初心者がVRMMOをやります(仮)
クエストクリア!
カナリアは服装がいきなり変わって驚いた。
思わず頭を触るものの、ウサミミもなくなっている。兎コスも、真っ白な十二単になっているのだ。そして、チョーカーもビーズのように使っていた「一角兎の角」が勾玉状になり、チョーカーというにはどうなんだという長さになっている。
――巫女だ――
――娘香の巫女だ――
――巫女よ、我らに祝福を――
「ふえ?」
訳も分からずにいる間にも、カナリアの手から淡い光が出て、兎たちを囲んでいく。
「カナリア」
「ジャッジさん」
カナリアの手から光が納まるころ、ジャッジがカナリアを抱き上げた。
「帰ろう」
「……はい。でも歩けます」
「服が汚れる。それに、暫くこうしていたい」
「はい」
その言葉に、カナリアはジャッジの首に腕を回し、胸元に顔をうずめた。
終わったんだ。帰れるんだ。そう思うとほっとする。
「巫女。我を連れて行け。我が巫女の足となる」
そう言ってぴょこぴょことやってくるのは、耳の垂れた羽のある一角兎……ではなくそれによく似た愛くるしい兎のぬいぐるみ。
「ぬいぐるみがしゃべった!?」
「酷い。巫女は酷い。我を放り投げるし、驚くし」
しかも泣く動きまでしてくる。
「娘香の巫女よ、それは連れて行け。毎日『ろぐいん』とやらをしたらこちらに一度は着て欲しい。これは普通の飛行型騎獣と違うて、一度召喚してしまえば世界一周くらい軽いものじゃ。これでこの島に来てもらえればよい」
「かぐやさん。それで大丈夫なんですか?」
「仕方あるまいて。島が巫女を選んだことじゃ。島もそれを了承したと取るしかあるまい」
なんならいても構わぬぞ。そうかぐやが言った瞬間、ジャッジからもの凄い殺気がした。
「戻ります。そしてここに来ます。っていうか、他のところみたいに繋げられないんですか?」
拠点に繋げば、来るのも楽だし兎といつでも遊べる。
「……ふむ。月詠よ」
「出来なくはないぞ。守人が少しばかり、巫女のたぶれっとでいじってもらう必要はあるが。ただし、一箇所が限度であろうな」
「守人?」
「月詠、妾に断りなく称号を与えるでない」
「この島を壊されたくなくば、諦めよ。かぐや」
誰がこの島を壊すのかと、カナリアは思ったが、さり気なくジャスティスがジャッジを指差しているのを見て、思わずジャッジを見つめた。
「カナリアをここに縛り付けるなら、俺はここを壊すよ?」
にっこりと微笑んでジャッジが言う。
「壊さないでください。ここは兎さんたちの棲家です。そしてここで兎さんたちは脱皮するんだそうです」
脱皮した時に出る皮や角を使えば、無闇に狩る必要はなくなる。それに「神社仏閣を愛する会」でも柱になる角を気軽に手に入れられる。
「兎が脱皮って……シュールだな」
「白兎が脱皮して黒兎になる。黒兎は数度脱皮を繰り返して一角兎になる。一角兎も何度も繰り返して、羽が生える」
脱皮に耐えられず死んで行く兎もいるという。月詠が兎たちの生態を二人に伝えていた。
「ここに入場制限をかけるか。その上で俺たちの拠点に繋げばいい」
その言葉にカナリアはジャッジを再度見つめた。
「カナリア、タブレット出して」
「は、はいっ」
「ここに入れる制限は?」
「出来ればあまり入って欲しくないがの」
「かぐや、あんたに聞いてない。カナリアとしては?」
タッチしながらジャッジが当然のように言う。
「私も、よく分かりません。ただ、エリさんたちはあの島のクエストをこなすためにも巨大一角兎の角が必要だって言ってましたよね?」
「だと、『神社仏閣を愛する会』は入場許可……と。あとは俺らのギルドだけを許可にしておけば暫くは大丈夫だろ。余計なことをしたらあの砂○け婆様が説教をかますくらいだ」
何をどう触っているのか分からないが、あっという間に「初心者の町」にあるカナリアの拠点と「月の島」が繋がってしまった。
「ジャッジさん。凄いです!!」
