初心者がVRMMOをやります(仮)
現実世界にて<女帝の不器用な優しさ>
昌代とて、保のいない日に何もしていないというわけではない。
まず手始めに、美玖の両親が現在どのようになっているかを再度確認した。
父親の方は、嫌々ながらも古瀬家の顧問弁護士が裁判でも弁護士として動くようだ。母親の方は、弁護士のなり手がおらず(千沙が弁護士へ相談する案件は孫娘を心配するもののみ)、結局は国選弁護士になりそうなのだ。
保護責任すら全うしない親の弁護など誰がしたいと思うのか。それが美玖の父親の弁護士になった男の台詞だった。
「昌代様」
「何じゃ?」
「天原様がいらしております」
「茶室に通せ。それから美玖も呼べ」
「かしこまりました」
知らぬは罪なのだ。たとえ被害者の美玖であったとしても、両親がどのようになるのかは知らなくてはならないだろう。
不安で押しつぶされそうになっているのも知っている。だが、美玖は曲がりなりにも十五の少女だ。ある程度自分で考える術を持たなくてはいけない。
それを潰すのは、虐待と同じことだと考えている。
「おばばさん」
美玖がこの保養所に来てから、明るくなった気がする。
「お主の両親のことと、これからのことで話しがある。こちらは弁護士の天原」
「……初めまして」
人見知りで不安になりながらも、必死に挨拶をしていた。それが昌代には微笑ましくも思えるのだ。
「美玖さんは、現状のことをお話しても取り乱しませんか?」
「……分かりません」
「素直に仰っていただきありがとうございます。ある程度お話させていただきますが、どうしても無理そうな場合は仰ってください。
まず、ご両親ですが年明けには裁判になるかと思われます。最低でも一年ほど裁判にかかるものだと思ってください。お父上には古瀬家の顧問弁護士が、お母上には国選弁護士が就きます。ここまでは大丈夫ですか?」
「はい」
「そして、現在の美玖さんに関してですが、ご両親の親権停止が認められました。最長二年間、ご両親は美玖さんに対して保護者として接することが出来ません。その間の親権代理人として、私天原と、禰宜田 孝道様がつきます。あなたにはパパンさんと申し上げたほうが分かりやすいでしょうか」
「はい」
「それから、裁判の結果が分かり次第親権問題に入るでしょう。その時にはあなたは未成年ですから保護プログラムが働き、二度とご両親はじめ父方のご親族とお会いする必要はございません。そして、その悪意から守るために養子縁組をさせていただきます」
「お祖母ちゃんとは……」
「磯部 千沙様とであれば、暫くは私か孝道様が立会いの元であれば面会は可能です。孝道様なら喜んでその席を設けるでしょうね」
「そう、ですか」
無表情なまま美玖は頷いた。無表情になるのは、自分を守るためだと昌代は理解している。
「何も、難しいことを考えるでない。こちらに呼ぶことも可能じゃ。ただ美玖自身が連絡を取るわけでなく、第三者を挟まざるを得ないと心得よ。もし、気軽に会うて父方の親族と顔を合わせたらいかがする?」
昌代はあえて口に出した。
「そういったわけですので、特にかまえる必要はございません。
話を戻します。養子縁組をしていただくにあたって、数ヶ所立候補が上がっておりますが、どこがよろしいかと」
「え?」
「溝内 良平、悠里夫婦、溝内 太一、香住夫婦、それから禰宜田 孝道、さゆり夫婦。今のところご三方ですが、禰宜田 義道様も名乗りを上げておりまして……」
「あれは阿呆か。余命いくばくもない者が名乗りを上げてどうするというのじゃ」
「……娘、ほしかったみたいで……」
しどろもどろになりながら天原が言う。
「かような理由なら嫁と孫娘でも可愛がっておれ。我がそう言っておったと伝えおけ」
「実は外で待機しておりまして、昌代様が許可次第……」
「塩でも振ってくるわ!」
あの阿呆な弟は。正直な話、孝道たちのところへの養子縁組すら嫌なのだ。
今の状態で、あの陰険な家の中枢部に近づきようものなら美玖は確実に壊れる。
「うわっ! 歓迎のお茶でなく塩ですか?」
「とっとと帰れ! たわけが!!」
「えぇぇ? 姉さんが気に入った美玖ちゃんに会いたくて来たんですけど。それから美玖ちゃんに差し入れも……」
後ろで恐縮する弟嫁に思わずため息をついた。
「それに姐さんに美玖ちゃんのことを教えたのは私ですよ? 会うくらいいいじゃないですか」
「養子縁組せんと言うのならな」
「うっわぁ。どうしよう。予防線張られたよ」
「ですから言いましたのに。いい子であればあるほど義姉様は養子縁組を了承なさらないと。せめて義孝やマーカスのほうがいいと申し上げたでしょう?」
「……入れ」
