初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

子兎、お披露目となる。


「えぇぇぇ!? あのセーラーコス駄目!?」
 翌日ギルドに行くと、スカーレットの残念そうな声が聞こえた。
「あれはさすがにまずいでしょ。もう少しひねり効かせないと。……まんまじゃないですか」
「そういう君たち親子だって」
「だからひねり効かせたでしょ? 親父はタカのまんまですが、俺は最後の文字使いませんでしたし」
「……やっぱり本当は『ユージ』にしたかったんだ」
「さすがにそれはまずいかなと」
 今の会話にどんな意味があるのか分からないカナリアだった。

 そして、カナリアの装備に関して、杖のみが三日月をモチーフにしたものが採用され続け、服はその杖についた機能で十二単に着替えられるようになっていた。
「やっぱり、これからカナリアちゃんの決め台詞は『月に代わって……』」
「だからまずいって言ってるでしょ!? ってかあんたらこのネタが分かるって、いくつですか!」
「それを君が言う!? あたしよりも年下のくせに!」
「俺は母親から聞いただけです。母親だって再放送くらいの年代ですよ?」
「タカとユージ知ってる時点で……」
「それは父親から教えてもらいました!」
「……お前ら五十歩百歩という言葉を知ってるか?」
 スカーレットとユウの意味の分からない会話を止めたのはディッチだった。

 この先こういった会話は、ディスカス以下の年齢のギルドメンバーで、ユーリとカナリアを除く全員で度々行われるようになった。

 そういう場合、ユーリとカナリアはセバスチャンの出すお茶と菓子で、まったりとお茶をするのが恒例となる。


 それから数日後。クリスマスも間近に控えたとある日、子兎のお披露目となった。
「この子は私が『娘香の巫女』になってから初めて産まれた子兎らしくて、ユニちゃんと同じく、私のそばにずっといてくれるんだそうです」
 そんなことを言っていたら、おもむろにディッチとディスカスがタブレットを開いていた。
「……うん。パッシブスキルで新しいのが出てるな。『小動物の庇護者』。……内容は小動物にひたすら気に入られる、か」
 全員が納得した顔になっていた。
「あとは、『飛行モンスターの友達』……カナリア、何をした?」
 パッシブスキルを読んだディスカスが不思議そうにカナリアを見た。
「何もしてませんよ?」
「しただろ。俺が召喚するグリフォンに。ひたすら餌やってブラッシング。その上俺が用事あって離れてたときに、グリフォンの腹で寝てただろ。挙句にグリちゃんって名前も付けて……」
「あ、そういえばあたしのにも餌あげてたね」
 ジャッジの言葉にスカーレットも追従する。
「……それか。カナリア君ひょっとしなくても、俺たち全員の飛行モンスターに餌付けしただろ?」
「餌付けじゃなくて、ご飯あげた……」
「カナリア、それ屁理屈な」
 全てを言う前にジャッジにさえぎられた。
「巫女、酷い!! 我以外にもそんなことをするなんて!」
「デカ兎。お前は黙ってろ」
「うるさい。『守人』なんて称号がなかったら、我がとっくに……」
「そんな話をしにきたわけじゃないだろうが!」
 結局、ユウが最終突っ込みを入れるまで、ひたすら飛行モンスターで話がそれていたメンバーだった。
「そうでした! この子の名前を皆さんで決めて欲しくて。……ウサちゃんって名前にしようとしたら、もの凄く不満げで。ラビちゃんも駄目でした」
 そう言ってカナリアは全員にその子兎を見せた。
「……なんでここ禿てんだ?」
 そう言ってディッチが子兎の額を指差す。
「それは禿ではないぞ! その子は幼い頃より翼が生えるのだ。だから角が生えるのが早いため、毛が生えぬだけだぞ!」
「……残念。三日月形の禿がよかった」
 ユニの言葉にすぐさまスカーレットが言ってきた。
「そこはやはり猫じゃないとまずいんじゃないか? レット」
「レットさんも先生もそこから離れません?」
「月、兎、そして変身ときたら、三日月ハゲのある黒猫と白猫だろう!!」
 ユウの突っ込み虚しく、ディッチが力説していた。
 そして、多数決で何故か「アルテミス」になった。

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