「ゲームやってて、こういうのはあんまりやりたくないんだがな」
「おまっ! カナリア助けるためにクラッキングに近いことをやって運営に止められたくせに言うなっ! しかもグリフォンの飛ぶ時間まで一時的に変更かけやがるし!」
ジャスティスがすさまじい勢いで突っ込んでいた。
「そんなこと、できるんですか?」
「やって出来なくないけど、レッドカードもの。二度とゲームが出来なくなる」
「えぇぇぇ!? ジャッジさんが出来なくなると困ります!」
「大丈夫。今回のプログラムは俺が組んだやつじゃないし。どちらかと言えば何かあったときに運営側で介入できるプログラムを貸してもらった感じだから」
にっこり微笑んでジャッジが言う。そんなものを借りれるくらい凄い人なのかとカナリアは若干勘違いをしていた。
「……カナリア。頼む。こいつの手綱握っててくれ」
意味が分からないが、カナリアはとりあえず頷いておいた。
「我から言えるのは、まだ達成されておらぬ『限定くえすと』はあと四つ。それに巫女は近づかぬことだな」
「……そんなにあんのか? 俺らが登録した時に全部クリアしたって話だったぞ」
ジャスティスが不思議そうに言う。
「うむ。四つというのは我が知る限りの話だ。我らも詳しい数は知らぬ」
「……いい加減だな」
「全てが分かってはつまらぬであろうというのが、言い分らしいぞ。巫女は守人のためにも危険なところには近づかぬことだな」
「気をつけます」
「巫女よ。我が皆を乗せていく。マリルまで戻るぞ」
先程までぬいぐるみ状態だった兎があっという間に大きくなった。
「巫女が一人の時は我が抱きかか……いや、背中だけにしておく」
何かを感じ取った兎が言い直していた。
「名前、決めていいですか?」
「巫女は我に名前をくれるのか!?」
「呼びづらいですから」
カナリアはそう言って、名前をつけた。
「ユニちゃんで」
ユニコーンから取ったとは言わず、カナリアは伝えた。
そして、ログインしていた全てのプレイヤーに「限定クエスト」クリアの案内が出された。
思わず頭を触るものの、ウサミミもなくなっている。兎コスも、真っ白な十二単になっているのだ。そして、チョーカーもビーズのように使っていた「一角兎の角」が勾玉状になり、チョーカーというにはどうなんだという長さになっている。
――巫女だ――
――娘香の巫女だ――
――巫女よ、我らに祝福を――
「ふえ?」
訳も分からずにいる間にも、カナリアの手から淡い光が出て、兎たちを囲んでいく。
「カナリア」
「ジャッジさん」
カナリアの手から光が納まるころ、ジャッジがカナリアを抱き上げた。
「帰ろう」
「……はい。でも歩けます」
「服が汚れる。それに、暫くこうしていたい」
「はい」
その言葉に、カナリアはジャッジの首に腕を回し、胸元に顔をうずめた。
終わったんだ。帰れるんだ。そう思うとほっとする。
「巫女。我を連れて行け。我が巫女の足となる」
そう言ってぴょこぴょことやってくるのは、耳の垂れた羽のある一角兎……ではなくそれによく似た愛くるしい兎のぬいぐるみ。
「ぬいぐるみがしゃべった!?」
「酷い。巫女は酷い。我を放り投げるし、驚くし」
しかも泣く動きまでしてくる。
「娘香の巫女よ、それは連れて行け。毎日『ろぐいん』とやらをしたらこちらに一度は着て欲しい。これは普通の飛行型騎獣と違うて、一度召喚してしまえば世界一周くらい軽いものじゃ。これでこの島に来てもらえればよい」
「かぐやさん。それで大丈夫なんですか?」
「仕方あるまいて。島が巫女を選んだことじゃ。島もそれを了承したと取るしかあるまい」
なんならいても構わぬぞ。そうかぐやが言った瞬間、ジャッジからもの凄い殺気がした。
「戻ります。そしてここに来ます。っていうか、他のところみたいに繋げられないんですか?」
拠点に繋げば、来るのも楽だし兎といつでも遊べる。
「……ふむ。月詠よ」
