ。でなくば、不測の事態に対応できぬ。
それにしても、汝らは何か特定いべんとを達成したのか?」
「……いんや。俺たちがこれを始めたときには、限定イベントは全てクリアされてるってことになってたな。カナリアのAIが『自立思考型』なんだ」
「珍しいこともある」
「カナリアだからな」
もう、全てをそれで片付けてしまいたい。カナリアと関わってから、通常ではあり得ない事柄に巻き込まれすぎた。
「ほれ、ジャッジとやら。もう、巫女に近づいても大丈夫だ」
「ふざけんなっ!」
こちらを蹴飛ばす勢いでカナリアの方に向かっていくジャッジを、ジャスティスと月詠は生温かい視線で見送った。
「巫女が大変そうであるな」
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