初心者がVRMMOをやります(仮)
現実世界にて<保と隆二>
隆二が世捨て人のような生活を送るようになったのはいつからなのか、それすらも保は分からない。
ひたすら住所をあてに歩いて行く。もしかすると、歓迎されないかもしれないな。そう思っても行かないという選択肢はなかった。
初雪どころか積雪のある山道を保はひたすら登っていく。
登山者が泊まる山小屋が隆二の住所だ。ただ、そこすらも正しいかなど分からない。正直な話、ここを拠点にして他の山小屋にいる可能性もあるのだ。
「失礼します」
住所を元に、その場所にたどり着いたのは翌日のことだった。
「あんた、山に用事があるわけじゃないんだろ? さっさと帰りな」
この声は隆二ではない。そう判断した保は、男に用件を切り出した。
「角田 隆二という人物をご存知ですか?」
「あんた、なにもんだ?」
「高校時代の同級生で、野々宮 保と申します」
「で、その野々宮さんがここに何の用だ?」
隆二のことを知っているとも知らないとも言わない男に、保は思わず苦笑した。
「あなたは、隆二のことをご存知ですか? 知らなくてもいいですが」
「……知らなくてもいいなんて言いながら来る奴は珍しいな」
「隆二なら偽名を使っていてもおかしくないと思っただけです」
「犯罪者だっていいたのか?」
「いいえ? あいつが犯罪を犯すとしたら、過剰防衛か間違ってクラッキング、もしくはハッキングしたくらいしか考えられません。ただ、その状態で年一回誰かしらに年賀状を送ってくるほど阿呆なやつじゃない。とすると、本当にめんどくさくなって世捨て人になった。その上で偽名を名乗るくらいするだろうなと」
隆二はそういう男だ。実際、大学時代に女性関係がこじれて偽名を使って逃げた前科がある。
「……あんた、なにもんだい」
「だからその隆二の同級生の野々宮 保ですって」
「で、隆二に何の用だ?」
「あ、偽名使ってませんでしたか」
半分は鎌かけのつもりだったが。
「あんた、刑事か探偵か?」
「残念。俺はフリーでSEみたいな仕事をしてるだけです。まぁ、隆二に聞きたいことがあって来たのは事実ですが」
「俺は、あいつの父親だ。何が聞きたいんだ?」
その言葉に保が驚く番だった。
「隆二の同級生の癖に、俺を知らないのか?」
「あいつ、母子家庭だと思ってた」
「くっくっく。あんたは本当に親しいんだな。でなきゃ俺がいなかったって事実は知らんだろうからな。
で、座らねぇのか?」
「座ったらあなたが出て行く。その状況で隆二のところに行って、あいつが戻ってこなかったら元の木阿弥だ」
「性格まで熟知してやがんのか。……まぁいい。あと三十分もしたら見回りから戻ってくるはずだ」
「では、それまでこそに居てください。二度手間は勘弁なので」
「……あんたは隆二の友人だよ」
呆れたように男が呟いていた。
それから暫くして、山小屋の入り口が開いた。
「久しぶり、隆二」
「!! 保!?」
隆二が驚くのも分かる。保に年賀状を出さない理由は、こういったところに来ないという自信もあるからだ。
「いや、ちょっと聞きたいことがあって来たんだ。少しだけ時間あるか?」
「何の用だよ」
「俺の可愛い恋人とそれにまつわる面倒ごとについて?」
「……お前から惚気が聞けるというか、そのぶっ壊れた性格でよく恋人が出来たな」
「今までだって出来ただろ?」
「一ヶ月くらいしか付き合ってねぇじゃねぇか。その尻拭いを何度俺らがしたと思ってんだ?」
「数え切れないほど?」
「自信もって言うんじゃねぇ! で、今の子は付き合ってどれ位たってるんだ?」
「ん~。七月末から付き合って、今が十一月だろ。三ヵ月半か。ちなみに年下」
「相手に同情するぞ、俺は」
「可愛いよ。俺を凄く頼るし」
隆二の顔が盛大に引きつっているのが分かった。
「で、惚気を言いに山まで来たわけじゃないだろ? その面倒ごとってなんだ?」
「『TabTapS!』の限定クエストだ」
その言葉に、隆二の父親という男までもが顔色を変えた。
ひたすら住所をあてに歩いて行く。もしかすると、歓迎されないかもしれないな。そう思っても行かないという選択肢はなかった。
初雪どころか積雪のある山道を保はひたすら登っていく。
登山者が泊まる山小屋が隆二の住所だ。ただ、そこすらも正しいかなど分からない。正直な話、ここを拠点にして他の山小屋にいる可能性もあるのだ。
「失礼します」
住所を元に、その場所にたどり着いたのは翌日のことだった。
「あんた、山に用事があるわけじゃないんだろ? さっさと帰りな」
この声は隆二ではない。そう判断した保は、男に用件を切り出した。
「角田 隆二という人物をご存知ですか?」
「あんた、なにもんだ?」
「高校時代の同級生で、野々宮 保と申します」
「で、その野々宮さんがここに何の用だ?」
隆二のことを知っているとも知らないとも言わない男に、保は思わず苦笑した。
「あなたは、隆二のことをご存知ですか? 知らなくてもいいですが」
「……知らなくてもいいなんて言いながら来る奴は珍しいな」
「隆二なら偽名を使っていてもおかしくないと思っただけです」
「犯罪者だっていいたのか?」
「いいえ? あいつが犯罪を犯すとしたら、過剰防衛か間違ってクラッキング、もしくはハッキングしたくらいしか考えられません。ただ、その状態で年一回誰かしらに年賀状を送ってくるほど阿呆なやつじゃない。とすると、本当にめんどくさくなって世捨て人になった。その上で偽名を名乗るくらいするだろうなと」
隆二はそういう男だ。実際、大学時代に女性関係がこじれて偽名を使って逃げた前科がある。
「……あんた、なにもんだい」
「だからその隆二の同級生の野々宮 保ですって」
「で、隆二に何の用だ?」
「あ、偽名使ってませんでしたか」
半分は鎌かけのつもりだったが。
「あんた、刑事か探偵か?」
「残念。俺はフリーでSEみたいな仕事をしてるだけです。まぁ、隆二に聞きたいことがあって来たのは事実ですが」
「俺は、あいつの父親だ。何が聞きたいんだ?」
その言葉に保が驚く番だった。
「隆二の同級生の癖に、俺を知らないのか?」
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「くっくっく。あんたは本当に親しいんだな。でなきゃ俺がいなかったって事実は知らんだろうからな。
で、座らねぇのか?」
「座ったらあなたが出て行く。その状況で隆二のところに行って、あいつが戻ってこなかったら元の木阿弥だ」
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「では、それまでこそに居てください。二度手間は勘弁なので」
「……あんたは隆二の友人だよ」
呆れたように男が呟いていた。
それから暫くして、山小屋の入り口が開いた。
「久しぶり、隆二」
「!! 保!?」
隆二が驚くのも分かる。保に年賀状を出さない理由は、こういったところに来ないという自信もあるからだ。
「いや、ちょっと聞きたいことがあって来たんだ。少しだけ時間あるか?」
「何の用だよ」
「俺の可愛い恋人とそれにまつわる面倒ごとについて?」
「……お前から惚気が聞けるというか、そのぶっ壊れた性格でよく恋人が出来たな」
「今までだって出来ただろ?」
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