「出来なくはないぞ。守人が少しばかり、巫女のたぶれっとでいじってもらう必要はあるが。ただし、一箇所が限度であろうな」
「守人?」
「月詠、妾に断りなく称号を与えるでない」
「この島を壊されたくなくば、諦めよ。かぐや」
誰がこの島を壊すのかと、カナリアは思ったが、さり気なくジャスティスがジャッジを指差しているのを見て、思わずジャッジを見つめた。
「カナリアをここに縛り付けるなら、俺はここを壊すよ?」
にっこりと微笑んでジャッジが言う。
「壊さないでください。ここは兎さんたちの棲家です。そしてここで兎さんたちは脱皮するんだそうです」
脱皮した時に出る皮や角を使えば、無闇に狩る必要はなくなる。それに「神社仏閣を愛する会」でも柱になる角を気軽に手に入れられる。
「兎が脱皮って……シュールだな」
「白兎が脱皮して黒兎になる。黒兎は数度脱皮を繰り返して一角兎になる。一角兎も何度も繰り返して、羽が生える」
脱皮に耐えられず死んで行く兎もいるという。月詠が兎たちの生態を二人に伝えていた。
「ここに入場制限をかけるか。その上で俺たちの拠点に繋げばいい」
その言葉にカナリアはジャッジを再度見つめた。
「カナリア、タブレット出して」
「は、はいっ」
「ここに入れる制限は?」
「出来ればあまり入って欲しくないがの」
「かぐや、あんたに聞いてない。カナリアとしては?」
タッチしながらジャッジが当然のように言う。
「私も、よく分かりません。ただ、エリさんたちはあの島のクエストをこなすためにも巨大一角兎の角が必要だって言ってましたよね?」
「だと、『神社仏閣を愛する会』は入場許可……と。あとは俺らのギルドだけを許可にしておけば暫くは大丈夫だろ。余計なことをしたらあの砂○け婆様が説教をかますくらいだ」
何をどう触っているのか分からないが、あっという間に「初心者の町」にあるカナリアの拠点と「月の島」が繋がってしまった。
「ジャッジさん。凄いです!!」
「ゲームやってて、こういうのはあんまりやりたくないんだがな」
「おまっ! カナリア助けるためにクラッキングに近いことをやって運営に止められたくせに言うなっ! しかもグリフォンの飛ぶ時間まで一時的に変更かけやがるし!」
ジャスティスがすさまじい勢いで突っ込んでいた。
「そんなこと、できるんですか?」
「やって出来なくないけど、レッドカードもの。二度とゲームが出来なくなる」
「えぇぇぇ!? ジャッジさんが出来なくなると困ります!」
「大丈夫。今回のプログラムは俺が組んだやつじゃないし。どちらかと言えば何かあったときに運営側で介入できるプログラムを貸してもらった感じだから」
にっこり微笑んでジャッジが言う。そんなものを借りれるくらい凄い人なのかとカナリアは若干勘違いをしていた。
「……カナリア。頼む。こいつの手綱握っててくれ」
意味が分からないが、カナリアはとりあえず頷いておいた。
「我から言えるのは、まだ達成されておらぬ『限定くえすと』はあと四つ。それに巫女は近づかぬことだな」
「……そんなにあんのか? 俺らが登録した時に全部クリアしたって話だったぞ」
ジャスティスが不思議そうに言う。
「うむ。四つというのは我が知る限りの話だ。我らも詳しい数は知らぬ」
「……いい加減だな」
「全てが分かってはつまらぬであろうというのが、言い分らしいぞ。巫女は守人のためにも危険なところには近づかぬことだな」
「気をつけます」
「巫女よ。我が皆を乗せていく。マリルまで戻るぞ」
先程までぬいぐるみ状態だった兎があっという間に大きくなった。
「巫女が一人の時は我が抱きかか……いや、背中だけにしておく」
何かを感じ取った兎が言い直していた。
「名前、決めていいですか?」
「巫女は我に名前をくれるのか!?」
「呼びづらいですから」
カナリアはそう言って、名前をつけた。
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