まさか、マーカスの名前が出てくると思わなかった。
まず手始めに、美玖の両親が現在どのようになっているかを再度確認した。
父親の方は、嫌々ながらも古瀬家の顧問弁護士が裁判でも弁護士として動くようだ。母親の方は、弁護士のなり手がおらず(千沙が弁護士へ相談する案件は孫娘を心配するもののみ)、結局は国選弁護士になりそうなのだ。
保護責任すら全うしない親の弁護など誰がしたいと思うのか。それが美玖の父親の弁護士になった男の台詞だった。
「昌代様」
「何じゃ?」
「天原様がいらしております」
「茶室に通せ。それから美玖も呼べ」
「かしこまりました」
知らぬは罪なのだ。たとえ被害者の美玖であったとしても、両親がどのようになるのかは知らなくてはならないだろう。
不安で押しつぶされそうになっているのも知っている。だが、美玖は曲がりなりにも十五の少女だ。ある程度自分で考える術を持たなくてはいけない。
それを潰すのは、虐待と同じことだと考えている。
「おばばさん」
美玖がこの保養所に来てから、明るくなった気がする。
「お主の両親のことと、これからのことで話しがある。こちらは弁護士の天原」
「……初めまして」
人見知りで不安になりながらも、必死に挨拶をしていた。それが昌代には微笑ましくも思えるのだ。
「美玖さんは、現状のことをお話しても取り乱しませんか?」
「……分かりません」
「素直に仰っていただきありがとうございます。ある程度お話させていただきますが、どうしても無理そうな場合は仰ってください。
まず、ご両親ですが年明けには裁判になるかと思われます。最低でも一年ほど裁判にかかるものだと思ってください。お父上には古瀬家の顧問弁護士が、お母上には国選弁護士が就きます。ここまでは大丈夫ですか?」
「はい」
「そして、現在の美玖さんに関してですが、ご両親の親権停止が認められました。最長二年間、ご両親は美玖さんに対して保護者として接することが出来ません。その間の親権代理人として、私天原と、禰宜田 孝道様がつきます。あなたにはパパンさんと申し上げたほうが分かりやすいでしょうか」
「はい」
「それから、裁判の結果が分かり次第親権問題に入るでしょう。その時にはあなたは未成年ですから保護プログラムが働き、二度とご両親はじめ父方のご親族とお会いする必要はございません。そして、その悪意から守るために養子縁組をさせていただきます」
「お祖母ちゃんとは……」
「磯部 千沙様とであれば、暫くは私か孝道様が立会いの元であれば面会は可能です。孝道様なら喜んでその席を設けるでしょうね」
「そう、ですか」
無表情なまま美玖は頷いた。無表情になるのは、自分を守るためだと昌代は理解している。
「何も、難しいことを考えるでない。こちらに呼ぶことも可能じゃ。ただ美玖自身が連絡を取るわけでなく、第三者を挟まざるを得ないと心得よ。もし、気軽に会うて父方の親族と顔を合わせたらいかがする?」
昌代はあえて口に出した。
「そういったわけですので、特にかまえる必要はございません。
話を戻します。養子縁組をしていただくにあたって、数ヶ所立候補が上がっておりますが、どこがよろしいかと」
「え?」
「溝内 良平、悠里夫婦、溝内 太一、香住夫婦、それから禰宜田 孝道、さゆり夫婦。今のところご三方ですが、禰宜田 義道様も名乗りを上げておりまして……」
「あれは阿呆か。余命いくばくもない者が名乗りを上げてどうするというのじゃ」
「……娘、ほしかったみたいで……」
しどろもどろになりながら天原が言う。
「かような理由なら嫁と孫娘でも可愛がっておれ。我がそう言っておったと伝えおけ」
「実は外で待機しておりまして、昌代様が許可次第……」
「塩でも振ってくるわ!」
あの阿呆な弟は。正直な話、孝道たちのところへの養子縁組すら嫌なのだ。
今の状態で、あの陰険な家の中枢部に近づきようものなら美玖は確実に壊れる。
「うわっ! 歓迎のお茶でなく塩ですか?」
「とっとと帰れ! たわけが!!」
「えぇぇ? 姉さんが気に入った美玖ちゃんに会いたくて来たんですけど。それから美玖ちゃんに差し入れも……」
後ろで恐縮する弟嫁に思わずため息をついた。
「それに姐さんに美玖ちゃんのことを教えたのは私ですよ? 会うくらいいいじゃないですか」
「養子縁組せんと言うのならな」
「うっわぁ。どうしよう。予防線張られたよ」
「ですから言いましたのに。いい子であればあるほど義姉様は養子縁組を了承なさらないと。せめて義孝やマーカスのほうがいいと申し上げたでしょう?」
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