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神無乃愛

現実世界にて<サプライズ 3>


 年相応な美玖の笑顔をこんなに見るのは初めてだと思いながら、保はシャンパンを飲んでいた。千沙は「若いノリについていけないから、休むわ」と言って部屋を出た。おそらく、禰宜田家、溝内家の両親と和気藹々と話をしているか、ゲームに繋いでいるだろう。
「ねぇ、ジャッジさん」
 隣に一弥が来た。
「どうした?」
「美玖ばっかり視線で追ってるんだけど」
「当然だろうが」
「……あっそ。結構重い人なんだね」
「よく言われる」
「美玖にはあんまり重くしないでね。美玖はそれが当然だと思っちゃうからさ。何でか分からないけど、あのヒトたち、美玖を無垢にしすぎてたから」
 確かに美玖はそういった話は全く分からない。甘え方は幼子に似ているのだ。赤ん坊はコウノトリが運んでくるとか、結婚したら何もせずに産まれてくると思っていてもおかしくないのだ。
「それはないと思うよ? さすがにさ、ある程度の教育を学校で受けるでしょ」
「それくらい純粋だってこった。『食う』を食事、『虫』はその辺にいる普通の虫しか思いつかないんだ」
「……まじで?」
「大真面目。食うの発言はジャス」
 それまで見聞した美玖の行動を一弥に伝える。
「あのヒト何考えてんだろ。……美玖は虫すっごく苦手」
「みたいだな。父方で散々虫で虐められたのもあるみたいだ」
「そんなこと俺らが現実で知ってたら、絶対あの家に行かせなかった」
 憤慨する一弥からは、美玖が特別だという感情は見当たらないが、面白くない。
「そんなことでヤキモチやかないでよ。じいちゃんの教育で『自分より弱い者は守るべきもの』ってのを、俺は散々叩き込まれたの。それに美玖が産まれてすぐ来たのは俺の家。その頃、そこまで母さんと叔母さん仲悪くなかったし。りりの時も思ったけど、見た瞬間『俺が守るんだな』って思ったの。最悪母さんが美玖を引き取るって話をしてたから、妹になるんだろうなって思ってたし」
 さすが七歳の時の記憶はしっかりしているようだ。
「分かっていても面白くない」
「……何その独占欲。俺少し心配になってきた」
 そんな話をしていたら、美玖とりりかがこちらへ向かってきた。そのまま美玖を抱きしめる。
「た……保さん!?」
「マーキング」
 実際のところは、キスマークでもつけたいところだが、さすがに自重しておく。
「そういえば、りりちゃんといっくんがおつき合いしてるってさっき聞いたの!」
 じたばたもがきながら美玖が言う。
「もう一年くらいかな? 美玖に言ったんだ」
「そ。さっき。レットさんとユーリさんも聞いた」
「じゃあ、今日中にこの面子に広まるね」
 一弥が少しばかり恥ずかしそうに呟いていた。

 ケーキは全員で少しずつ分けて食べた。
 ここまでほのぼのとしたクリスマスは、保も初めての経験だった。

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